図学研究
Online ISSN : 1884-6106
Print ISSN : 0387-5512
ISSN-L : 0387-5512
32 巻, Supplement 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
  • 浅川 泰子, 佐藤 仁一朗, 井野 智
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 1-4
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    透視投象においては、物体と画面の配置条件や視点位置によって、原形態を全く把握できない透視図が描かれてしまうことがある。本研究は、原形態を適切に表現するための透視投象の作図条件を明らかにすることを目的に、建築物の基本的形態である立方体と直方体を対象とした形態視実験及び建築透視図作品の視点位置分析を行い、以下のことを明らかにした。
    (1) 1消点法においては、作図条件の内、視距離と視る横位置、視高の間の関係を、2、3消点法においては、視距離と視高間の関係を各々1次式で表現することができる。
    (2) 立方体を対象とし形態視実験を行った場合、立体図の右側面よりも左側面の面積が大きいものの方が原形態が認知されやすく、また立方体の形態を自由にイメージさせると、2つの側面の内、左側を正方形に近く表現することが多い。
    (3) 形態視実験の結果と建築透視図作品の視点位置分析の結果より、視距離と視高の関係は共に、1次式で表すことができることが明らかになったが、それぞれ描こうとする透視図の対象範囲が異なるため、両者の回帰係数には違いが見られる。
  • 阿野 太一, 佐藤 仁一郎, 隼田 尚彦, 井野 智
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 5-8
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    高層建物によって形成される景観と、写真や透視図による印象とは必ずも一致しない。その主な理由としては、写真や透視図が二消点法であったり三消点法であっても仰角を恣意的に決定しているために、実際に人が捉えた景観との問に大きな隔たりが生じているからである。本研究は透視投象法を形成する主要な要素として、主視線の仰角と視点距離・建物の高さ・形状の複合指標である有効対角画角との間の関係を明らかにすることを目的として、大判カメラにより仰角を段階的に変化させた写真と、人が同じ場所で受ける印象との差異を調べたものである。高層建物についての静的景観シミュレーションメディアとして有効な写真または透視図の構成について、次のような結論を得た。
    (1) 二消点法と三消点法による写真を比較することで、高層建物には二消点法が不向きであり、仰角を適切な値とした三消点法がより優れていることが明らかとなった。
    (2) 三消点法による写真または透視図に適切な仰角を有効対角画角の関数として提示した。
    (3) 実験によって得られた「仰角が10゜以上であるものは不適切である」という仰角の限界についての考察は前項の関数からも検証した。
  • ―建築における軸測図の使用について―
    加藤 道夫
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 9-14
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, 建築における軸測図, 特に20世紀初頭の近代建築家やデザイナーに大きな影響を与えたといわれるショワジー (Choisy, A.) の軸測図を中心に取り上げる。その前段階として軸測図という用語の指す内容の確認を行った。すなわち, カバリエ投象やミリタリ投象と呼ばれる斜投象が軸測図に含まれるのか否か, という問題である。そのため, 図学分野では1970以前に公刊された教科書を調べ, 3つの立場があることを示した。また, 建築の分野では斜投象であっても等測図と呼ぶ例が存在することを示し, その初出例のひとつとしてブロムフィールドを挙げた。ここでは, ショワジーの見上げのミリタリ投象が等測図と説明される。以上, 混用の実態を明らかにした上でその混用の要因が, 1) 分類概念の適用順序, 2) 直軸測図の理論的整備の時期とカバリエ, ミリタリ投象の利用時期のずれ, にあると推論した。更に, ショワジーの『建築史』 (1899) における軸測図を調べ, 以下のことを明らかにした。1) 等測図, カバリエ投象, ミリタリ投象が混用されている。2) 縮率の比をみるとカバリエ投象やミリタリ投象で縮率を縮める表現法と等縮率で描く表現法が混用されている。3) 陰影表現が見られる図と見られない図が混在する。4) 以上からショワジーの『建築史』における軸測図はその多様性において一つの完成形態を示すと結論づけることができた。
  • 佐藤 仁一朗, 井野 智, 隼田 尚彦, 川田 孝之, 植松 武是
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 15-20
