男は女よりも多く生れる.にもかかわらず男は女よりも多く死ぬ.このような死亡の性差の原因は男女間の生理的・解剖的な差異によるよりも,むしろ環境諸要因による後天的影響によるところが大きいとされている. 著者らは,このような点を明らかにすべく1975年における我が国の主要死因別死亡率を用い,特に郡部と市部の死亡率および死亡性比について比較し,考察した. 分析の結果,死亡率については郡部と市部の間に格別顕著な差はみられなかった.明らかに解剖的・生理的な差異があるものを除くと,男が女に比べ郡部,市部ともに著しく高い死亡率を示すのは,結核,食道癌,肝臓癌,呼吸器系癌,胃潰瘍,肝硬変,交通事故などであった. このような結果から,死亡性差の原因は都市化と関連する環境諸要因というよりも,むしろ喫煙や飲酒習慣,医療行動など個人に帰属する諸要因によるところが少なくないことが示唆された.
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