21世紀に向けた, 高度情報化の進展は, 情報, 知識の価値を高め, 創造をもとにした知的社会をもたらし, 図学と深い関係にある設計にも環境面で大きな影響を与えることが考えられる。この結果, 設計者は, 従来の改良や模倣といったことから, 創造性の高い設計能力を求められる。創造活動を支援する図能力は, 創造教育が確立されていない今日, 設計に取って重要な支援手段となることが考えられる。現在, この図能力は, 図学によって細々と養われているが, 今後,その能力の必要性が増すものと考えられる。しかし, 図学の現状は, どうであろうか。図学内外において, 学会活動では, 計算機導入と国際化により, 過去に例を見ない未曾有の学会数と論文数である。社会のニーズの高まりと学会活動は, 符合するがごとく一致した動きを示している。しかし, 図能力に対する需要の現状は, どうであろうか。個々数年来, 大学改革により, 全体のカリキュラム構造が変わる中, 図学は, 残念ながら減少の傾向にある。図学内外の現象とは, 相反する状況が生まれている。このような背景には, 図学内外において図学が正確に認識されてこなかった可能性がある。図学は, 明治期,輸入時の翻訳が直訳であり, “渡来文字”幾何”の意味や“Descriptive”の捉え方が異なっていたため, モンジュ図学の真意を反映していなかったのではなかろうか。Geometry Descriptiveは, 幾何描写で, メンタル部でのイメージ物の測り得る構成とその定量表現と図からの空間の取り扱いで, “物作り”を科学的に行うためのものである,目がまわるような複雑な図を奇麗・精密に描き緻密な頭を養うことや, 難問・奇問を受験生のごとく短時間に解くことなどと, どこか違うのではないか。情報化社会では, 多くの図情報を取捨選択し, 計算機を使い加工,あるいは, ネットワークを介したコミュニケイションでアイディア交換など, 対象物を処理する上で, 情報の媒体として図能力が, 高められていなければならないのは, 当然のことと言える。図学に関する, ソリッドモデリングのための空間認識法は, 200年前既にモンジュによって確立されている。しかし, 未だに目標が定まらないかのごとく, この言葉は, 一人歩きをしているように見える。今後,重要性が増すのは, このメンタル部の図能力で, これも物と表裏一体の関係にある物理条件 (工業製品で) との関係でその能力が求められる。図学は, 衰退しているが, 復興にむけワントライのチャンスは, ある。また, このようなことを逃せば, 工業会の大きな損出にもつながることが考えられる。本報では, 高度情報化社会の到来で, 設計の創造化とともに,図学の必要性を, 1) 設計支援能力としての図能力必要性の高まり, 2) 図能力強化にはモンジユ図学の再解釈の必要性 (原点に戻る) , 3) 教授者側能力として知識習得ではなく図能力高揚の必要性について述べた。
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