日本消化器がん検診学会雑誌
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58 巻, 1 号
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巻頭言
大会長 報告
総説
  • 乾 正幸, 大和田 進, 乾 純和
    2020 年 58 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2020/01/15
    ジャーナル フリー

    胃がんの主原因はピロリ菌感染症であることが明らかになっている。ピロリ菌感染診断には血清ピロリ菌抗体検査や血清ABC分類が簡便であるが,しばしば偽陰性が問題となるため診断精度の高いキットを使用することが必要である。一方,近年全国で普及しつつある胃内視鏡検診は胃がんの診断だけでなく,内視鏡ABC分類や胃炎の京都分類を用いることで背景胃粘膜の状態からピロリ菌の感染状態を診断することもできる。さらに,ピロリ菌検査と内視鏡検査を組み合わせたハイブリッド型検診は,胃がんリスクの層別化と胃がんの拾上げを同時に行うことができる理想的な胃がん対策と考えられる。高崎市では2017年度より血清ABC分類と胃内視鏡検診を同時に行うハイブリッド型検診を対策型胃がん検診として実施しており,高崎市以外にもハイブリッド型検診を行う自治体が増えてきている。

原著
  • 西川 孝, 安田 鋭介, 渡邉 真也, 木村 光政
    2020 年 58 巻 1 号 p. 12-24
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2020/01/15
    ジャーナル フリー

    日本消化器がん検診学会による『胃X線検診のための読影判定区分:カテゴリー分類』を用いて,診療放射線技師の読影補助に対する精度を検討した。技師全体での正診率は62.3%で,感度は60.5%(早期がん感度:67.0%,進行がん感度61.0%,食道がん感度34.3%),特異度は63.5%であった。一方,専門医の正診率は75.0%で,感度は77.5%(早期がん感度:89.5%,進行がん感度:71.4%,食道がん感度:50.0%),また特異度は70.0%であった。技師の経験年数や認定資格の取得・種類などを考慮した検討では,認定取得の有無や種類による精度の差は認められなかったものの,指導技師の精度は正診率71.6%,感度は83.9%(早期がん感度:85.7%,進行がん感度:80.6%,食道がん感度:71.4%),特異度は55.7%であった。

  • 乾 正幸, 大和田 進, 乾 純和
    2020 年 58 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2020/01/15
    ジャーナル フリー

    【目的】LタイプワコーH. ピロリ抗体・Jを用いた血清ABC分類と内視鏡ABC分類を組み合わせたハイブリッドABC(Hyb ABC)の有用性を検証した。

    【対象と方法】対象は2016年5月から2018年1月までに当院で上部消化管内視鏡検査と血清ABC分類を行い,内視鏡所見と各種ピロリ菌検査より総合的に感染状態を判定した462例(未感染200例,現感染85例,既感染177例)。血清ABC分類はA~Eの5群に分類し,内視鏡所見から内視鏡ABC分類(A群~E群)を行い,血清ABC分類と内視鏡ABC分類の結果が一致したものをHyb ABCと定義しHyb A~Eに分類した。

    【結果】Hyb-Aの未感染率,Hyb-B,Cの現感染率,Hyb-D,Eの既感染率は,それぞれ100%,96.4%,94.4%,100%,100%であった。

    【結語】Hyb ABCはピロリ菌感染に伴う胃粘膜の状態を反映した高精度な胃がんリスク層別化が可能であった。

経験
  • 浅野 みず江, 菊地 博敦, 高嶋 優子, 松本 裕治, 稲原 祐加子, 伊藤 聖美, 萩原 弘之, 東 あづみ, 中村 清華, 山岸 史明 ...
    2020 年 58 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2020/01/15
    ジャーナル フリー

    新・胃X線撮影法の対策型は,二重造影法のみの8枚撮影法であることから,一定の精度を確保するためにバリウムの付着が良好な画像を撮影することが必要である。しかし,実際の撮影現場では,①体位変換困難,②高度難聴,③残胃,④食物残渣などによる検査困難症例の対応に迫られることがある。そこで,本稿では①~④の検査困難例に対する当センターの対応策について報告した。①では体位変換時に無理な介助は行わず,安全のために受診者のペースに合わせて検査を行っている。②では検査前に体位変換の方法などの説明動画を見てもらい,撮影時は専用シートで合図し,検査を行っている。③はバリウムの小腸への早期流出に対処するためバリウム飲用法と体位変換法の工夫を行っている。④では通過障害となる病変の有無を確認し,バリウムで標的部位の残渣を動かして撮影をしている。次回検査時の前日の食事の摂取法を指示している。以上のように対応策を講じても,十分な診断ができる画像ではないと判断した場合には,受診者に十分に説明の上,内視鏡検査を受けることを勧め,自治体の担当者へ次回の対応も含めて報告している。

  • 伊山 篤, 三上 鉄平, 永田 浩一
    2020 年 58 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2020/01/15
    ジャーナル フリー

    【目的】低線量撮影によりノイズが増加した画像に対し,CT装置搭載の非線形ノイズ低減フィルタを使用して改善した画質を評価した。

    【方法】水ファントムと大腸CT用ファントムを用いて,従来の大腸CT検査で再構成されたSD20画像と比較・検討した。

    【結果】水ファントムを用いた画質の検討では撮影SD値とフィルタ処理の組み合わせが,撮影SD25における1回の3D-Q03処理,SD30で1回の3D-Q09処理,SD34で2回の3D-Q03処理,SD38では2回の3D-Q09処理した画像において,SD20の画像とほぼ同等の画質であった。大腸CT用ファントムを用いた検討では,SD34及びSD38で撮影した画像では骨に囲まれた部分で線量不足に伴うSD値の上昇が認められ,撮影SD値は30までが妥当と示唆された。

    【結論】CT装置搭載の非線形ノイズ低減フィルタを使用したSD30の画像は,SD20の画像と同等の画質であり,さらに35%の被曝低減を可能とした。

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