本研究は,ウルトラマラソンをはじめた動機及びユングの理論に基づいて作成された日本語版MBTIを用いてランナーの心理的特質を調べることを目的として,52名のウルトラマラソンランナー(平均年齢45.7歳男性76.9%)を対象にアンケート調査を行った.その結果,ウルトラマラソンをはじめたきっかけは,通常のフルマラソンより長距離を走りたい(38.5%),友人・知人の影響(23 .1%)であった.ウルトラマラソンの継続理由は,到達的,社会的,心理的要因に大別された.ウルトラマラソンは対象者に,達成感を得られる(心理的理由,73.1%),挑戦(到達的理由,46.2%),自分の可能性を広げる(到達的理由,32.7%),他ランナーとの交流・人との出会い(社会的理由,26.9%)などをもたらしていた.MBTIの結果,INFJとISFJの2タイプが日本人の一般人口よりウルトラマラソンランナーに多く見られる心理的特質であることが明らかになった.INFJ/ISFJタイプとそれ以外のタイプ間で,マラソン歴に有意な違いは見られなかったことから,この心理的特質はウルトラマラソンをはじめたことから得られたものではないことが示唆された.本研究から,日本人ウルトラマラソンランナーの特質として,自分の内面により関心を向け,感情を考慮に入れて結論を導くことを好み,計画や秩序に基づいて行動する傾向があることが示された.
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