図学研究
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38 巻, Supplement1 号
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  • 近藤 邦雄
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 1-6
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    埼玉大学工学部情報システム工学科におけるコンピュータグラフィックス教育について報告する。本文では、2001年に第26回図学教育研究会で報告したCG・CAD教育の報告をもとに、コンピュータグラフィックス教育の改善をおこなった結果を述べる。本発表における「作品製作」とは、「意味ある、または意図した表現を行うこと」とする。つまり造形やデザインにおける高度な独創性を望むのではなく、学生全員が全く同じ画像を提出するということをなくし、自らが考えた画像を製作することを目指した。この教育によって、従来のCG教育に比べてCGアルゴリズムに興味をもってプログラム開発ができるようになった。
  • 近藤 邦雄, 西田 友是
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 7-12
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    日本におけるCG研究を活発にするためには、大学院レベルのCG教育において活用できる教材の充実が重要である。非写実的表現 (NonPhotoRealisticRendering) のための教育用Javaソフトウエアをもとにした新たな絵画風画像のブラシ機能、フィルタ機能、描画手法を提案することを目的とするCG教育について述べる。大学におけるCG教育は学部の報告が主であり、大学院レベルの教育事例は報告がない。筆者らは学部レベルのCG教育の教材開発を行ってきている。これらは、CGの基礎的な内容であり最近の研究において提案されている新しい画像生成アルゴリズムは一般には学部レベルでは取り扱っていない。そこで、大学院レベルのCG教育において活用できるCGシステムを順にまとめていくことが重要であると考えた。本報告はそのひとつであり、非写実的な画像生成の研究分野における絵画調画像処理手法の学習を支援する教材を提案する。この教育用システムはJavaプログラムを用いたアプレットを作成することによってアルゴズムを理解することが容易にできること、作成された画像フィルタを利用して各種の絵画処理を理解できることを目標に構築した。
  • 武石 大樹, 佐藤 尚
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 13-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    近年の計算機の高速化とコンピュータグラフィックス (CG) 技術の発展によって, その活躍の場は映画産業から個人的な趣味にまで広がっている.特に映画などで使われているフォトリアリスティックなCG映像は, 既に実写映像と見紛うほどにまでなっており, 多くの人がもっとも身近に感じるCG技術の恩恵の一つだろう.実際にCG技術はこう言った映画制作やテレビ番組制作, ポスター制作, セルアニメーション, DTP, CADなどの分野を中心に発展し, 活躍している.しかし, CGの応用はこのような映画産業に代表されるような商業的で大規模な制作体制を前提としてものだけではない.個人的な創作を前提としたCG技術の研究も重要だ.
    一般にCGを含めた画材を考えると, もっとも親しみがあり, もっとも多くの人が扱ったことがある画材は, 少なくとも義務教育課程で誰もが経験したであろう水彩画だろう.描き手の立場としてだけではなく, 見る側にとっても水彩画の作品は多くの人が親しみを持つだろう.CGを創作のための道具の一つとしてとらえるならば実写を再現するだけではなく, こういった水彩画などの多くの人が親しみのもてる画材による表現を再現する技術も重要であると考える.
    そこで本研究では, コンピュータ上でこの水彩画風の画像を得るペインティングソフトウェアのためのアルゴリズムを提案する.特に透明水彩画に注目し, 以前の武石らの研究の問題点をふまえて, より透明水彩画らしい表現を目指す.
  • 山島 一浩, 森 優子, 荒木 勉
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 19-20
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Web上で地図情報と連携する案内図について, 制作依頼者とデザイナー間の相互運用性を図るWebシステムについて検討する.Web上での地図編集機能, 案内図編集の段階でデザイナーが提示する案内図テンプレート選択機能について述べる.本研究は, 地図表現手法を中心とした地図研究の中に, 空間認知, 視覚伝達デザインの手法を取り込むことにより, より高いコミュニケーション能力を持つWeb案内図配信システムを設計する試みであり, 空間情報の共有とデザインを繋ぐ, 実践的な研究として位置づけている.キーワードCG案内図コンテンツ設計Webサービス
  • 望月 達也
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 21-22
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では3D-CADでアセンブリ設計された機械装置の形状データや空間配置データのドキュメンテーションへの活用を図った。その目的は、ユーザにわかりやすくかつ理解しやすいマニュアルを製作するためである。具体的には、まず、3D-CADデータをインターネット環境で閲覧できるようにデータの圧縮を実行しWeb3Dに変換した。そして、目的に応じてWeb3Dにアニメーション (時間的な動き) を定義した。それから、Webのビューア磯できるようにHTMLでプログラム化を図り、機器の操作や取り扱いマニュアルのデジタルドキュメンテーションを製作し、その有用性を提示した。
  • 大村 勝
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 23-24
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生体の可動関節は滑膜関節 (synovial joint) とも呼ばれ、球関節、顆状関節、蝶番関節など様々な形態を有しているが、いずれの関節においても摩擦面が高含水軟質の軟骨 (Cartilage) で覆われ、関節液で潤滑されており、比較的高荷重下での低速往復運動を繰り返し行っており、流体潤滑が困難な環境であると予想されるが、そのような環境下でも摩擦係数が0.003~0.02位の低摩擦と70~80年以上の長寿命を示すといわれる。
    そこで、本研究においては部分置換型人工関節が実現した場合の関節面での関節液などの挙動をモデル化して関節形状のある一部を代表して、平面上の海綿骨 (Sponge bone) と仮定し、多くの孔からの流出を実験検証すると共に多くの孔の一つを代表する中心に一つの円孔を持つ場合の中心から周辺への流出について、静圧軸受と考え解析し、さらに軸受面が弾性的に変形する場合の弾性軸受としての挙動などを考慮にいれて弾性流体潤滑 (Elasto Hydrodynamic Lubrication: EHL) 理論によって解析を行い膜厚を計算によって推定した。
    関節面相互の相対すべり時の挙動を明らかにするために、まず関節液 (潤滑液) の無い場合の摩擦について実験検証すると共に、関節液と考えられる水を多くの孔から流出させながらモーター駆動による回転を与え、許容負荷荷重、またそのトルクからクーロン摩擦係数を求めた、さらに孔のない領域における関節液の閉じ込め効果による挙動について、軸受面の表面粗さ、弾性係数と摩擦係数の関係についても考察した。
