福岡市大腸がん検診の現状を概観し, 個別検診における課題の抽出を試みた。問診票の検討では, 個別検診の38%, 集団検診の45%が有症状者であり, 血便を認める者の要精検率は, 個別検診14.9%, 集団検診11.8%と高い値を示すが, 精検受診率は個別検診67.4%, 集団検診61.8%と低く, ハイリスク者の大腸がんの発見および治療の遅れが懸念される。一方, 検診プロセス指標は, 対象集団の性・年齢構成比に影響を受けるが, 個別検診の施設形態別の検討でも, その値が大きく変動した(要精検率:健診機関6.62%, 病院7.93%, 診療所9.95%。精検受診率:健診機関78.7%, 病院59.9%, 診療所73.1%)。対策型検診としての個別検診の質を向上・維持し, 検診自体の信頼性を高めるためには, 精度管理の確実な実行とともに, 問診のあり方を含め, これらのハイリスク者へのアドバイスをどのように行うのかが今後の課題である。
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