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本論は、実測調査に基ずきCADを用いて復元した北海道余市郡余市町の文化財「乗念寺鐘楼門」を事例として行った形態視実験の結果についての報告である。被験者は東北工業大学電子工学科1年次学生104名、実験は2段階からなる。初めに、建物を中心に15度ずつ24等分した主視線上の軸測図24枚を作成し、原形態を最もよく表現していると思われるもの1つを選択させた。選ばれた軸測図のほとんどが進入方向である南北軸を中心として45度方向またはこれよりやや中心寄りのものであり、出入口や扉の全く見えない図の選択は皆無であった。人間が立体図から建物を想像しようとすると、その構造と機能がよく表現されている必要がある。前者は幅、高さ、奥行きの関係、後者は本例の場合、鐘楼門としての出入口や扉がこれに当たる。次に、各主視線ごとに視距離5.0m、7.5m、10.0m、12.5m、目標点の高さ2.0, 4.0, 6.0m (仰角: 下位、中位、上位) の異なる12枚の透視図を用意し、被験者が選択した主視線に応じて、視距離と仰角の好ましい組み合わせを選択させた。その結果、視距離に関係なく仰角中位のものが約70.0%を占め、視距離が建物の高さを上回る10.0m以上では仰角中位が約94.0%を占めた。視距離が大きくなると、建物全体として原形態を把握しようとする仰角が選ぶばれる傾向が見られる。これらのことは被験者が透視図を選択した理由の記述内容ともよく一致している。
  • 杉野 目章, 黒沢 和隆, 河合 哲郎, 井野 智, 小室 晴陽
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 21-26
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    軸測図法は単なる正投影法としてCG等によるその数理的扱いに今更再考の余地は本質上はありえないが、特に本来の手作業の改善はその対話型利用の付加価値もあって基本的重要性があろう。手描きによる同図法による作図のうち、基準系の実形化転倒、視角変更用回転等の変換作図作業は被描出対象系と投象系の相対的位置変化につれて悪条件化し易く、自明の原則論的な手法以外の各種の特定基本作業別の作図促進手段が未整備と言える現状では、作業能率化の工夫は今後も有用と思われる。その一端として著者ちは当該の補助図式を考慮してきたが、主題の総合的扱いの上では、実際面や内外の図学書等で同上作業との関連付けの不明確さが未だに感じられる平面幾何の当該図式にも言及を要しよう。因みに今回は同図法の基本的な別種変換への既報の一、二の補助図式の応用例として (1) 通常の作図法による楕円の共役軸と主軸との間の相互変換を最も簡易な楕円作図法である同心円法の拡張概念と見なされることの平明な図解作図及び、同図法における基本変換である基準系の座標平面の実形化転倒作図が上記悪条件化を生じ易いことについて、その改良試案を示す。 (1) の変換については既往の図学書ではその実行手順のみ示され、証明は記載されていないが、軸測図法とは不可分であり当該の教材としても有用と思われるため、同法との具体的関連で図上のみでより簡明かつ直覚的に行い得ることを示し、 (2) については空間での垂線の作図を例題に用いて単純な幾何的作図への (2) の補助手段の応用の可能性を示す。
  • 蛭子井 博孝
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 27-30
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    点と直線は、場合により、無限に小さく、無限に細い、要素と考えることがある。つまり、三直線が一点で交わるという共点性を考えるとき、点は概念的に無限に小さいと考える。また、三点が一直線上にあるという共線性も、無限に細い点と線を考える。しかし、図形を作図するとき、点を目で書く場合、コンパスの針の位置決めには、高々0.05mmぐらいの精度であり、それ以上の精度は望めない。また、定規を使う場合、点と点を結んで線を作るときもそれぐらいの精度である。また、CADによる作図は、交点サーチなどがあり、コンピュータの持つ実数精度の意味で厳密性が増す。そこで、共点性の確からしさも増すことになる。
    しかし、それでも極限的実数濃度の点の位置は、確かめようがない。そこで、作図による、例えばパップスやデザルグの定理の共線性やその点と線の関係を入れ替えた双対定理の共点性の図は、証明なしには、厳密に成立したとは言えないであろう。そこに、論理的証明に意味がある。では、論理的証明がいいかというとそこにもまた限界が見られる。なぜなら、証明すべき作図的命題がユークリッド的命題と取るか非ユークリッド的命題と取るかの認識の違いにより、 (たとえば、平行線の公理をどのように用いるかなどにより、) 異なるからである。つまり各個人の知識体系の違いにより命題の持つ認識や意味は異なるのである。そこに、定理の作図にしろ、証明にしろ、その表現を味わう意味がでてくる。そんなことを思いつつ、今回は、定理の円表現を味わって頂きたく、それらの若干のCADによる作図表現を行う。
  • 平野 重雄
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 31-36
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    機械設計製図教育は, 設計-ものづくりという工学の本質を, 最も直接的に教える教科であり, 工学教育全体にとっても極めて重要である.ここで, 特に大切なのは, 機械設計製図教育の全体を通して, 学生に総合化のための解析能力の育成, ものを思考し創造する能力の育成, もう一つは設計思考を伝達する手段のひとつである製図においては, 製品 (装置) を構成する各機構の要点を正確に捉える能力とものの形状を認識して的確に表現する能力の向上を図る教育をしなければならない.
