Djawa島のIndonesia原住民,満20才以上の成人男子12,825人,女子1,682人並びに当時(1944-1945)Djwa島内に在留せるアジア諸民族を対象として,体質人類学的生体計測の結果である. 1)従来,Djwa島の原住民は,その言語,風俗並びに文化史上からDjawa人,Soenda人,Madoera人,Bataviya人,他にTengger人,Badoej人等の諸種族に区別されてきて,当時も容易に混淆されることなく,それぞれ生活の圏域を保守しているぽかりでなく,自他共に,それが人種上からも差異がある如く認知されているのであるが,われわれの調査研究の結果,その主要種族であるDjawa人,Soenda人,Madoera人,Bataviya人は同一系統のDeutro-Marayanに属するものであり,彼等の間の体質上の差異は,地理的環境や生活条件に影響されることが主因であることが明らかにされた. 2)これに対し,Tegger入やBadoej人は上記主要種族と明確に系統を異にした中頭短身のProto-Marayan種族であることが明らかにされた. 3)身長は知識層並びに義勇軍は適当な発育を遂げて比較的長身長を現わしているが,山地住民や下層生活階層は慢性的栄養不良と偏向した生活条件により充分に伸長されない体形にあり,その平均身長は男に於いて158cm内外の低身型を示している. 4)幅径,胸囲,体重共に,山田住民や義勇軍は平地農民や都市住民にまさり,後者は発育不全の様相を呈している. 5)頭径,(頭長,頭巾,頭長巾示数):Djawa人,Soenda人,Madoera人,Bataviya人等,主要種族は略類似しており,その平均値は男において,(頭長178mm,頭巾150m.m,内外)にてアジア民族の中でも最も短い. 従つてその長幅示数は85内外の短頭型を示し蒙古人,韓国人と共に最も短頭系に属する. これに反し,Tengger人やBadoej人は一致してその示数80の中頭型にあり,これにより,前者の主要族と後者の山中割拠族とは明確に上記の系統的差異を現わしている. 6)頭囲,指極においても以上の種別により可成の差異を示している. 7)学生の長身長:日本を始め他のアジア諸民族の例に見る如く,ここでも学生の身長は一段と高く,就中,脚がよく伸びている. 8)外来諸民族との体格比較:アジア諸民族中,韓国人は比較的均整に発達し,印欧混血人これに次ぎ,華僑,印度人,Arab人はIndonesia人と共に幅育において梢低位にある. 日本人は軈幹部が長く四肢が短い,特に下肢の短いことが目立つ. 資料は男子のを基にした研究であるが,女子の資料も参考のために若干加えておいた.
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