日本消化器がん検診学会雑誌
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最新号
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巻頭言
総会長報告
総説
  • 松本 直樹
    2024 年 62 巻 5 号 p. 412-420
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/13
    [早期公開] 公開日: 2024/07/25
    ジャーナル 認証あり

    腹部超音波検診判定マニュアル1)では, 肝臓はびまん性病変と限局性病変は詳細に規定されており, 胆管病変も記載されているが, 血管性病変は単に肝血管異常, カテゴリー2, 判定区分D2となっている。がん検診が対象で, Bモード所見をまとめたマニュアルなので仕方がないが, 実際はドプラを活用することで限局性結節性過形成(FNH), 門脈静脈(PV)シャントといった疾患で確定診断が得られたり, 門脈側副血行路など気付かなかった異常を発見したりと, 非常に有用である。

    Bモードもそうだが, ドプラはただボタンを押せば良い訳ではなく, 関心領域や至適感度の設定, 各種モードの選択といった調整を適切に行って初めて評価可能になる他, 測定が難しい条件(深部や肝左葉外側区など)も理解する必要がある。また高感度ドプラの進歩も著しいものがあり, 各社で特徴も違うので良く知っておくべきである。

    本総説では, 検診判定マニュアルよりも一歩踏み込んで, 肝臓の血管病変や腫瘤性病変の血流評価法について解説する。けんしんでの使用を念頭に置いているため, ドプラ検査を中心に紹介する。

原著
  • 大水 智恵, 小野寺 博義, 小野 博美, 手嶋 紀子, 小泉 知里, 及川 響名, 近 京子, 新沼 紀実, 加藤 勝章
    2024 年 62 巻 5 号 p. 421-430
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/13
    [早期公開] 公開日: 2024/08/29
    ジャーナル 認証あり

    【目的】腹部超音波検診判定マニュアル改訂版(2021年)により脂肪肝(カテゴリー2判定区分C;以下2C)と判定される症例と慢性肝障害疑い(カテゴリー3判定区分C;以下3C)と判定される症例との違いを検討し, 超音波検診での脂肪肝の事後指導をどのようにすべきか検討した。

    【対象と方法】2021年4月から2022年3月に当施設の腹部超音波検査で脂肪肝と診断された1,186名の動画像を遡及的に見直し, 改訂版マニュアルにより脂肪肝(2C)群と慢性肝障害疑い(3C)群に分類し, 両群間の血液検査や肝の線維化, 肥満度, 飲酒量, 糖尿病の治療の有無を比較した。

    【結果】脂肪肝(2C)の判定が1,027例, 慢性肝障害疑い(3C)が159例であった。慢性肝障害疑い(3C)群で体脂肪率, BMI, AST, ALT, γ-GT, 中性脂肪, 空腹時血糖が有意に高値を示した。FIB-4indexに有意差はなかった。その後, 肝細胞がんが2例発生したが, 1例は脂肪肝(2C)の判定でありAST, ALTは高値だった。

    【結語】脂肪肝においては超音波検査所見のみならず, 血液検査の結果も考慮して事後指導を実施することが重要である。

経験
  • 宮崎 茉莉子, 鈴木 康元
    2024 年 62 巻 5 号 p. 431-438
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/13
    [早期公開] 公開日: 2024/08/29
    ジャーナル 認証あり

    【目的】大腸がん死亡減少に寄与するとされる大腸腺腫発見率(adenoma detection rate:以下ADR)の向上が期待される病変検出支援機能CADEYETM(CAD)の有用性を, CAD導入前後のADRの変化をみることで検討した。

    【対象と方法】初回TCS受診例をCAD導入後群(CAD群)3,207例と導入前群(非CAD群)1,572例に分け, 6mm以上の病変を対象とした各群のADRを男女年齢別に求めた。

    【結果】男女別年齢別(40歳未満/40歳代/50歳代/60歳代/70歳代/80歳以上/全年齢)のADRは, CAD群男性7.0%/21.2%/32.3%/32.9%/37.7%/39.5%/23.3%, 非CAD群男性4.3%/20.1%/31.3%/41.0%/42.2%/40%/24.8%, CAD群女性4.9%/12.5%/16.7%/22.5%/30.9%/36.7%/17.1%, 非CAD群女性5.2%/8.4%/15.8%/18.9%/25%/30.8%/14.5%で有意差を認めなかった。

    【結論・考察】artificial intelligence(AI)導入前後のADRに有意差がなかった要因として, 6mm以上の病変を標的としたこと, high volume centerで熟練した内視鏡医による観察であったこと等が考えられる。ただ, 大腸内視鏡検査による大腸がん検診が普及すると, 検査の質の均てん化が期待できるartificial intelligence技術の有用性は今後増していくものと思われる。

調査報告
  • 平賀 聖久
    2024 年 62 巻 5 号 p. 439-446
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/13
    [早期公開] 公開日: 2024/07/31
    ジャーナル 認証あり

    本学会が報告する消化器がん検診全国集計(以下, 全国集計)と, 国立がん研究センターが公開する全国がん検診実施状況データブック(以下, データブック)から, 九州地区の胃がん検診を俯瞰した。

    全国集計(平成27年度~令和元年度)から抽出したプロセス指標の推移では, 受診者数・要精検率・がん発見率が減少傾向を呈していた。データブック(令和2年度)によると, 「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」や「事業評価のためのチェックリスト」が, 遵守或いは遂行されているとは言い難い状況であった。

    本結果から, 検診機関や(かかりつけ医を含む)医療機関のみならず, 行政機関(市区町村・都道府県・厚生労働省)とも連携を深め, 精検受診率の向上と(職域検診を含む)検診成績の集約に邁進しなければならないと, 改めて認識させられた。

  • 三上 哲彦, 小池 智幸, 只野 敏浩, 加藤 勝章
    2024 年 62 巻 5 号 p. 447-453
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/13
    [早期公開] 公開日: 2024/07/31
    ジャーナル 認証あり

    宮城県登米市は, 仙台市から約70キロメートル北に位置し, 高齢化率が高い市である。登米市では, 大腸がん検診の便潜血検査(FOBT)を市内唯一の中核病院である登米市立登米市民病院(当院)に委託契約している。当院では登米市が作成した受診者台帳をもとに, 受診希望者に採便キットを配布し, 回収された検体を当院で測定して結果判定を行っている。FOBT陽性者には, 結果通知と同時に日時と場所を指定した精密検査(精検)説明会の開催案内書を送付し, 精検説明会の場で全大腸内視鏡検査の予約を取得している。欠席者には医療機関受診に必要な紹介状・精密検査実施報告書を郵送し, 個別に受診勧奨している。2021年度のFOBT陽性者は784名で陽性率は5.3%, 精検受診者は666名で精検受診率は84.9%であった。精検説明会の出席者は551名で出席率は70.3%であり, 出席者の精検受診率は96.7%であった。一方, 欠席者233名の精検受診率は57.1%にとどまり, 出席者の精検受診率が有意に高かった(p<0.01)。以上より, 精検説明会の開催は精検受診率向上に寄与する可能性があると考えられた。

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