    この研究においては, いわゆる座学 (講義) ではなく体験教育である設計製図として, 図形認識能力の向上を意図した教育システムについて検討した.その内容は, 部品図を基に組立図を効率よく設計製図するために, 立体図と分解立体図を用いて設計思考を行う.そして, 分解立体図により構成部品の要素の内容や機能を把握するという教育である.提出された図面の評価と理解度の調査結果を分析したところ, 組立図を設計製図する際に, 対象製品の立体図と分解立体図を描き種々の検討を行うことの学習成果が顕著であることが分かり, その有用性が確かめられた.
  • 牧 博司, 加川 穂積
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 37-38
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    機械を設計する際に実物が存在しない場合が多いので部品あるいは製品の図面の投影は図面を描く人間が自分で選択するわけである。その際に、その人間は過去に教育された投影の知識から脱皮できないことが多い。機械系の学生ならJIS B 0001を教育される機会が多いので、その中に例示されている図が自然に頭に入っているのが普通である。ところがそれは図面ではなく単なる説明用の図なので、この図を参照して教育を行っている教育関係者に注意をうながした教育資料。
  • 大村 勝
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 39-40
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    強度や機構など機能を満足すればよいとされたいままでの設計では, 使用者や消費者のニーズを満足することはできない。また消費者のニーズにより製品寿命の短かさから, 短期間の製品開発とリードタイムの短縮化は, ますます重要になってきた。そこで本論では, 製品開発を目的とする, オブジェクト志向型の独創的新製品開発設計ならびに次世代生産システムでの設計について述べ, 最後にコンカレントエンジニアリングにおける設計手法として, 製品故障時や廃棄に至った場合の回収をも考慮した, インバースマニュファクチャリングについて, ISO14000を達成できる事項について述べる。まず現在の3次元CADからデジタルモックアップへ, 同時並行処理を行いデジタルファクトリーへPIM (Product Information Management) とCSS (Collaboration Support System) を通して, デジタル情報をアクセスすることについて述べる。これらの設計手法は, 膨大なデータベースを必要とし, 設計技術者単独では, 無理で仮想的な, 設計技術者を考えなければならない。これらの設計思想においては, 常に“人にやさしい”ということを配慮し, CAMへのリンクも設計段階において, デザインレビューしておく必要性があり, この新しい設計概念と手法を適用するためにすべてのノウ・ハウをドキュメント化して, ファイルに蓄積しておくことが必要とされことなどについて述べる。
  • 水野 兼雄, 横田 成昭, 寥 菲菁, 平野 重雄
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 41-44
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
  • 米村 貴裕, 広瀬 健一, 長江 貞彦
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 45-50
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、より人に優しいマン・マシンインターフェースとして、ビデオカメラからの入力画像を処理しアプリケーションの操作を行うシステムの開発を目標とした。コンピュータに装着したビデオカメラからの入力画像における人物の手の動きを解析することで、モデリングアプリケーションの操作に利用した。このモデリングアプリケーションでは、手を動かし輪郭を入力することで壷型の回転体を作成することができる。また、入力画像にオーバーレイ表示された回転体オブジェクトの形状に対して、修正作業を行うことも可能である。形状を指で押すことでオブジェクトを変形させことができる。この修正作業中に使用するために、ジェスチャコマンドも組み込んだ。本コマンドにより、簡単な手振りや指書き文字による、表示アングルの変更が行える。本システムにより、非接触環境での簡単なモデリング作業を実現させることができた。
  • 小島 一成, 広永 美喜也, 長江 貞彦
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 51-52
