本研究では,血清総コレステロール(TC),HDL-コレステロール(HDL-C)値,動脈硬化指数(ADおよび「頭が重い」,「手足がしびれる」,「めまい・ふらつき」の愁訴に影響する要因について解析し,それらの愁訴とAIとの関連について検討した.対象者は,1988年における熊本県T町の一般住民健康診査における年齢40~79歳の成人1.283名(男512名,女771名)である. 結果は,以下のごとくである. 1)「頭が重い」,「めまい・ふらつき」の愁訴者率は,男より女に有意に高かった.「手足がしびれる」の愁訴者率は男女共に,加齢に従って顕著に増加していた. 2)女のAIは,TCやHDL-C値の変化を反映し,加齢に従って増加する傾向を示した. 3)TC値およびAIは,両性において肥満者に有意に低かった.一方,HDLC値は,両性において肥満者に有意に低かった.男のHDL-C値は,飲酒者に有意に高かった. 4)AIが高値になるほど,女の「頭が重い」,「手足がしびれる」の愁訴者率は高くなる傾向を示した. 5)女の「頭が重い」,「手足がしびれる」の有愁訴者群のAIは,無愁訴者群より有意に高かった. 以上のことから,女の「頭が重い」,「手足がしびれる」の愁訴の背景に動脈硬化が存在する可能性が示唆された.
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