    部分置換型人工関節の形体、機能について基礎的な設計データを蓄積する事で、将来CAD/CAM手法による人工関節の製作が可能となる事を目的としている。
  • 岩下 隆史, 廣瀬 健一, 長江 貞彦
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 25-28
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    近年、パーソナルコンピュータの急速な普及に伴い、様々な人々がコンピュータを使用している。しかし、主なインタフェースは、未だマウスやキーボードやタブレットなどである。これらのインタフェースの操作は、日頃からコンピュータを使い慣れていない人にとっては扱いにくいものである。特に手先の不自由な高齢者や障害者にとっては、これらのインタフェースは非常に扱いにくいものである。そこで、筆者らは手先の不自由な高齢者や障害者にとって操作の簡単なインタフェースとして、口唇インタフェースを検討している。この口唇インタフェースは、市販されているUSBカメラより取得される顔画像から、画像処理によって求められる口唇形状を用いて、マウスにおけるポインティングやコマンド選択などの操作を実現するものである。本稿では、口唇インタフェースの実現に向けて行った、USBカメラより取得された顔画像からの口唇領域の抽出方法に関する実験とその結果について報告する。ここでは、カメラより取得された顔画像に、ノイズ除去、背景差分処理、RGBおよびHSVの色彩情報と輝度情報をもとに行った二値化処理、収縮・膨張処理などの画像処理を行うことで口唇領域の抽出を可能にした。実験結果では、口唇インタフェースでの利用を想定して、6種類の口唇形状に対する抽出実験をもとに、その有効性と問題点について考察する。
  • 佐久田 博司, 廣實 崇, 伊東 由佳, 二宮 理憙
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 29-32
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    アニメーションなどにより変化する図形と、印刷媒体などの静的図形の人間の脳波に及ぼす効果と差異を実験的に検討した。左脳右脳における脳波の振幅差や活性化する部位などを検討した。これは、図学の学習プロセスを教材によって改善することを目的としたMCT実験の一貫で実施されたもので、有意にMCT得点差や解答時間に現れた差異を、脳活動の反映する脳波によって検討するものである。
  • 知花 弘吉, 城光寺 文章
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 33-36
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    2次元図形についての図形認識を明らかにするために、9~12個の正方形で構成された2次元図形テストをK大学建築学科1年生 (209名) 、2年生 (141名) 、3年生 (164名) 、合計514名の学生に実施した。その結果は以下のとおりである。 (1) 解答率は概ね100%である。 (2) 正解率は、各学年とも約90%である。男女間に有意差は認められない。 (3) 平均得点は、各学年とも約22点である。男女間に有意差は認められない。 (4) 比較的難しい設問の誤答傾向については、正方形の個数の認識の誤りが主な要因である。 (5) 折れ曲がり回数が多くなると、反転図形への誤答傾向が見られる。以上の正解率、得点、誤答選択肢傾向の分析の結果から、正方形で構成した図形問題を用いて図形認識を計測した場合、学習に伴う図形認識の顕著な向上は認められない。
  • 澤田 吉苗
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 37-40
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    展開図は図形清報科学の授業の後半において、重要な課題として取り上げてきたが、前半の「点、直線、平面」の系統的な学習を後半の立体や展開図の課題解決に応用できない学生が多い。本報では、前半に簡単な展開図を課題として取り上げ、前半の学習内容の有用性を認識させ、学習意欲を高めることを目指した。毎週の演習・宿題、アンケート、期末試験等の分析によって、その効果と問題点を検討した。
    成績の上位群において、展開図作製の効果を認めている学生が下位群よりやや多いようである。成績の下位群では、成績の向上にはあまり結びつかなかったようである。
    成績上位の学生の中には、「後半は物足りなかった」という感想がある一方、成績下位の学生の中には、期末試験で白紙状態のものがあり、学生の能力に応じた学習指導の必要性を感じさせられる。
  • 大月 彩香, 大月 美佳
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 41-44
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    パーソナルコンピュータ (以下パソコンと略す) の普及と性能の向上そして安価になったことにより、社会におけるパソコンの重要性が高まり学校においても情報処理教育として小学校から大学にいたるまで授業に組み込まれるようになった。しかしながら、授業一般におけるパソコンの利用は普及せず停滞しており、授業における情報化は著しく遅れていると考えている。図学教育においても同様で三角定規とコンパスを使用しての紙の上での作図が主体の授業形態が続いている。3次元CGアプリケーションが十分な速度と精度で三角定規とコンパスを上回る機能を持って安価になってきていることから、従来の三角定規とコンパスに替えて使用することも容易になっている。図学の授業が空間や立体の認識能力を高めることがひとつの目標となっていることから、平面上での授業が好ましいとの意見もあるが、図学が現実的に設計製図の基礎として位置づけられつつあることから、近い将来と予想される3次元CADの普及を鑑みて3次元CGアプリケーションを使用したコンピュータによる仮想空間における図学教育の可能性を研究してきた。本研究では、3次元CGアプリケーションを使用した授業を行った結果、従来の図学の課題をコンピュータによる仮想空間で如何に学生が解いたかの例を示し、従来の図学と発想法が変わらない面と新たな発想が生まれることがわかった。その結果、図学の授業の一目的である空間認識能力の向上に十分なる役目を果たせると考えられる。
  • ―プレゼンテーション・ソフトによる提示―
    鈴木 賢次郎
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 45-50
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    図 (形科) 学は, しばしば“ものづくりの幾何学”と呼ばれているように, もともとは, “ものづくり”に密接に関連した実用の学として発展し, 現在に至っている.個々の“もの”に密着しすぎると一般性・汎用性が失われるため, “もの”から幾何学的立体へと抽象化が行われ, 現在の幾何学的立体の取り扱いを中心とした教科内容となっている.しかし, 抽象化された幾何学的立体の取り扱いのみを学習させて, そこから“ものづくり”との関連を実感させることは難しい.図 (形科) 学を, ものづくりと密接に関連した実用の学として学ばせるには, 学習内容が実際にどのようにものづくりに応用されているかを示すことが必要である.そのためには, 実物を提示することが有効と考えられる.本報では, このような観点から, 実物模型を実際の授業での使用した例について報告する.