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、和歌山県における無形文化財 (民族芸能を含む) の現在72件の指定の中から「寒川祭り」を画像データベースに記録し、日本の貴重な伝統芸能を三次元的に保存 (記録) することを目的とする。しかし、このような伝統芸能は、被計測者をMotion Captureなどの特殊な計測環境で計測することは困難で自動化が難しく、また既に撮影された画像を利用するためにもその三次元動作の解析には人間の指示が必要となる。しかし、動画像の全てのフレームで指示を行うと膨大な作業となるため人間の指示によって得られたフレーム間を効率的に補間する方法が必要となる。そこで、今回踊りの中の反復動作に着目し、残された二次元データから三次元の動作を推定するために時間軸のある点 (リズム) を利用し、フレーム間の関節角度を補間するために動作の解析を行った。
  • 加川 穂積, 牧 博司
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 53-56
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    写真フイルム画像より被写体の寸法を0.5%以内の精度で求めるための処理作業と補正法につき述べる激値データは材料力学や制御解析に利用することにより計算時間の短縮が可能となった.それら処理での利用機材の特質と精度限界につき述べる.
  • 横澤 肇, 市原 誠二
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 57-60
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    機械による物体認識を目的として、距離画像が撮影される。本研究は物体の形状を計測するために、先ず物体を構成するそれぞれの面を正しく認識する手法を検討したものである。撮影対象には多面体のような、構成面が平面のみの物体を選んでいる。物体表面をそれぞれの構成平面に分割するためにDNP (Digital Neibourhood Plane) を利用する。DNP手法は本質的に局所に注目したものであるので、分割された面セグメントの幾何学的特徴を比較することによりセグメントの統合を行い、面相互の整合を図る。この手法を曲面を含む物体に適用することも可能で、この場合は曲面部分を平面に近似して計測する。
  • 原 巨実治, 飯田 尚紀, 畠山 絹江
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 61-64
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では人体の計測データの中でも体幹部の周長を近似するため、現実の人体断面形状を表現する関数を設定し、設定した関数より、周長近似値の計算を行うことを目的としている。本報では、その基礎研究として人体断面図からその周囲を近似する関数をフーリエ級数展開の手法を用いて設定し、周長近似を行うことと、フーリエ係数の変更による断面形状の変形などの可能性、多様な形状をもつ人体断面のパターン化を容易にする為の断面形状の標準化について考察した。この結果、フーリエ関数化を行った人体断面形状より、被服の採寸に適合した周長近似を行えることと、フーリエ係数の変更による断面形状の変更が可能であることが確認できた。これらにより、フーリエ関数を用いた周長近似計算システム構築の可能性が確認でき、人体体幹部の周長近似に関する1つの方向性を示すことができた。
  • ―螺旋の合成―
    渕上 季代絵
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 65-68
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    1996年の日本図学会大会および図学国際会議、1997年の大会においてCGを用いた螺旋形態の生成に関する報告を行った。一回目は自然の螺旋形態を対象として、ねじれを伴った旋回形態の生成アルゴリズムとその結果について、また昨年は形態全体に不規則な要素を付加するために、まず、平滑な表面に凹凸をつけるためのアルゴリズムと巻き上げの幅を不規則にするためのアルゴリズムを挿入して成果を得た。これらのアルゴリズムによって自然の螺旋に類似した形態から抽象的な形態まで、さまざまなタイプの螺旋形態を作成することができるようになった。今回は昨年からの不規則性に関する考察をさらに進め、旋回形状の作成部分について検討した。旋回形状の作成は数式を用いており、変数値によって5種類の螺線を作成することができる。これらのうちの一本を選んでねじれ形状と合成しているが、どの螺線も中心から規則的に外側に広がっており、螺線自体は単純な形状といえる。この螺線を複数組み合わせて複雑な旋回形状の作成を考えた。同一の螺線を繰り返し使う、あるいは異なったタイプの螺線を結合させることによって、これまでとは印象のちがった螺旋形態の作成が可能となった。
  • 辻合 秀一, 兼子 次生
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 69-72
