日本消化器がん検診学会雑誌
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巻頭言
特集:膵がん検診の確立を目指して
  • 松原 浩, 西村 重彦, 山本 智支
    2026 年64 巻3 号 p. 395
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり
  • 橋本 千樹, 小林 隆, 山本 智支
    2026 年64 巻3 号 p. 396-407
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    膵がんをはじめとする膵疾患は, 早期診断が困難であり依然として予後不良である。近年, 膵がんのハイリスク群が明らかにされ, 対象をしぼった膵がんのスクリーニングの重要性が増している。その中で, 経腹壁超音波検査は非侵襲的かつ簡便であり, 繰り返し施行可能である点で有用性が高い。特に定期健診や消化器がん検診の場において, 膵疾患の拾い上げに果たす役割は大きい。本稿では, 経腹壁超音波検査による膵がんを中心とした膵疾患のスクリーニングから精査に至る診断の流れを概説し, その有用性と限界について最新の知見を踏まえて解説する。

  • 井上 大
    2026 年64 巻3 号 p. 408-416
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    近年, 早期膵がんの画像所見が明らかとなりつつあり, 画像検査をきっかけに診断される上皮内癌や微小膵がんが増加している。しかしながらこれらの画像所見は主観的なことも多く, 均一な診断は困難なことがある。また画像所見から早期膵がんが疑われた場合にも内視鏡的な精査が必要であり, 診断やマネージメントにも課題が多い。早期膵がんでみられる画像所見を熟知した上で, これらの課題も認識しておくことが膵がんの早期診断には重要である。

  • 木浦 伸行, 松原 浩
    2026 年64 巻3 号 p. 417-439
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    本稿では, 膵臓の形態や周囲臓器との位置関係を理解するために, CTによるVolume rendering像を用いて視覚的に解説し, 膵癌の好発部位である膵頭部を中心に, 習得すべき超音波解剖の要点を提示した。さらに, 描出能を高める工夫として, 体位変換, 高周波リニアプローブの活用, ドプラ検査の併用について, 実際の症例画像を交えて具体的に紹介した。また, 実際に見落とされた症例も取り上げ, 注意すべきポイントについて解説した。加えて, 限局性膵実質萎縮像や, 高周波リニアプローブによる主膵管の観察から得られた超音波画像についても提示した。経腹壁超音波検査における膵臓の描出では, Groove領域, 鉤状突起, および膵尾部が特に描出不良となりやすく, ソノグラファーにとって検査精度の向上が課題である。

  • 川端 聡, 西村 重彦, 高倉 玲奈
    2026 年64 巻3 号 p. 440-454
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    膵癌は膵管上皮に発生し, 膵管壁を破って膵実質へ浸潤したものが浸潤性膵管癌と呼ばれる。このため膵管壁エコーの断裂は膵癌を疑うべき有力な所見となる。しかし膵実質内に発生する腫瘍に於いても主膵管を強く圧迫すると尾側膵管が拡張して一見途絶しているかのように見えることがあり注意が必要である。また腫瘍境界部の評価に於いても腫瘍に対して超音波が斜めに入射し, フォーカスが合っていないと, 境界が明瞭で平滑な腫瘍であっても境界部が不明瞭となり不整に描出されることがある。

    超音波にて膵癌を疑う病変を発見した際には, ①腫瘍径の計測, ②腫瘍が膵内に収まっているか否か, ③血管侵襲の有無(腹部大動脈, 腹腔動脈, 上腸間膜動脈, 総肝動脈~固有肝動脈, 門脈~上腸間膜静脈), ④リンパ節転移の有無, ⑤遠隔転移の有無, ⑥腹水の有無, ⑦肝内胆管径の計測(閉塞性黄疸を伴う場合)を評価することで, 患者の病状が把握でき, 病期診断や切除の可否の評価にも繋がる。

    限局性膵萎縮, 主膵管狭窄, 尾側膵管拡張が揃えば上皮内癌を疑う有力な所見となる。

    これらを正しく評価する為には超音波が対象に垂直に当たるよう工夫することが極めて重要である。

  • 林 大樹朗, 竹内 真実子, 江畑 美恵子
    2026 年64 巻3 号 p. 455-464
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
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    当院では2021年12月より, 超音波内視鏡検査(EUS)を取り入れた膵がんドックを開始した。今回, 2025年3月までに本ドックを受診した76例について検討を行った。検査はまずMRI/MRCPを施行し, その後, 血液検査および静脈確保を行った上で鎮静下にEUSを実施した。受診者の年齢中央値は61.5歳(30~81歳)で, 男性42例, 女性34例であった。1例で閉所恐怖症のためMRI/MRCP検査を中断したが, 全例でEUS検査は完遂された。膵異常所見の陽性率は44.7%(34例)であり, その内訳では膵嚢胞が最も多く26例(34.2%)を占め, 嚢胞径の中央値は5mm(2~118mm)であった。EUSにて膵がん疑いを1例に認め, その腫瘍径は4mmであった。膵異常所見を認めた34例は全例, 当院消化器内科にて精査を行い, 膵がん疑いの1例は手術加療の結果, 高異型度膵上皮内腫瘍(high-grade PanIN)の最終診断に至った。膵がん早期診断を目標とした市中病院における新たな取り組みとしてここに報告する。