  • 鈴木 賢次郎, 横山 ゆりか, 金子 知適, 加藤 道夫, 安達 裕之, 山口 泰, 高橋 成雄
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 51-56
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    東京大学教養学部においては, 平成13年度から, 前期課程教育のすべての科目において学生による授業評価アンケートを実施している. 本報では, 図形科学に対する学生の授業評価結果を他科目と比較するとともに, 教師ごとの違い, 授業難度等と総合評価の関係について分析した. また, 教養学部情報・図形科学部会では, 他部会に先立ち, 平成5年度より学生による授業評価アンケートを実施してきたが, 平成5年度からの経年変化についても分析した. 主要な分析結果は以下のとおりである. 1) 図形科学に対する学生の授業評価結果は, 他の理科系基礎科目 (物理, 化学, 生物) と同程度であり, 数学に比べてやや高い. 2) 図形科学は複数の教師により講義されているが, 学生による授業評価結果には教師間にかなりの差がある. 3) 「難渡」, 「説明のわかりやすさ」, 「興味の湧きやすさ」と「 (授業の) 総合評価」の間には強い相関がある (相関係数は, それぞれ, -0.55, 0.94, 0.93) .また, 「総合評価」と受験率の問には強い相関がある (相関係数~0.73) . 4) 学生による授業評価結果を教師個人に戻すだけでは授業改善に結びつきにくく, 部会会議等での議論することが必要である.
  • 牧 博司, 小島 亮二, 野口 昭治
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 57-59
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    2003年度より必修, 通年の機械製図IIの科目が二分され, 必修の機械製図II (後期) と選択の設計製図工学 (前期) に変革した.すなわち, 前期に選択科目を受講した学生と受講しなかった学生の間には約2倍の授業時間の差がある.この機会を捉えて, この時間差が学生の成績に影響するかあるいはしないかを調査した教育資料である.その結果, 両科目間の成績の相関係数は0.141で顕著な差は認められなかった.さらに, 教育評価のためには成績分布の提供が不可欠であり, 上記3種類の成績分布から平均値と標準偏差を求め, 相関係数と共に「教育」を議論したものである.
  • 平野 重雄, 中澤 洋二, 古市 聡
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 61-66
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    情報技術の急速な進展により, 現在, 多くの企業が設計業務に三次元CADを用いている. これは主に, 開発期間の短縮, 製品品質の向上, 試作回数の減少などを目的としている. しかし, 三次元CADを導入するだけでは, これらの成果をあげることはできない例えば三次元CADの利用の多くは従来の二次元CADの使用方法と基本的には同じで, 設計者の検討した結果に基づいて製品の形状モデリングを行っているだけに過ぎず, 従来の設計作業とほとんと変わっていない部分もある. また, 開発技術が個人の情報となってしまっており, 設計者の問のあるいは全社的情報の衆知を結集することまでには到っていないようである.
    一新時代の設計課題は, 高い品質を短期に達成する設計の短期化にある. 設計の三次元化で生成される三次元データの活用を広げるための新たな考え方, システムの進歩, プロセスの新構築などが設計改革のキーポイントになる1) .設計は, 最終的には何らかの人工物の創造を目的とする .本研究は, 従来の形状モデリングだけを行う設計ではなく, 三次元CADを有効に利用した三次元設計のプロセスの提案および検討を行い, 情報の共有化 (例えば設計のコラボレーション) を図るためにその設計作業をドキュメント化し明確にすることを目的とする. 課題としては, 江戸時代後期の「からくり」のひとつである茶運び人形の具現化とした. 現存する資料を基にして, 設計段階では三次元CADを用い, 視覚情報と製作1青報の諸問題を考察するとともに試作機の性能などについて述べる.
