本研究では,高校生における抑うつ症状とストレッサーおよびソーシャルサポートとの関連性を検討するために,沖縄県全域の高校生3254名を対象とした質問紙調査を行った.抑うつ症状はZungの自己評価式抑うっ尺度(SDS)を用い,ストレッサーは日常苛立ち事から,ソーシャルサポートは学生用(中学生版)ソーシャルサポート尺度(SESS)から評定した. 各尺度得点の代表値の性差を検討したところ,抑うつ症状,母親サポート,兄弟サポート,友達サポートにおいて女子の得点が男子より有意に高かったが,父親サポートと先生サポートにおいては男子の得点が女子より有意に高かった.日常苛立ち事には有意な性差がみられなかった.抑うつ症状に対する日常苛立ち事と各サポート源の共文散分析の結果,男女ともに日常苛立ち事および各サポート源に有意な主効果がみられたが,交互作用はみられなかった.したがって,抑うつ症状に対してソーシャルサポートは直接効果をもち,ストレッサーに関係なく抑うつを軽減する傾向にあったといえる.他のサポート源の効果を調整した結果,男子では父親サポート,友達サポートに,女子では父親サポート,母親サポート,兄弟サポート,友達サポートに,有意な効果がみられ,サポート有り群が抑うつを軽減する効果を示した. 以上のように,高校生の抑うつ症状には日常苛立ち事,ソーシャルサポートが独立して関連しており,ソーシャルサポートの中では,男女ともに父親サポートと,友達サポートを,女子については母親や兄弟などの家族サポートを含めて高めることが,抑うつを直接軽減させるために有効であることが示唆された.結論として,本研究ではソーシャルサポートの直接効果仮説が支持された。
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