  • 加藤 宏之, 多代 尚広, 加藤 悠太郎, 花井 恒一, 山本 智支, 橋本 千樹, 伊東 昌広, 堀口 明彦
    2026 年64 巻3 号 p. 465-472
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    膵癌は依然として予後不良であり, 5年生存率は約8%に留まる。また腫瘤形成が緩徐で自覚症状に乏しいため, 診断時には進行例が多い。一方, 腫瘍径1cm以下の微小膵癌や上皮内癌(PanIN, Stage0)では予後良好であることが示され, 腫瘤非形成期の段階で異常を捉えるスクリーニング戦略が求められている。MRI/MRCPは主膵管狭窄や分枝膵管不整, さらにDWI・ADC mapによる拡散制限を通じて腫瘤非形成期の微小変化を捉える点で有用である。一方, 通常の腹部超音波検査(US)は膵尾部描出が不良であるが, 飲水法により音響窓が安定し, 嚢胞性病変検出率の向上が期待される。当科では飲水法によるUSとMRI/MRCPを組み合わせた膵癌ドックを運用し, 36例中5~6例に嚢胞性病変を確認した。また, 腫瘍マーカーを含む多角的アプローチにより, MRCPで膵管異常を示さず, DWI/ADCでのみ描出された5mmの微小膵癌を検出し, ロボット支援下膵体尾部切除により根治切除し得た。これらより, 腫瘤形成以前の徴候を重視したMRI中心の診断体系と, 飲水法によるUSを組み込んだスクリーニングは, 早期膵癌の拾い上げに極めて有用と考えられた。

総説
  • 渡邊 能行
    2026 年64 巻3 号 p. 473-480
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    胃がん検診への国庫補助開始は1966年(昭和41年)からであった。しかし, 我が国の胃がん検診は科学的な証拠があってスタートした訳ではなかった。がん研究助成金による胃がん検診の研究班活動は, スタートしていた胃X線検査による胃がん検診プログラムに対する関係者による症例対照研究2編という後追いの疫学研究によって評価がなされた。便潜血検査を用いた大腸がん検診に対しては1992(平成4)年の老健法第3次計画における大腸がん検診導前に, 研究助成金による大腸がん検診班において症例対照研究によって大腸がん死亡率減少効果を見出したことが経緯となっていた。このように, 学問の進化によってようやく根拠に基づく公共政策の方向性が認められるに至った。

  • 大野 栄三郎, 廣岡 芳樹
    2026 年64 巻3 号 p. 481-490
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    膵癌(浸潤性膵管癌:PDAC)は近年増加傾向にあり, PDACの予後改善のためには根治可能な早期の段階で診断する必要がある。進行期まで症状が出現しにくいPDACを早期に診断するためには, PDACのハイリスク群を対象とした効率的なサーベイランスの実施と, PDAC早期診断に有用なバイオマーカーの確立が必要である。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は膵癌のハイリスク群とされ, 2024年に改訂されたIPMN国際診療ガイドラインではIPMN患者における経過観察の方針が示された。一方で現時点ではIPMN併存PDAC発症の危険因子として年齢以外は解明されておらず, 低悪性度IPMN患者に対しても継続的なサーベイランスが必要である。膵癌早期診断のためにはPDAC発症ハイリスク群の更なる絞り込みが急務となっている。IPMN以外にもPDAC発症のハイリスク群として家族性膵癌や遺伝性腫瘍症候群のように遺伝的な素因を有する患者群が挙げられる。これらのPDAC発症のハイリスク群に対して, 定期的なサーベイランスの実施と並行した新規膵癌早期診断バイオマーカーの探索が将来の早期膵癌診断の道を拓くと考えられる。

原著
  • 鈴木 雄飛, 吉川 裕之, 杉原 有紀, 相田 佳代, 清水 恵理奈, 武藤 繁貴
    2026 年64 巻3 号 p. 491-501
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    【目的】当施設で実施した大腸がん検診の受診者に配布したリーフレットによる情報提供が, 精検受診率向上に寄与したか検討した。

    【対象と方法】当施設で便潜血検査免疫法(Fecal Immunochemical Test:FIT)陽性となった受診者を対象にリーフレット導入前の2018年4月から2020年3月までの3,313例を介入前群, 導入後の2020年4月から2022年3月までの3,415例を介入後群として介入前後での大腸内視鏡検査(Colonoscopy:CS)受診率の変化を比較検討した。