  • 奥村 和則, 伏見 清香, 入部 百合絵, 茂登山 清文
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 67-70
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    現在、デジタルデバイスを用いた鑑賞ガイドの実験が博物館を中心になされているが、システムの構築が先行してしまい、ユーザーサイドにたったデザインがなされていないものが多い。
    また、現代美術においては、作品が多様化し、単一のガイド方法では補えなくなりつつある。さらに、美術館が作品の展示以外に、教育やコミュニティ等の場として、社会に果たす役割が増加してきており、デジタルメディアの発達とその活用の一般的になってきたことを受け、美術館においてデジタルデバイスを用いた鑑賞ガイドを制作されることが望まれるようになってきた。
    本プロジェクトは、デザインの視点からユーザービリティを考え、美術館における新しい作品鑑賞ガイドのデザイン提案をするものである。ユーザー評価を得るために、名古屋市美術館常設展において、平成15年11月14~16日に実証実験を行い、実験参加者 (=鑑賞ガイド利用者) にデザインを中心とするアンケートを行う。そのデザインに対する評価と、エリア分けや色彩を検討したページデザインとボタンや文字のサイズを検討したエーレメントデザインが、ユーザービリティを考慮したデザインになっていたかをクロス集計によって導き出し、そこで抽出される評価の要因を今後のデザイン制作にフィードバックさせていく。
  • 茂登山 清文
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 71-74
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、ジエフ・ウォール (Jeff WALL、1946Vancouver-) の1979年の作品《ピクチャー・フォー・ウィメンPicture for Women》について、おもに眼差しと空間性という視点から、図的な解釈をこころみるものである。
    写真が美葯作品の主要なメディアとして登場するのは、1960年代のポップアートにおいてである。コンセプチュアル・アートの影響下で活動を始めたウォールは、70年代末に、それまでおこなわれることのなかったような仕方で写真を使用した。ライトボックスにチバクロムをはり、壁に絵画のように掛けるというものである。その代表作のひとつが、《ピクチャー・フォー・ウィメン》である。物理的な形式や、背後からイメージを照らし出す光は、現代社会との関係においてある意味をにない、見る者に多様な読み、解釈の可能性を提示する。ウォールは、この作品を制作するにあたって、エドゥアール・マネの絵画《フォリー・ベルジェールのバー》を参照している。それと同様に、《ピクチャー・フォー・ウィメン》も、鏡をもちいており、男女二人の人物によって構成されている。しかしその画面の中央には、テクノ画像の生成装置であるカメラが据えられ、それによって、制作者であるアーティストと、鑑賞者との眼差しが、作品のなかを行き来することになる。
  • ―初心者が認識するデッサンとは, その傾向調査および分析―
    佐藤 紀子, 西井 美甫, 渕上 季代絵
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 75-80
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    描画支援ツールは, デッサン初心渚および描くことが苦手な学生を支援するために作成するものである。従来, デッサン初心渚が, 見えるものを見えた通りに二次元上に表現できるようになるまでには, 訓練の時間と技術の取得が欠かせない。しかし, 本格的にデッサンを学ぶ場を持てない学生には, 学習ソフトとして機能するツールが必要だと考えられる。そこで, 初心渚がデッサンを学ぶ上で必要な指導項目の初期調査を行った。今回の研究では, 個々のデッサン力の現状把握とデッサンの描画傾向を調査目的とした。既にデッサンに必要な要素として渕上の調査報告 (1) から, 構図, かたち, 質感, 陰影に関する問題が検討すべき点として明らかにされている。そこで, 各要因に関してデッサンの特徴をあらいだした42項目について紙コップを対象としたデッサンを調査し, パターン分類の可能な分数量化III類によって解析した。その結果から初心者がデッサンを描いた場合に完成度に差がつきやすい描画要因, そして描画傾向について3グループを提示することができた。これらを統合し, 初心渚がデッサンを描くときに必要とする要素を描画ツールにどのようにいかせるのかその可能性を提案する。
  • ――バルダッサーレ・ペルッツィの舞台装置における作図法――
    奈尾 信英
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 81-86
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 16世紀以降イタリアを中心として多用された立体透視図法Prospettiva solida理論に関して, その草創期に用いられたと推定される作図法を分析したものである。分析対象とした図面は, サン・ピエトロ大聖堂の主任建築家であったバルダッサーレ・ペルッツィが, 1531年にプラウトゥス作の喜劇「バッキス姉妹」の舞台装置のために描いた平面図と立面図である。まず最初に, 平面図に関して, 図面の最下部に記載されている掌尺から実際の寸法を確定した。そして消点を設定し, さらに奥行方向の寸法の設定方法について検討し, ペルッツィが平面図を描く際に用いたであろう作図法を想定した。つぎに, この平面図と立面図の対応関係をもとに, ペルッツィの立体透視図法について検討した。ペルッツィは, 立体透視図法を用いて「バッキス姉妹」の舞台装置をデザインすることで, 実際の距離の約1/3の奥行寸法で, 舞台上に街路空間を実現させたことが判明した。このようなペルッツィの作図法は, それ以後の立体透視図法理論の展開に対して, 重要なひとつの試みであったといえよう。
  • ―『冨嶽三十六景』との比較―
    近藤 乃梨子, 面出 和子
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 87-92
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    アンリ・リヴィエールは, 日本の浮世絵に魅せられたジャポニスムの版画家である。彼の『エッフェル塔三十六景』は, 北斎の『冨嶽三十六景』に影響を受けて制作されたとされているが, 両シリーズの印象は異なる。本研究では, 両シリーズを空間表現について, 描いた地点と視高および画面上にあらわされた空間の連続性の観点から比較し, その印象の違いを明らかにする。比較によると, リヴィエールはエッフェル塔とその周辺の景色を, 実際の視点から見えたままに画面に描き出しているが、一方北斎は富士山が象徴的に画面内に収まるように大きさと形を調整し, 想像の俯瞰視点によって描いている。リヴィエールは西洋のアカデミックな空間表現方法のもとに描き, 北斎は和洋漢の技法を融合して描き出したと思われる。また, 建設当時非難されていたエッフェル塔と信仰の対象としての富士山の捉え方の違いも, 画面の表現に現われているようだ。その結果, 『エッフェル塔三十六景』に描かれている空間は, 現実の風景を再現しているが, 『冨嶽三十六景』に描かれている空間は, 現実とは異なる独自の景色を描いたものであって, 画面上の空間表現にはその影響を受けておらず, 一つのモティーフを追う連作という形式や, 部分的なモティーフの扱いにのみその影響を残しており, 両者の違いが明らかになった。
