日本消化器がん検診学会雑誌
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46 巻, 3 号
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会長講演
  • 一瀬 雅夫
    2008 年 46 巻 3 号 p. 355-364
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    胃癌死亡率減少に大きく貢献した胃がん検診も, 現在, 受診率および検診効率の向上に向けての取り組みが強く求められている。その様な状況下, 血清ペプシノゲン(PG)検査により, 萎縮性胃炎の進展した個人を把握, 内視鏡検査の対象とする検診方法, PG法が高い評価を受け, 血清PGにより同定される萎縮性胃炎を標的とした胃癌ハイリスク集約が有効である事が明らかとなって来た。加えて, 萎縮性胃炎の最重要因子としてのH.pyloriの役割が明確になって以来, 胃癌発生の自然史をH.pylori感染を主軸に理解する事が可能となり, PGやH.pylori抗体などの血液検査データを基に, 各個人におけるH.pylori感染のstageの把握, 胃癌発生リスクの具体的な予測が可能になって来た。これらの情報は, さらに, 胃癌発生予防, 検診効率化を目標とした有効な胃癌対策を立案可能なものとしつつある。本稿ではその現況について概説する。
特別講演
  • 今村 清子
    2008 年 46 巻 3 号 p. 365-377
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    国の政策として施行されたがん対策基本法は, 今後のがん撲滅事業に大いに寄与することが期待されている。日本におけるがん検診の歴史は古く, 胃がんや子宮がんでは著名な死亡率低下をもたらし, 現在は, 誰でもその効果を認めるところである。しかし, 特に対策型の検診方法については, 非常に多くの集団を対象とするため, 根拠に基づいた評価が必要であり, すでに国立がんセンターの情報部より, 各種のがん検診に関するガイドラインが提出されている。今回はそのうちの消化器がん検診について, 現状と問題点を挙げ, その対策と今後の展望を検討してみた。がんに対する診断, 治療の進歩は目覚しく, 多くの医療スタッフは最先端医療に目を奪われがちであるが, 検診という基盤に支えられて発展してきた事実を忘れてはならない。医師とコメディカルとの連携, 格差のない精度管理など, 基本に返った考え方を再考することで明るい未来は開けると信じている。
原著
  • 満崎 克彦, 福永 久美, 采田 憲昭, 菅 守隆, 藤本 貴久, 工藤 康一, 吉田 健一, 多田 修治, 須古 博信, 浦田 譲治, 神 ...
    2008 年 46 巻 3 号 p. 378-386
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    胃内視鏡検診にて発見された十二指腸腺腫(乳頭部を除く)20例21病変の臨床病理学的所見について検討した。発見頻度は0.027%で, 男女比14:6, 平均年齢51.0歳(33歳から70歳), 十二指腸下行部に多く(94.4%), 乳頭部対側に多かった(64.7%)。平均径7.4mm(3mmから20mm)と比較的小さく, IIa型9病変, IIa+IIc型5病変, IIc型3病変, Is型2病変, Ip型2病変で, 扁平な隆起性病変あるいは浅い陥凹性病変が多かった。色調は褪色調15病変(71.4%), 正色調2病変(9.5%), 発赤調4病変(19.0%)で, 褪色調病変が多かった。組織型は管状腺腫18病変, 管状絨毛腺腫3病変であった。14例が内視鏡切除され, 6例は経過観察された。偶然発見される十二指腸腺腫は, 頻度こそ少ないものの胃内視鏡検診にて遭遇し得る十二指腸腫瘍性病変の一つである。十二指腸下行部に褪色調の扁平隆起性病変あるいは浅い陥凹性病変が認められた場合, 十二指腸腺腫を念頭におく必要がある。
  • 福井 章, 藤井 大吾
    2008 年 46 巻 3 号 p. 387-396
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    大田区住民を対象にした大腸がん検診で, 25年間に延べ225,851人を検診し大腸癌患者482人を発見した。免疫便潜血検査(IFOBT)定性法で検診結果を報告していた時は精検受診率50%前後, 癌発見率0.14%と低かったが, 定量法で報告してから精検受診率, 癌発見率が向上した。
