がん検診のevidenceは, 無作為化比較対照試験(RCT)などの実証研究のなかで生み出されてきた。特に適切にデザインされたRCTはbiasの影響を制御できるため, 信頼性の高い結果を得ることが可能である。しかし, RCTは結果を得るために長期の観察を要するという問題点を有する。
一方, 診断技術の発展は, 半導体技術の進歩と共に今後加速度的に進むと推測されるため, 従来の評価方法では診断技術の進歩に取り残される可能性が危惧される。また, 実証研究からのevidenceはある制限された条件下でのものであり, 条件や前提が変化した場合研究結果の外挿が困難である。
このような状況下で, 診断技術の進歩に遅れをとらずにevidenceに近いデータを提供できる可能性をmicrosimulationは有している。ただし, microsimulationは仮想空間での実験であり, 実証研究から得られたevidenceを根拠に構築されることから, 信頼性の高い研究データが今後も必要であることは当然である。その上で, シミュレーション技術をがん検診の有効性評価に取り入れていくための研究手法の確立が望まれる。
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