  • 小山 清男
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 93-98
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    密教はインドから中国へ, さらに日本へと伝わったが, それとは別に, ヒマラヤを越えてチベットへ流れ, それにつれて多くの曼荼羅が制作され現在にまで至っている。その図様は, 部分的に日本のものと通ずるものもあるが, かなり異質なものもあってきわめて多様である。立体化したものは, 多く宮殿形である。他方須弥山を中心とする宇宙図では, 空間を巧みに二次元化している。また透視図的な表現のものもあり, それを三次元化してみると, 地中に深く穿たれた中空の空間となり, 地上に高々と中実の立体として考えられたものとはきわめて対象的である。本稿はその1例を作図によって求めてみた。すなわち凹の曼荼羅である。
  • ―地理情報システムを利用した教育内容と学生の評価―
    鈴木 広隆
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 99-102
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    図学は図法幾何学に端を発し、投影法の理解とその作図技術の習得を目的としていたが、コンピュータ技術の発達によりコンピュータを用いた図形処理が導入され、また図形解析なども含めて図形科学と称されるようになった。しかし、コンピュータグラフィクスについては数多くの大学の図形科学教育のカリキュラムに既に取り入れられているものの、図形解析についてはほとんど取り入れられているケースが少ない。これは、伝統的な図法幾何学の教育内容を一部割愛してコンピュータグラフィクスを取り入れているケースが多いため、時間的に図形解析を導入する余裕がないことも十分考えられるが、一般的な図形を対象として角度や長さを求めてそれを解析する作業は非常に煩雑であり、費やした時間に見合った成果が得られないと考えられている側面も大きい。大阪市立大学の図形科学教育では、地理・空間解析に用いられている地理情報システムの利用により、短期間での図形解析技術の習得を試みている。本論文では、その教育内容と学生の評価結果について報告を行う。
  • 五十嵐 健夫, 永野 直, 秋元 大輔, 大久保 武司, 江口 勝美, 大久保 俊輝
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 103-106
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    これまでの3次元CGはプロ用のソフトウェアを用いて専門家が時間をかけて作成するものであり、学校での授業などの場でインタラクティブに作成することは困難であった。しかし、近年、手書きスケッチなどを用いて簡単に3次元モデルやアニメーションを作成するとのできる技術が開発されてきており、あらかじめ用意されたものを用いるだけでなくインタラクティブにCGを作成編集することで、より効果的にコミュニケーションを支援することが可能になってきている。本稿では、手書きスケッチより簡単に3次元モデルを作成したり変形させたりすることのできるシステムTeddyを用いて、高校での地理の授業における地形学習の支援を行ったので、その内容と結果について報告する。
  • 三谷 純, 鈴木 宏正
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 107-112
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    我々は、3次元コンピュータグラフィックス (3次元CG) の技術を用いることで、パーソナルコンピュータ (PC) 上でポップアップカードの設計を対話的に行えるソフトウェアの研究開発を行ってきた。このソフトウェアを用いることで、PCの画面に表示されるポップアップカードの立体図をマウスとキーボードのカーソルキーで編集し、その展開図をプリンタから出力することができる。この展開図を元にカッターなどを用いて紙工作することで、PCの画面で設計したポップアップカードを実際に手に触れて確認できるようになる。本稿では、このソフトウェアを初等教育における図工科目を対象とした新しい教材として活用することを提案する。中学校の技術・家庭の授業で試行的に利用してもらうために幾つかの機能拡張を行い、そして実際に授業で試行することによって教材としての評価を行った。
  • 近藤 邦雄
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 113-118
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    3次元形状モデリングの教育は、島田、長島、新津らによって報告されている。これらを使いこなすためには, 三面図の読み書き能力が重要である。市販のCG, CADシステムを利用して形状を生成する場合においても、三面図の描き方や見方を理解していなければいけない。このために第27回図学教育研究会で報告された「三面図を用いた立体復元」が三面図の描き方と読み方の教材に有用であると考えた。そこで、筆者らはこのシステムを用いて形状モデリング入門を目的として以下の2つの大学で試行教育を実践した。以下、本報告ではこの立体復元CADを利用して、三面図の描き方と立体モデリングの基礎の理解を目的にした教育について述べ、立体復元システムの概要、演習の目的と内容、学生の演習結果と評価について紹介する。
  • 濱 孝幸, 横澤 肇
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 119-122
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    近年、eラーニングが注目されている。eラーニングは、学習者がいつでもどこでも学習可能なことが主な特長である。筆者らはeラーニングでの協調学習の利点に重点を置き、図形教育のための双方向性の協調eラーニングシステムを構築した。協調学習は、学習者が他の学習者とお互いに教え合うことにより、自分自身の理解も深めることのできる学習方法である。他者との相互作用により学習が動機付けられることも特長の1つである。構築したシステムでは、3次元図形の描画や、移動・回転といった操作、任意の面での切断を行うことができる。また、本システムはサーバーと複数のクライアントから構成されている。各クライアント間で通信が可能であり、クライアントにおける図形描画や、その図形に対する操作の過程を他のクライアントに送信することができる。その結果、指導者や学習者の間でこれらの情報を共有することも可能である。さらに、学習者間のコミュニケーション手段として、お互いに会話することができる音声通信を導入した。これらの機能により、指導者や他の学習者に対する質問や説明の要点を適切に表現することができ、図形学習の効果を高めることができるものと考えている。
