日本におる健康増進対策は3つの要因一栄養,運動,休息一の上になりたっている.このような政策は,WHOの憲章が社会的・精神的要因の重要性を指摘しているにもかかわらず,すべて形而下的問題として設定されている.われわれは,将来における公的な健康対策がどうあるべきかを追求すべく,人々が健康管理に対してもつ潜在的意識を抽出することを計画した.「あなたは,ご自身の健康管理に対し,思い出すままご自身の表現で対策項目を挙げて下さい」という簡単なアンケート用紙を作成し,1995年,それを近くの一般成人女性100人に配り,73人から回答を得た.各人一人当たり平均3.7項目の対策が挙げていた,すなわち全項目数は273あった.これら全項目の中には,お互い類似するものがあった.それらを除き,類似のない項目,すなわち重複のない項目のみを数えると,46あった.これらの中で前述の3要因に関する項目が全体の74%占めていた.このことは,これら3要因が既に日本のあらゆる人々に定着していることを示唆しているものである.さらに46項目をその類似性によって分類すると,栄養,運動,休息,社会的・精神的作用,衛生的作用,生活のリズム,生理的要求および健康教育という8つの要因が得られた.社会的・精神的作用は,前記の3つの要因についで,14%という高い頻度で挙げられた.以上の結果は健康対策を立て,それを実施する上において,3要因の以外の要因,特に社会的・精神的対策をも考慮する必要があろう.この事実は,日本においてこれらの対策がより公的に配慮されるべきものであることを示唆しているであろう.
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