当院で施行された上部消化管X線検診98,030例と内視鏡検診10,340例を対象とした。発見された食道がん症例の食道がんリスクの有無と胃がん症例の慢性胃炎の有無について調査し, その結果から胃がん検診の検査法の選択を検討した。発見がん(胃/食道がん)は, X線75/2例(発見率0.077/0.002%), 内視鏡21/3例(発見率0.203/0.029%)で, 50歳以上で内視鏡検診の方が有意にがん発見率は高かった(p<0.001)。早期胃がんの割合は, X線80.0%, 内視鏡81.0%で有意差はなかった。胃がん症例は, すべて
Helicobacter pylori陽性と予測される萎縮した胃粘膜側で認められた。また, 全食道がん症例で何らかの食道がんリスクを有していた。がん発見率からは検診を全例内視鏡とすべきかもしれないが, 現実的には困難であり, また, ABC法では食道がんリスクの評価はできない。従来のX線検診を行い, HP感染による腺萎縮境界の進行を認める場合や食道がんリスクが高い症例を中心に, 内視鏡検診を行っていくべきである。
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