  • 長島 忍
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 123-126
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    図法幾何学 (図学) の講義では、3次元空間の点・直線・平面・立体などを2次元平面上に表し、図形のもつ性質や位置関係・交差などを作図により求めることが行われている。図学に慣れないうちは、2次元の情報から3次元を構築することが難しく、また空間における操作を2次元で表すことが難しいと言われている。これらの図法幾何学の難解さを減らすため、筆者は学生が図法幾何学を学習する際に、理解を助けるための補助教材を開発している。その一環として以前Windowsパソコンで利用できるアプリケーションソフトウェアやMacromedia Flashというオーサリングソフトを利用した図学教材を開発した。今回新たに開発したのはFlashによる主に多面体の3次元モデル生成・処理するソフトである。立体の例として、正多面体といくつかの準正多面体を生成した。マウス操作により自由に立体をリアルタイムで回転して表示させることができる。表示もワイヤーフレームや陰線消去、シェーディング表示などが可能である。立体の表や裏からの形状をいくつも観察することにより、立体形状に対する理解が深まると考えられる。またデータファイルの数値を書き換えることにより任意の多面体が生成でき、今後相貫体や他の立体への応用も考えられる。このソフトウェアは実際の授業では利用していないが、Web上で容易に閲覧できるため、予習・復習の教材としても利用できるのではないかと思う。
  • 森 優子
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 127-128
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    東京家政学院筑波女子大学短期大学部情報処理科では、情報処理教育の一環として、デザイン基礎という科目を開講している。同授業では、これまでに造形表現の基礎教育の場として情報処理科におけるデザイン教育のありかたを模索してきた。本稿では、デザイン基礎において平成14年から取り組んでいる、グループウェア「スタディーノート」を用いたデジタルポートフォリオ制作の実践事例について報告する。事例とした課題は「地図を描く」というものである。地図のように正確な情報の伝達を第一として視覚表現を行わなければならない内容の場合、デジタルポートフォリオを用いて、振り返り型の学習方法を取り入れることは有用であろうと考えた。さらに、デジタルポートフォリオを蓄積していくことで、作品の変化の確認作業が容易に実現し、自身の思考過程も確認できると考えた。デジタルポートフォリオを授業に取り入れ、受け取った意見を自身の作品へ即座に反映させる作業を繰り返し行うことで、学生一人一人の作品に取り組む意欲が向上する効果も得られることが確認できた。また、作品の評価を個人と教師間のみで完結させることなく、履修者が相互に評価するという授業の一例を示すことができた.
  • 高 三徳, 吉田 貞彦, 桜井 俊明, 五十嵐 三武郎
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 129-134
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    複雑な自由曲線・曲面の高品質化デザインのためには, 形状の滑らかさを定量的に正確に評価する手法が不可欠である.本論文では, 自由曲線・曲面の連続性の理論および実際の滑らかな形状の設計条件を述べ, 3次元CADソフトシステムに取り込まれている曲率分布とハイライトによる滑らかさの評価方法について考察を行った.また, 曲率分析法, 環境マッピング法, ゼブラマッピング法などの評価方法をマウスボディーモデリングへの応用を試みた.これらの方法は対話型設計にチェック機能として有効であるが, 設計のプロセスと連動させ, 評価と修正が自動的に行うことによって, 設計作業時間が大幅に短縮されることが期待される.
  • 田城 徽雄
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 135-140
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    射影特異点法はコンピュータ・グラフィツクスにおける隠れ線処理の新しい方法であり、著者の研究により導かれた。この方法は、射影幾何学における射影特異点の概念を導いたことによって可能になったものである。
    本論文において、射影特異点の概念と射影特異点法による隠れ線処理を用例を用いて展開する。まず、多面体について稜線と頂点の可視係数を定義し射影特異点の概念と射影特異点法による隠れ線処理を展開し、次いで、輪環体を取り扱い曲面立体の射影特異点を定義することによって射影特異点法による隠れ線処理を展開する。
    射影特異点法によって、隠れ線処理の対象となる線分は容易に特定される。更に、射影特異点法によって、三次元空間における曲面立体の隠れ線処理は、位相平面上の二次元空間におけるベクトル演算に還元される。こうして、任意の曲面立体のCG投象図は一般化された射影特異点法によって描くことが出来る。射影特異点法はコンピュータ図学における普遍的な方法であることが示されている。
  • 川崎 寧史
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 141-146
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本論は、大気遠近の視覚効果に対してできるだけ忠実な景観描写を行うことを目的に、大気遠近の計量化やこれに基づいた景観描写の精度について考察したものである。具体的には、まず空間周波数コントラスト感度 (空間CSF) を視覚測度として、距離に応じた大気遠近によるぼやけの計量化を行い、これに基づいた大気遠近と幾何遠近の識別距離について論じた。さらに空間CSFの周波数値をCGを利用した景観描写の変数として取り入れる方法について検討し、景観画像を作成する際の投影条件やこれに基づいた描写精度について考察を行っている。描写精度に関しては、スクリーンなどの表示性能と大気遠近による視覚性能を距離の関数として考え、これらを景観要素の識別幅やこれを投影した画像サイズ (pixel) に換算しながら、描写精度の決定について考察を行った。表示性能や視覚性能に対応した景観要素の識別幅は、3次元モデルの形状簡略化の判定指標として有効に利用できることを説明し、ケーススタディとして5段階の距離帯に応じた建築外観の簡略化モデルを提示した。また大気遠近の視覚性能に対応した景観要素の画像サイズは、空間CSF・スクリーンサイズ・視角を変数として算定できることを明らかにし、ケーススタディとして画像処理を利用した山並み景観の大気遠近描写を提示した。以上から、従来では困難な問題とされてきた大気遠近の景観描写について、理論的なアプローチから一つの考察を加えることができたと考えられる