    【結果】CS受診率は介入前群が67.5%, 介入後群が70.5%と向上を認めた(p=0.009)。職域検診, 地域検診のグループで分けて比較すると, 職域検診では介入前群63.6%, 介入後群67.8%と向上を認めたのに対し(p=0.002), 地域検診では介入前群82.2%, 介入後群82.8%と変化を認めなかった。検診当日の医療面接/保健指導の有無別に分けて比較すると, 「あり」では介入前群76.9%, 介入後群82.0%と向上を認め(p<0.001), 「なし」でも介入前群58.5%, 介入後群63.6%と向上を認めた(p=0.005)。

    【結論】2種類のリーフレットを用いた情報提供により, 特に職域大腸がん検診におけるCS受診率の向上を見込めることが示唆された。

  • 大野 秀樹, 木村 綾子, 後藤 俊哉, 細田 麻奈, 岡部 ゆう子, 小川 哲也
    2026 年64 巻3 号 p. 502-511
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    【背景】C型肝炎における直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals: DAA)治療によるSustained Virological Response(SVR)後の長期的な肝線維化と肝脂肪量の変化についてMRエラストグラフィ(MRE)とProton Density Fat Fraction(PDFF)により解析した。

    【対象と方法】DAA治療前後にMREを施行した当院C型肝炎患者53例を対象とし肝硬度と肝脂肪量の変化, 及び肝硬度の改善に影響する治療前因子について後方視的に解析した。

    【結果】SVR後に肝硬度は有意に低下した。しかしSVR後3年の時点で治療前より19%以上低下したのは14例(54%)と約半数であった。肝硬度非改善に関与する治療前因子は高中性脂肪血症(p=0.028)であった。肝脂肪量は1年目には有意に低下したが, 2年目以降は治療前と有意な変化はなかった。

    【結語】SVR後に肝線維化は経時的に改善するが, 脂質異常症を合併している場合は改善が乏しく, HCV治療とともに生活習慣病の管理が重要である。

  • 森 英輝, 座覇 修
    2026 年64 巻3 号 p. 512-523
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    【目的】膵癌の早期診断には検診により高危険群を拾い上げ, 経過観察を行うことが重要である。アポリポ蛋白A2アイソフォーム(APOA2-i)の検診における有用性を検討した。

    【対象と方法】2024年5月からの1年間にAPOA2-iを検診で測定した4,404例と, APOA2-i陽性で精検を受けた84例を後方視的に検討した。

    【結果】APOA2-i陽性率は5.0%であり, 陽性者は高齢, 低HDL, 低Albと独立して関連していた。腹部超音波(AUS)での膵異常所見の発見率と膵描出不能の割合は, 陽性者が陰性者よりも有意に多かった(4.5% vs 2.2%, 10.6% vs 4.2%)。精検受診者の35.7%に膵疾患を認め, IPMNは13.1%であった。

    【結語】APOA2-i測定は膵外分泌機能低下例を拾いあげることが出来る唯一の血液バイオマーカーであり, AUS検診では拾い上げが難しかった膵癌リスク疾患の検出に有用であった。APOA2-i陽性者は膵癌高危険群として慎重な経過観察が重要である。

経験
  • 中村 洋典
    2026 年64 巻3 号 p. 524-536
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル 認証あり

    東京都八王子市では, 2018年度より胃がん内視鏡検診を導入した。その後, X線検診との併用を経て, 4年目の2021年度にはX線検診を廃止した。胃がん検診の受診者は2017年度のX線検診単独時の7,555名から2022年度の内視鏡検査単独時には8,579名に増加した。併用期間中, 検診対象者の95%が内視鏡検査を選択したことからも, 内視鏡検査が胃がん検診の受診率向上に寄与したと言える。5年間における胃がん内視鏡検診の延べ受診者数は37,558名, 累計で151例の胃がんが発見され, 122例が早期がん(うち87例は粘膜内がん)であった。またプロセス指標である精検受診率は100%, 生検実施率は4.9%, 要精検率は5.2%, がん発見率は0.40%, 陽性反応適中度は7.7%であった。これは2018年度から2022年度までの5年間の全国や東京都全体と比較しても良好なデータであったと言える。八王子市医師会が独自に実施する二重読影体制をはじめ, 行政と連携した高い精度管理体制の構築が, 市民への胃がんによる死亡率減少に貢献したと考えられる。

    八王子市と八王子市医師会が導入した胃がん内視鏡検診の5年の軌跡について, 導入経緯, 実施方法, 実績, 精度管理体制を維持, 向上させる取組について報告する。

編集後記/奥付
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