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    速記符号は, 話す内容を筆記によって記録するために開発された文字である.速記符号は, テープレコーダによる記録と違い, 声にでていない動作や雰囲気なども記録されることがある.また, 速記符号は, 国会, 地方議会や裁判所などの公式記録や民間記録会社で使われている.しかし, 速記符号は, 大同小異のものを含めて80方式が開発されている.また, 速記者の癖により書いた本人しか読めないことがある.このため, 記録した速記符号は, 速記者が後日, 反訳を行い誰にでも読むことができる文章にする.従来, 速記符号は, 紙に鉛筆で描くか, 速記用タイプライタで記録していた.しかし, 本研究では, コンピュータ上に速記符号を描くことにより反訳時間の短縮化をはかるものである.また, 速記符号は, 高速に書く必要性から, [1] 簡捷 (簡素単純なものにし運筆時間を短縮) , [2] 省略 (前後関係で読めるようにしたり, 画数を減らす) , [3] 類推 (関連性のある法則化) , [4] 卓上 (特徴的を持たせ運筆を容易にする) , [5] 流動 (流線化して運筆の抵抗を減らす) を求める.以上のことを鑑み, 本研究では, 速記符号とコンピュー夕のマンマシンインターフェスの最適性も考慮し入力方法の思考も行った.まず, 速記方式は, 形の体系化が進むV式速記選び, 開発環境を携帯機器やインターネットでも利用できることを考慮に入れJava言語にした.
  • 小山 清男
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 73-78
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    われわれが日常的に眼にし、また用いる漢字には、長い歴史があり、形の上で多様に変化して現在に至っている。漢字は本来象形文字であって、対象となる具象的なものの形を、線によって単的にあらわし、それが文字としての意味を担うようになった。形としてみれば、それらはすべて線の構成によって成り立っている。したがってこれを図学的にみることも、必らずしも不当なことではないと思われる。主として甲骨文では、写実的であったものが、しだいに形を変えて、金文、篆文となり、それが整理されて現在の明朝体の活字となった。その変遷の過程に、図形としての興味深いものがいろいろみられる。本研究では、まず平面図形としての漢字の特質を瞥見し、さらに図学的な視点から、漢字の原初的な形が、正投象における平面図、立面図、断面図、また透視投象的なものから、どのように現在の漢字が形成されてきたかをみるとともに、それらに関連する絵画作品と対置してみていこうとする試論である。なお、図学の分野を広げるとともに、それをいくらかでも親しみやすいものにしようとする、図学教育への想いも、ひそかに含まれているといえるかもしれない。
  • 佐藤 尚
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 79-84
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    従来プログラム可視化のための手法は、汎用性の少ない手法で開発されていることが多かった。これに対して、小池は局所描画ルールを利用したボトムアップ的描画法にもとつく汎用的なプログラム可視化手法を提案した。
    本研究では、論理型プログラミング言語であるPrologを対象にした局所描画ルールを用いたボトムアップ的描画手法を利用した、プログラム可視化システムの開発を行った。Prolog言語には、通常のプログラミング言語とは違った特徴があるので、それに即した機構を新たに導入し、システムの機能の拡張をはかった。この機構は、描画方向変更機構と拡張スケーリング機構である。描画方向変更機能は、どの節が選択をされたかを図上であらわための機能であり、選択された節の位置に応じて描画方向を変更するものである。拡張スケーリング機能は、バックトラック発生の場所と回数を図上であらわすための機能であり、バックトラック発生場所のスケーリング値をバックトラックの発生回数の応じて変更するものである。このシステムは、Prologのメタインタプリタで書かれている。この特徴を生かして、drawing_ruleという述語を導入し、インタラクティブに局所描画ルールを変更できるように作成されている。
  • 町田 芳明, 近藤 邦雄, 野沢 徳生
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 85-90
