沖縄居住年数が平均1.7年の本土出身者(M)とMとは同年代で平均年齢22.7歳の沖縄出身者(O)を対象に,那覇市の冬期と夏期に全身寒冷暴露(CE),全身暑熱暴露(HE)および局所寒冷負荷(HR)を施行し,従来の統計処理による検討のうえに更に多変量解析を加え,以下の結果を得た. 1.集計結果よりMとOの両者に有意差がみられたのは次のとおりである.1)HEにおける冬期実験の局所発汗量,汗中Na濃度,体重減少量および体温上昇度でMが有意に高値を示し,また夏期実験の体温上昇度でMが有意に高値を示した.2)HRにおける冬期実験のT.B.1.,T.F.R.,M.S.T.,R.1.でMが有意に高値を示し,またT.T.R.でOが有意に高値を示した. 2.3種の負荷テストを個々に多変量解析した場合,および3種の負荷テストを総合して多変量解析した場合に共通して高い類似性を示す変量の組み合わせには,局所発汗量と体重減少量,M.S.T.とA.T.,および乳頭部皮膚温低下度と全身平均皮膚温低下度があり,これらの組み合わされた測定項目は何れか一つの項目で十分説明しうることが示唆された. 3.3種の負荷テストを総合した場合に,異なる3通りの変量の組み合わせを用いた被験者のクラスター分析から,1)中村氏法R.1.はHRの各成分値にかわって局所耐寒性を代表しうる指標である.2)MとOの体格の差(体重とLBMに有意差あり)は被験者のdendrogramに影響しない.の2点が明らかになった. 4.各負荷テスト毎に多変量解析した場合の被験者分類からは,CE, HRでは出身者別分類よりも実験時期分類が優先したが,HEのクラスター分析では実験時期別分類もほぼ明確であったが出身者別分類のCEのクラスター分析に比べより明確であった.次に,冬期被験者と夏期被験者に分けて各hを出身者別分類した場合は,CEの主成分分析における冬の散布図ではMとOの分類が明確であった.また,HEのクラスター分析における冬と夏のdendrogramでは小クラスターが形成され,更に主成分分析における冬期実験の散布図では出身者別分類が明らかであり,夏期実験の散布図でも冬期ほどではないが同様の傾向が認められた. 5.3種の負荷テストを総合した場合の被験者分類(79例)では,何れの解析法でも出身者別分類よりも実験時期別分類が優先した.しかしながら,79例を冬期被験者と夏期被験者に分けて分析した場合の主成分分析では,夏期よりも冬期の方で出身者別分類が明確であり,冬期被験者の第1主成分軸(暑熱反応能力を表す主成分)の正の方向に本土出身者そして負の方向に沖縄出身者が位置する傾向が認められた. 6.以上の成績から,沖縄居住年数が比較的短いMとほぼ同年令のOのCE, HEおよびHRにおけるMとOの差異は,HEで最も著しく,更に夏期より冬期において両者の違いが明らかであった.
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