日本医療・病院管理学会誌
Online ISSN : 2185-422X
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58 巻, 3 号
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巻頭言
研究論文
  • 石﨑 潤, 吉岡 正昭, 西村 治彦
    2021 年 58 巻 3 号 p. 60-70
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2021/09/29
    ジャーナル フリー

    社会の高齢化に対応するため,厚生労働省は地域包括ケアシステムや地域医療構想を推進している。これらの充実には,かかりつけ医と急性期病院をはじめとする地域施設との間での情報共有が重要であり,その共有対象の1つが診療情報提供書(様式11)の情報である。本研究では,患者紹介時以降の二次利用に資する診療情報提供の標準化に向けて,まず,診療情報提供書1,000件の実際の記載状況を分析し,現行の様式11への準拠性について調べた。その結果,指定項目の内容がそれぞれの所定欄に記載されていない事例が過半に及んでいることが判った。次に,この点を克服するため,紹介目的と診療経過の内容構成をカテゴリ化し,様式11に対する情報スキームとしての構造化を行った。これにより,入力データを自動的に分類(ラベル付け)し,二次利用のための集約的な情報蓄積を担う診療情報提供システムの構築が可能となった。

研究資料
  • 秋山 直美, 魚住 龍史, 秋山 智弥, 林田 賢史, 肥田 圭介
    2021 年 58 巻 3 号 p. 71-81
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2021/09/29
    ジャーナル フリー

    薬剤・ドレーン・チューブ・転倒転落に関するエラーは,発生頻度の高い三種のインシデントである。本研究の目的は三種のインシデント間の関連要因の相違を明らかにすることである。本研究は調査対象施設である一医療機関において収集されたインシデント報告を二次利用した後ろ向き観察研究である。2012~2018年度の全インシデント報告36,364件のうち,三種のインシデント且つ全ての変数に入力があった16,383件(45.1%)を対象として,インシデントの発生数を目的変数とする多変量ポアソン回帰分析を行った。薬剤は7,877件,ドレーン5,716件,転倒2,790件だった。三種のインシデント発生に組織要因のうち発生場所・時間帯,医療者要因のうち報告者の臨床・部署経験区分・関係者職種,患者要因のうち性別・年齢区分・特性において特徴的な傾向が認められた。反対に,組織要因のうちマニュアル記載と発生時期,患者要因のうち特性の聴覚障害に関しては,共通した傾向が確認された。

報告
  • 千田 明日香
    2021 年 58 巻 3 号 p. 82-92
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2021/09/29
    ジャーナル フリー

    全室有料個室の複数診療科病棟(以下,個室病棟)勤務の看護師特有の困難と対処を病棟の環境要因の視点から明らかにするために,個室病棟に1年以上勤務する看護師11名に半構造化インタビューを行い,困難と対処の語りを物理的・人的・文化的環境の枠組みで分類し,コード化,カテゴリー化を行った。

    結果,個室病棟の看護師特有の困難は【全室個室病棟特有の病棟構造の中で効率的に質の高い看護を実践する難しさ】などがあり,【効率的に質の高い看護を実践するための準備・調整】などの対処を行っていた。1フロアに設置され移動時間が長い病棟の構造,患者の異変が把握しづらい扉で閉ざされた個室,有料個室を選択する患者,複数診療科に対応する体制などの環境要因は看護実践を困難にしていた。そして,看護師は個室病棟特有の構造や患者の期待に配慮し,各診療科の看護師と同じ知識・技術を持ち,効率的に質の高い看護を実践できるように困難に対処していた。

編集後記
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