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では人の感覚に頼っていた配色デザイン作業の高度化、効率化するために配色システムの開発を目的とする。このために (1) 角度配色法を用いて、調和配色を得るための色相を計算する手法、 (2) 与えられた複数の色相から彩度、明度を決定するための計算手法を提案する。デザイン作業に用いられている角度配色法をもとにした計算処理手法は、配色作業を効率化、省力化に役立つ。本手法によって調和条件を満たす色相を得ることが容易になる。さらに、角度配色法によって得られた複数の色相から色を決定するためには、明度や彩度を求める必要がある。本研究では、与えられた複数の色相から明度、彩度を決定するための手順を分析する。そしてユーザが指定した色を基準にして、角度配色法で得られた色相に対する明度、彩度を計算し色を決定するための計算手法を提案する。そして、これらの提案方法を組み合わせた配色システムによるデザイン画像生成について述べる。以上により次のことが分かった。角度配色法は計算処理に適した手法であり、本研究によって調和条件を満たす色相を得ることが容易になった。彩度、明度の調和条件を満たす配色計算処理が可能となった。以下に、本研究で構築した配色システムの特徴を示す。 (1) 角度配色法により、調和した配色例を得ることができる。 (2) 色数が豊富であることから、使用したい色による配色が得られる。 (3) 調和配色の比較が容易なことからデザイナーの教育に役立つ。 (4) 瞬時に調和配色を得ることができるので、配色作業における時間短縮が可能である。
  • 長江 貞彦
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 91-96
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は陶磁器に関するバーチュアルミュージアムを構築するもので、範囲は一応プロジェクトの発案の経緯により京都府に保管されている創作陶磁器100選に限定している。最初に現物の形状と模様を記録するためデジタルデータにおとす作業が必要で、ここでは形状測定にはレーザービームによる自動スキャンを、紋様データは蛍光灯の照明によるCCDカメラ入力を試行し、ほぼ初期の目標に近付けた。今後は、これらのデータを有効かつ動的に活用するため、魅力的なビジュアリゼーションの在り方を研究する必要にせまられている。すなわち、『陶磁器VR館を作ってどうなるの?』の質問にも十分答えられるコンセプトを固める必要がある。幸い、本プロジェクトにはアーティストをはじめ産官学の協力スタッフが得られているので、幅広い観点からのアイデアや議論が集約され、著作権の問題も研究内に限ってはクリアしている。本稿ではとりあえず陶磁器100点のデジタル入力とテクスチュアマッピングの技法を解決し、ついで陶磁器VR館の在るべき姿の構想を考察したので、その概要を以下 (ビデオ上映も含む) に要約しておく。
  • 梶山 喜一郎
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 97-102
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    立体図に描かれた対象は、知覚により直観で理解できる。しかし対象の位置や大きさを数量的に知覚することは困難である。図上で面積や体積を知るには、計量的な尺度を必要とする。立体図を理解するためには投影関係の知識だけでなく、数学的概念である座標系の知識を使わなければならない。経験の浅い初心者は、学習した座標系の知識を使おうとしなかった。彼らは立体図で問題を解くとき、図上の図形を座標系により計測しないし、空間の図形を座標系で図に再度表現しなかった。彼らに共通する誤解は、立体図と平面図を混同したものである。立体図形は、その3次元の世界で図形を移動、回転しても図形の持つ性質 (角度や長さ) は変わらない。同様に平面図形も2次元の世界で図形を移動し回転してもその性質は変わらない。しかし立体図は3次元の世界を2次元の世界に投影したものであり、図形はその世界におかれた位置により、図上の位置あるいは長さや角度が変化する。初心者はこれらの知識を使わずに、立体の持つ性質をそのまま立体図に表現しようとした。この結果、初心者は直角型、合同型、平行型、座標軸型、回転型の誤った幾何学的知識にもとづく立体図理解の手続きをつくりだしていた。
  • ―立方体の切り口の解析―
    澤田 吉苗
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 103-108
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    高等学校において、教員養成課程志望者は文系と位置づけられ、数学等において学習内容の量・質ともに差が生ずることは当然であるが、必修の基礎的な数学も「放棄」してしまったように感じられる。そこで、中学校数学程度であれば、レディネスとして活用できるのではないかと考えて、女子学生を対象とした、「生活図形科学」の授業において、切り口のある立方体の展開図を作成するための解析について取り上げた。その解析の理解を助けるために、作図過程や解析用の参考図をプリントとパソコン画面で用意し、解析結果をパソコン上で解答できるよう準備した。
    本授業では、中学校程度の数学として、三角形の相似等を用いて、切り口の座標値を求める学習を展開して、期末試験においても、解析に必要な参考図やパソコン画面を提供した。