    89例の大腸癌患者中IFOBT500ng/ml以下の群では早期癌20例, 進行癌11例であったが, 2,000ng/ml以上の群では早期癌8例に対し進行癌27例であった。IFOBT一日陽性群では大腸癌32例, 二日陽性群では57例と1日陽性群の1.8倍, 進行癌は3.6倍であった。右側結腸癌は一日陽性群2例, 二日陽性群では17例であった。経年受診群から発見された大腸癌患者72例は, 非経年受診群156例の半数であった。検診上の問題点として, 新規受診者の減少, 低い精検受診率, 見逃し医療事故がある。これらの問題には検診委員会が毎年検診結果を詳細に分析し精度管理の向上に生かすべきである。
  • 阪上 順一, 保田 宏明, 渡邊 能行
    2008 年 46 巻 3 号 p. 397-403
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    内臓脂肪の過剰蓄積が前立腺癌, 結腸癌, 非アルコール性脂肪性肝炎やその他の生活習慣病のリスクになることが知られている。内臓脂肪蓄積量visceral fat accumulation;VFAの測定にはCT画像が望まれるが, 解析ソフトは高額であり手間がかかることやCT自体のコストや被曝の問題からも検診業務にはなじんでいない。そこで, 通常の超音波検診で観察する臓器から膵に注目し, 体表から膵までの距離(体表膵間距離)でVFAを予測できないかを検討した。解析対象は505例(M:F=275:230, Age=55.2±19.0(M±SD))とした。体表膵間距離はBMI, VFAに対して, 男女とも有意な相関を示し(P<0.0001), 体表膵間距離のVFA≧100cm2に対するROC面積は男性で0.906, 女性で0.815, 全体で0.876と強い関連性が認められた。ROC曲線から男女ともcut-off値を体表膵間距離5.5cmと設定すると, 男性で感度70.6%, 特異度85.7%, 陽性的中率64.9%, 陰性的中率86.8%で, 女性で感度57.1%, 特異度86.5%, 陽性的中率44.4%, 陰性的中率91.4%であった。体表膵間距離でVFA≧100cm2の推定がある程度可能であり, とくに男性の場合比較的良好な結果が得られた。
経験
  • 長田 裕典, 横田 哲夫, 井上 修志
    2008 年 46 巻 3 号 p. 404-414
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    わが国では便潜血反応を用いた大腸がん検診スクリーニングが広く実施されている。便潜血反応のカットオフ値を調節することで要精検率(陽性率)が変動する。必要以上の要精検率の上昇は陽性反応適中度の低下をきたし, 精検受診率の低下を招く。高知県ではカットオフ値を300ng/mlに設定することにより要精検率が4%以下である。これは全国比較にてかなり低い位置にある。検診成績から検討してみると, 要精検率を含めた検診事業評価の指標となる受診率, 精検受診率, 陽性反応適中度, がん発見率はいずれもきわめて良好な成績であった。スクリーニングで検体を集中管理させ, 便潜血高値者を高危険群として強力な精検勧奨をすること, そして精検での高受診率, 高全大腸内視鏡施行率をめざすことにより, 現行のシステムによって要精検者の絞り込みが可能であり, 地域住民検診としては適正な要精検率であると考えられる。
  • 吉村 平
    2008 年 46 巻 3 号 p. 415-419
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    大腸がん検診は平成4年に開始され, 平成10年に一般財源化の対象事業となった。三位一体の改革および平成の大合併により財政改善が遂行され, 大腸がん検診の体制に変化がみられた。平成16年10月1日に5町が合併し, 志摩市が誕生した。検診方法としては, 集団検診から集団検診と個別検診の併用となり, 集団検診は一般競争入札で指名されることになった。個別検診は, 医師会委託で行うことになった。今までのように, 精度管理を指定機関で行うことは困難となり, 合併後の新市で行うことになった。合併後の平成17年度は個別検診2,088名, 集団検診1,224名で要精検率は11.7%と5.1%であった。新市では, 精密検査後の結果把握および経年的管理は不十分であった。合併後の新市では, 大腸がん検診受診率の増加を目指すとともに, 精度管理を行う体制の確立が重要であると考えられた。
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