  • 大西 道一
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 147-152
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    日没時太陽は上下にひしゃげた疑似楕円形になる。太陽からの光線は水平線に近づくほど上方に大きく曲がる。これを大気差というが、その数値はラドー、ベッセルなどにより研究されている。本論文ではラドーの大気差の実験式を使用して水平線近くの太陽の形状を作図する大気差曲線線図を開発し、この線図を使用して太陽が水平線に没するまでの形状の変化を追跡した。
    また日没時、大気の異常によりダルマ型、Ω型などの変形太陽が出現する。このときの大気差曲線がどうなっているかを、変形太陽から大気差曲線を逆に求める方法を開発した。これにより変形太陽の経時変化を追跡でき、よく出現する形状をシミュレートすることができた。
    古来北欧の伝説にもなっているグリーン・フラッシュの現象もこの大気差曲線線図で解明することができた。1992年、バード隊が南極観測基地リトル・アメリカでグリーン・フラッシュを35分間観測したという記録があるがこれを図学的に解明した。
    この研究のために日没時の連続写真を撮影した。狭い瀬戸内海で対岸の山脈に邪魔されなく太陽が完全に水平線に水没するという写真が得られた。常識で考えられないこの理由を天文航法で用いる視地平距離と視達距離の考え方を瀬戸内海周辺の地形図に適用して図学的に解明した。
  • 宮崎 興二
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 153-156
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    3次元空間におけるもっとも基礎的な立体としての3次元立方体を2次元平面上にさまざまに投影すると、与えられた立方体の稜の投影としての線模様を内部に持ったさまざまな多角形が得られ、そうした多角形を組み合わることによって千変万化の平面パターンが導かれる。同様に、4次元空間におけるもっとも基礎的な立体としての4次元立方体を3次元空間内にさまざまに投影すると、与えられた4次元立方体の側面の投影としての面模様を内部に持ったさまざまな多面体が得られ、そうした多面体を組み合わせることによって千変万化の立体パターンが導かれる。その立体パターンをさらに2次元平面上へ投影すると、さらに千変万化の平面パターンが得られることになる。5次元以上の高次元空間における場合も同様に、より低い次元の空間への投影を繰り返すことによって3次元空間内での立体パターンや2次元平面上での平面パターンが得られる。本稿では、この立体パターンや平面パターンを、高次元空間における高次元立方体の平行投影ならびに中心投影によってさまざまに導き、それらがそのまま自然界にもしばしば現れることを具体的に示す。その結果として、高次元空間において拡張される図学の重要性を示唆してみたい。
  • 森田 克己
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 157-162
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は拙稿「螺旋の分岐パターンについて」 (1) の続報である。前稿では空間曲線を対象とした分岐パターンについて考察したが、本稿では平面曲線を対象とした分岐パターンの生成をし、造形的に検討した。
    螺旋の分岐パターンを生成するための条件を1.螺旋の種類2.分岐区分3.分岐段階4.分岐数5.分岐角度6.旋回分岐角度7.旋回数8.旋回方向9.旋回の種類10.旋回方向による分岐区分11.主螺旋の分岐区分の通り設定した。螺旋の分岐パターンを生成するためのアルゴリズムは1.主螺旋の設定2.分岐点の設定3.分岐段階の設定4.分岐数の設定5.旋回数の設定である。
    以上の設定に基づき螺旋の分岐パターンのバリエーションを生成した。その結果、次のことが確認できた。1.求心型分岐の場合は、分岐段階の増加に伴い細部にその形状の特徴を認めることができる。2.遠心型分岐の場合は、分岐段階の増加に伴い中心の密度が高まる傾向がある。
  • 今間 俊博
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 163-166
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    アニメーション教育の中で最も重要なのは、物体が動いて見える原理を映像の中で再現するための動画感覚の育成である。しかし、日本の初等・中等美術教育におけるカリキュラムでは、静止した画像・造形物を中心としており、映画やアニメーションを構成している動画像教育は含まれていない。アニメーションを制作しているプロダクションの現場でも、新人のアニメーターを教育するにあたり、OJTや徒弟制度的な口承伝承手法がメインとなっており、一部を除いて、動画制作技術を系統だてて教育するには至っていない。また、制作にコンピュータを取り入れ、新しい制作手法を採用しているプロダクションにおいても、新たな試みは社内に留まっており、広く標準的な手法として広がりを持っているとは言いがたい。こういった映像制作環境に対して、CGアニメーションは制作作業をより分類整理しやすいという側面を持ち、より教育環境に向いていると考えられる。CGは、コンピュータ上のアプリケーションであるので、コンピュータが持つ論理性をうまく活用して、感性のみに頼らないアニメーション教育手法の構築を目指してきた。ここでは、尚美学園大学で行われてきたアニメーション教育を実例として、動画像に関する教育手法について考察する。
  • 本郷 健, 今間 俊博
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 167-170
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    平成15年度より、高等学校に教科「情報」が設置された。教科情報は、普通教科としての必修教科と専門高校における専門教科として教科の2つに分けられる。教職免許は両者を区別しておらず、教師には専門科目の内容が指導できる高度な専門的知識と実践的な技術・技能を習得した上での指導力を身につけることが求められている。本論では、教科情報の教員養成を意図した私立女子大学教育学部におけるCG教育の試みを紹介する。
