内視鏡検診のあり方を求めるために, 直視型電子スコープを用いた観察診断成績を検討し, さらに内視鏡検査受診歴を調査した。対象は, 早期胃癌検診協会と東京都予防医学協会において2002年から2004年に生検組織検査で確認された胃上皮性腫瘍242例271病変で, 病変内訳は癌230病変(84.9%), 腺腫41病変(15.1%)である。内視鏡観察時に上皮性腫瘍の診断ができていなかった病変, すなわち観察診断と術前総合診断 (観察診断および生検組織診断) が一致していなかった病変は, 癌では69病変 (30.0%) を占め, 分化型の陥凹型早期癌に多い傾向が見られた。また, 25.6%(242例中62例)では, 確定診断時点から遡って3年以内に内視鏡検査の既往があり, この群を偽陰性 (見落とし) 例とみなすと, その発生要因の大部分(58病変83.9%)は観察診断であり, 10病変(14.7%)は生検組織検査に関連する問題があった。なお, 本検討で定義した不一致病変と偽陰性病変の分布は近似しており, 胃中部領域小轡に最も多かった。以上のことから, 偽陰性例の減少には, とくに観察診断と生検組織診断に乖離がみられた場合に, 内視鏡像と生検組織像を見直し, 診断過程の誤りを分析し修正することが有用と思われた。それには, 日々の内視鏡検査において観察診断とその所見を精細に記述しておく必要がある。また, 内視鏡検診の有効性を立証するには, まず前処置法や検査法および単位時間当たりの検査人数などの基準化を図り, その成績評価には生検組織診断を除いた観察診断の実態を明らかにすべきである。
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