日本医療・病院管理学会誌
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49 巻, 4 号
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巻頭言
研究論文
  • ——診療報酬請求データを活用した解析——
    松永 京子, 猪飼 宏, 國澤 進, 大坪 徹也, 今中 雄一
    2012 年 49 巻 4 号 p. 195-203
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/30
    ジャーナル フリー
    多施設の診療報酬請求データを活用し,病院間の薬剤管理指導業務の実施状況差に関連する要因を特定することを目的とした。全国の94病院を対象とし,DPCデータと質問票調査結果を用いた。薬剤管理指導料の算定状況に基づき薬剤管理指導業務の実施状況を指標化し,患者あたり,薬剤師あたりにそれぞれ換算して目的変数とした。無菌製剤処理や特定薬剤治療管理料などのその他業務,経験年数,ITシステム導入状況,稼働病床数などを説明変数とし,重回帰分析を行った。薬剤管理指導業務の実施状況には,病院間で大きなばらつきがみられ,薬剤師あたりの入院患者数,外来調剤件数,入院に関するその他業務などが関連していることが分かった。これらの因子は,薬剤師の資源配分や業務設計を考える上で有用であると考えられるが,重回帰分析の決定係数は0.25程度であり,薬剤部門のパフォーマンスのばらつきも示唆された。
研究資料
  • 江上 廣一, 廣瀬 昌博, 津田 佳彦, 大濱 京子, 本田 順一, 島 弘志, 中林 愛恵, 福田 治久, 今中 雄一, 小林 祥泰
    2012 年 49 巻 4 号 p. 205-215
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/30
    ジャーナル フリー
    2007∼09年度に収集された転倒・転落のインシデントレポート1,764件を対象に,転倒率(件/1,000患者・日)を用いて転倒・転落に関する疫学的側面を検討した。患者の平均年齢は男66.6±18.8歳(950件),女69.9±19.2歳(814件)であった。全体の転倒率は1.84件/1,000患者・日,性別では男2.06および女1.87であった。年齢別では,70歳代が2.82件/1,000患者・日(555件)でもっとも高く,高齢者ほど高い傾向にあった。診療科別において,外科系では整形外科が最低で1.14件/1,000患者・日,内科系では循環器内科および呼吸器内科が最低で1.97を示し,外科系より内科系診療科が高い傾向にあった。また,入院から転倒発生までの日数における転倒率(転倒件数)について,入院翌日が0.16件/1,000患者・日(118件)でもっとも高く,ついで入院3日目が0.12(84件),入院当日が0.11(78件)で以降漸減していた。転倒発生の平均値は12.4日であった。
     転倒率からみた転倒の疫学的側面から,入院診療科や入院からの日数に応じた防止策を講じることが必要である。
  • ——置賜総合病院を核とした自治体病院再編を対象にして——
    伊藤 嘉高, 村上 正泰, 佐藤 慎哉, 新澤 陽英, 嘉山 孝正
    2012 年 49 巻 4 号 p. 217-226
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/30
    ジャーナル フリー
    山形県置賜地域における公立置賜総合病院を核とした病院再編は,今日の自治体病院再編の先鞭をつけた成功事例として知られる。本研究では,これまでなされてこなかった医療需要サイドからの評価を統計学的に明らかにし,病院集約化の事後検証を行った。
     その結果,若干のアクセスを犠牲にした置賜総合病院への集約化による医療提供は,住民側からも評価されていることが明らかとなった。しかも,アクセスについても再編によって大きな支障は生じていない。さらに,置賜総合病院における高度な専門医療の充実を求めながらも,それ以上に長期療養のための施設の整備を求める声が強い。急性期病院のみでは対応できない慢性疾患に対する不安も高く,置賜総合病院とサテライト病院の機能分化についても住民のニーズにマッチしている。
     これらの結果により,医療需要側である地域住民からみても,置賜総合病院を核とした再編が概ね評価されていることが確認された。
  • 桑原 雄樹, 永田 智子, 田口 敦子, 成瀬 昂, 八巻 心太郎, 田上 豊, 村嶋 幸代
    2012 年 49 巻 4 号 p. 227-237
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/30
    ジャーナル フリー
    本研究では訪問看護ステーションで発生する業務のうち,直接業務,および間接業務の割合が多い利用者像を特定すること,およびその業務の内訳を記述することを目的とした。19か所の訪問看護ステーションごとに利用者を5人ずつ選定,合計95人を調査対象者とした。平成19年11月1日から31日までの間に,調査対象者に関して行われた全ての業務について,実施者・内容・費やした時間を尋ねた。
     認知症・精神障害が主疾患ではなく,かつ特別管理加算または重症者管理加算を算定している者は,直接業務割合が多く,訪問滞在時間および準備・後片付け・物品搬送の時間が長かった。また,主疾患が認知症または精神障害の利用者は間接業務の割合が多く,特に利用者・家族との電話連絡に時間を費やしていた。訪問看護業務の効率化のためには,前者は,看護補助者の活用や物品搬送の効率化による業務時間の短縮が必要であり,後者に対しては,利用者本人・家族との連絡がコールセンターで対応可能か否か検討が必要だと考えられた。
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