    講義と演習 (CGアプリケーションを利用) を組み合わせたシラバスとその試行結果を紹介する。
  • 堤 江美子
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 171-176
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    3D-CGソフトウエアを導入した2003年度の「図形処理論及び演習」の内容と結果について報告する。従来の「図形処理論及び演習」の授業はプログラミングを基本にしていたが、プログラミング自体に多くの時間を要するために内容を制限せざるを得なかった。また、プログラミングの煩雑さから、質感の表現や十分なアニメーシヨンの実習ができなかった。しかし、今日のコンピュータ・グラフィックスによる表現の可能性、あるいは、豊富な機能を持つ3D-CGソフトウエアが安価に入手できることなどを考えると、授業で扱う内容は不十分であるといわざるを得なかった。そこで、2002年度からは学生でも比較的入手しやすい3D-CGソフトウエアを通年の授業の後半に導入して試行教育を行った。授業では前半で2次元図形処理を中心に基本的な図形操作や表現方法をプログラミングを介して理解させた後、後半で空間把握の訓練を視野に入れた3D-CGソフトウエア利用の演習を行った。ここでは試行授業の内容を説明し、3D-CGソフトを使用した学生が何に困難を感じ、何を学んだかについて、課題に対する学生の記述から概観した。
  • 深野 暁雄
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 177-180
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本稿の筆者は、デザイン系専門学校においてCGクリエータ育成を10年前から担当している。その受講者の殆どが数学物理に関して興味がなく苦手としていた。しかし、3DCGツールを学びながらそれらの苦手な分野を非常に楽しく短時間で学び習得していた。本稿は、その経験に基づき中学・高校でのこれらの科目を楽しく学ぶきっかけになるのではないかと考え、3DCGツールを用いる補助的なコンピュータ実習授業を提案するものである。昨今、「理数系離れ」、「理数系の学力低下」が激しいことが社会問題になりつつあるが、3DCGツールの使用は学ぶためのモチベーションアップになると期待できると考える。また、高校での数学の授業時間の減少や文系だけでなく理工系入試での数学を廃止の傾向が増えたため、大学における専門教育での数学知識の不足も問題とされている。3DCGツールを使用した授業は、それを補うべく大学教育にも対応できる可能性もある。本稿では3DCGを用いた幾つかの課題例を提案する。
  • 石松 丈佳
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 181-184
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本論では, 立体図形描写当の実技経験の少ない学生に対して, 短期大学の限られたカリキュラムの中で, いかに豊かな立体造形的発想, 造形表現能力を養う教育を行うことができるかという課題に対して, 支援ツールとして3DCADを用いた試みを紹介するものである.
    筆者の勤務した岐阜市立女子短期大学生活デザイン学科は, アパレルデザイン専攻, インテリアデザイン専攻の2専攻制であるが, 教育課程における専門分野はこれらに加えて基礎造形分野がある.両専攻の学生は, 基礎造形分野の教育を通してそれぞれの専攻分野において発想を広げていくことのできる発展性, 汎用性, 多様性, をもちうるかが鍵となる.そのために基礎造形分野における教育では, アパレルデザイン, インテリアデザインに関わる専門教育以上に限られた時間で, それらの領域の充分な基礎となる教育が求められるため, 効率や密度が求められる.そこで, 特に立体描画において有効と考えられる内容について3DCADを用いる試みを提案し, 今後の効率的な授業進行を図るものである.
  • 及川 和広, 村上 存
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 185-188
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    3次元CADで実物に近い設計を行う場合, 大学の機械設計教育は企業の実務教育と異なり人的・時間的制約が大きく, 学生が習得できるCADの操作・機能も限られる.しかし, 3次元CADの理解度や理解度における個人差が, 機械設計における学生の思考を制約ずることは, 設計能力の教育という観点からは望ましくない.そこで, 学生の3次元CADに対する理解度をテスト等によらず, 保存されたCADデータファイルの作成時間と最終更新時間のタイプスタンプから計算した操作時間から推測する方法を提案し, 3年生の演習において実際に調査を行い, その有効性を検証した.137名中74名から, 規定例題9課題について有効な作業時間を収集した.規定例題の操作時間と課題で学生が自主的に作成した3次元CADのパーツファイル数との関係から, 規定例題の操作時間の合計が短いほど, 課題として要求されたパーツ数を超えて自主的にパーツを作成する傾向が有意に認められたが, 操作時間と機械設計の成績との関係については統計的に有意な結果は得られなかった.
  • 佐久田 博司, 武士俣 貞助, 香取 英男, 小西 奎二
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 189-190
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    3次元CADを利用して機械製図において共同作業を行うプロジェクト型の課題を行っている。3次元CADを利用する上での利点および実施結果を説明する。
  • ―筑波技術短期大学機械工学科における取り組み―
    荒木 勉, 米山 文雄
    2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 191-192
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本学機械工学科の聴覚に障害を持つ学生達の卒業後の進路にはCADや設計・製図に関わる職場が多いことより、図学・機械設計製図・CAD教育には必然的に力を入れている。機械設計製図・CAD教育に関係する必修科目として1年次に「CAD演習」を履修させている。これは専門科目学習前のCAD教育となるので、指導法を考慮し「はがきで作る紙飛行機」をテーマに教材を工夫し学生達に興味を持たせ、向学心を喚起し、自ら学ぶ姿勢がとれるような形へと方向付けをしている。実施に関しては学内のネットワークの活用によるWeb授業支援ソフトの利用を新たに始め、効果的にCAD教育が行なえるよう教育環境を整えた。そしてCAD演習における学生達のCAD学習の熱意と、取り組みの様子及びその成果等を報告する。
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