一般成人男女において,夫婦間・恋人間といった親密な関係にある男性からの女性への暴力発生の分布とその関連要因を検討し,社会的対応への示唆を得ることを目的として,18~74歳の群馬県在住の888名(男性397名,女性491名)を対象に,調査・分析を行った. 分析の結果以下の点が明らかとなった.1.最近1年間に女性が暴力的行為を受けた経験は30.1%であった.行為の種類別にみると,精神的暴力行為29.6%,身体的暴力行為5.4%,性的暴力行為6.2%であった.男性においても,暴力を振るった経験はほぼ同じ結果を示した.2.暴力の重複パターンを検討した結果,男女とも多くの場合で身体的あるいは性的暴力行為には精神的暴力行為が伴うことが示された.3.女性への暴力の関連要因として,男性の暴力容認度,つまり暴力を容認している男性ほど暴力を振るいやすいという傾向が認められた.また,男女とも生育家族評価が低い人ほど暴力的行為を経験している傾向が認められた.4.暴力的行為を受けた女性のうち,半数は誰か(どこか)に相談していた.しかし相談先としては,近親者,友人・職場関係者といったインフォーマルな関係にある人がほとんどであり,公的機関へ相談をしたという人はわずかであった.相談機関やシェルター等,ソーシャルサポートの充実がなされる一方で,その利用を促すためにも,個々人への情報の発信と一般住民の女性に対する暴力を許さない社会の意識醸成のための理解が不可欠であることの可能性が示唆された.
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