    その結果、前報では、解析に着手していない答案がほとんどであったが、今回はほとんど着手し、簡単な問題は正解者も多く、問題の意図が理解されたと推察される。しかしながら、式を立てて解を求めるという、解析能力 (中学校程度数学) は、十分に発揮させることができなかった。
    図法幾何的手法において、入門期のツールとして、定規やコンパスの代わりに、パソコン上で中学校程度の数学的な解析力を活用することは、学習過程を支援するための有効なソフトを開発すれば、可能であると考えられる。
  • 早坂 洋史
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 109-112
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    図形科学教育については、過去から多くの大学等の図学担当教官を中心に、種々の観点からの検討が行われてきたが、統一的な結論が得られないまま、大学改革の波の中で、教養部の廃止、基礎科目としての図学の切り捨てが進行しているのが現状である。
    本報告では、北海道大学工学部と大学院における旧図学担当教官の携わっている、図形科学関連教育の現状について述べた。大学改革前では、3つ程度の講義であったものが、改革後は6講二義に倍増している。次に、図学の歴史や現状を概説し、初等図形科学関連教育へのCAD導入の可能性や必要性を検討した。旧図学担当教官の一人の筆者が1997年度より開講した授業へのCADの導入の実績についても述べた。
    検討の結果、CADなどを導入した初等図形科学 (図学) 教育の新たな展開は、時代の流れでもあり、また、必要不可欠であるとの結論に達した。しかし、北海道大学での現状は、担当教官の高年齢化や大学改革のひずみも表面化してきている。このような、内外の大きな問題を前に、人員的にも設備的にも現状維持がやっと、という状況にある。この現状にでも、図形科学 (図学) 担当教官の責任として、21世紀に向けた図形科学教育の在り方を今後も図学会会員のご意見を伺い、また、ご支援を得ながら、より明確化し実行に移して行くつもりである。
  • 長島 忍, 小林 悦雄, 早瀬 光秋
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 113-116
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    コンピュータとネットワークの発展に伴い、電子メールによる情報交換やWWW (World fide Web) による情報発信が普及し、これらの設備や技術を用いて企業ではイントラネットの構築が進んでいる。筆者らは大学においても教育用イントラネットの必要性を感じ、その開発を進めている。大学における教育用イントラネットとは授業内容、日程をデータベース化し、必要な資料の取得、課題・問題の作成、学生への提示、学生の提出物の受け取り、採点・評価、学生への報告などを問題のない範囲で自動的に行うものである。ここでは学生が画像を作成して提出した場合に、自動的にデータベース化して保管・管理をする機能を実現した。特に情報処理入門教育などで作品を提出する場合、従来ファイル転送として標準的に用いられているFIPは初心者に操作ミスが多く発生し、授業が円滑に進行しないことがあつた。そのためFTPの代わりに電子メールに画像を添付して提出する方法を採用した。しかしながら手作業でその画像を復元するには膨大な労力を必要とするので、自動的に画像を復元、保存するシステムを開発した。学生が画像を添付してメールを発信すると、学籍番号に対応したディレクトリに自動的にファイルが保存される。さらに提出画像を一覧表示したり、提出者userID、ファイルの容量、提出日時の一覧表などを簡単に作成でを、様々な管理力河能となる。1997年度の授業で本システムを使用し、転送総回数13, 631回、文書作成10, 307、画像作成1, 461、エラー総数951という結果が得られた。
  • 江崎 丈巳
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 117-120
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    高度情報化による設計環境の変化は、設計者に創造、つまり知的な活動をこれまで以上に強いるようになことが考えられる。この現象は、価値体系をなす時・空間軸上の時間的要素の加速化に伴うものである。創造、新概念は、新・既存の知識や概念をより目的に沿った、あるいは新しい可能性を齎す、再構成により生まれる。工学におけるモノ作りでは、概念構成と供にその具体化が重要なこととなる。この過程は、概念の具象化から具現化を取るが、形を中心に進められるため、図概念を必要とする。このため、工学では、創造物をメンタル上で合理的に扱えるよう論理的な方法が図学で教える。MCTは、図的な一種の図的なメンタル能力を測る問題と考えられる。このような問題の構造解明は、図能力を養うコース開発に有効なことと考えられる。本稿は、工学での図的なメンタル能力開発を目的とし、確立された図学的な方法により問題の解明を試みるものである。
  • 斉藤 孝明, 鈴木 賢次郎, 神宮 敬
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 121-126
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    近年、図学教育との関連において学生の空間認識力を評価する研究が行われるようになってきた。これらの研究の中で、空間認識力の評価法として広く用いられているのが切断面実形視テスト (Mental Cutting Test: MCT) である。MCTは、立体図で立体と切断面を示し、被切断面の実形を解答するテストである。MCTの誤答に関して、注視点分析法やプロトコル分析法による研究が行われてきているが、被験者数において検討の余地の残るものであった。本研究では多数の高低得点者の誤答選択肢の分布を分析した。MCTには選択肢のパターンが判れば解答できるパターン判別問題と、パターンだけでなく稜線の長さなどの量的判断が必要と思われる量判別問題があり、パターン判別問題では、高得点層は正解と似通った選択肢で誤答することが多く、低得点層は高得点層よりも形状のより異なった選択肢で間違える傾向が見られた。また、量判別問題では、低得点層は正解の量違いの選択肢ではなくパターン違いの選択肢で間違えることが高得点層よりも多い傾向が見られた。これらの結果はこれまでに報告されている少人数の被験者の解答過程や誤答原因を調べた結果と一致する。以上のように、MCTを多数の被験者に行って誤答を分析したところ、解答過程や誤答原因の高低得点層間の差が誤答選択肢の分布に反映されていることが確認された。
  • ―透視図MCTとの比較を中心に―
    堤 江美子, 椎名 華奈子, 山内 恭子, 須崎 彩子, 斉藤 孝明, 鈴木 賢次郎
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 127-132
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、従来、MCT得点が男子に比較して低いとされている女子を対象に、MCTの問題図を立体視させることによって誤答傾向がどのように変化するのか、つまり、立体視が解答に及ぼす影響という側面から、MCTの誤答原因を明確にすることを試みた。調査結果によれば平均得点では立体視MCTと従来の透視図MCTとの間に有意差は見られなかった。しかし、個々の問題の正解率については、正解率が中程度以下 (20~70%) のパタン判別問題において、立体視によって正解率が有意に増加した問題がみられ、問題毎の何らかの特徴が立体視によって改善されている事がわかった。誤答選択肢の分析から、立体視MCTの成績は、透視図MCTの場合と同様に3次元立体のイメージ生成・加工、および分析的考察能力に関係していると推察されたが、立体視したことで、主に3次元立体のイメージ生成能力が補完されたと考えられる結果が得られた。裏返せば、MCTの成績は3次元立体のイメージ生成能力を反映していると考えらる。ただし、複雑なイメージ加工処理過程では立体視は効果を持たなかった。また、特に低得点の者では、立体視しても立体のイメージ生成が不完全で、立体や切断面を正しく認識できず、提示された図を漠然と認識する傾向があることが示された。
  • 椎名 久美子, 鈴木 賢次郎
    1998 年32 巻Supplement 号 p. 133-138
    発行日: 1998年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, VandenbergとKuseが設計したメンタル・ローテーション・テストをもとにして, 被験者が心的回転以外の方略を用いて解く可能性を減らした改変版メンタル・ローテーション・テスト (MRT) の設計を試みた。改変版では鏡像問題のみを用いて, 各パートが同じ立体で構成されるようにした。また, 過去のデータを基に算出した完答者平均得点の和がなるべく同じになるように問題を組み合わせることによって, 各パートの難易度が等しくなるように設計した。設計した改変版MRTを, 大学生を対象に試行調査して, 誤答分析を行った。同じ立体で構成される問題の完答者平均得点がパート1とパート2でほぼ等しいことから, 改変版のパート間の難易度は等しいことが示された。改変版ではパート2の平均点がパート1より有意に高いが, これは解答速度の上昇に起因すると思われる。得点群別の誤答傾向の分析から, 改変版MRTの中の各問題の相対的な難易度が, 中得点群と低得点群とでほぼ一致していることが示された。中得点群において, パート間で解決速度が上昇しているのは, 心的回転方略を安定して適用する能力や心的回転操作速度が上昇したことを示唆している。今後, 問題数を増やすことで, 高得点群の心的回転能力も飽和せずに測定することが出来ると思われる。
feedback
Top