2010年7月に、オーストリア・ウィーンで第18回国際エイズ会議(XVIII International AIDS Conference)が開催された。学会のテーマは「Rights Here, Right Now(今ここでこそ人権を)」であった。本稿では、とりわけHIV/AIDSをあぐるスティグマと差別の問題に焦点をしぼった発表のいくつかを紹介する。現在世界では、HIV/AIDSをめぐるスティグマや差別は、公衆衛生施策にとっての最重要課題であると位置づけられている。なぜならスティグマや差別こそが、予防や治療促進を阻害すると考えられているからである。この見方は当然、HIV/AIDSの問題化の当初から議論されてきたが、現在においても未だ十分な解決策が提示されてはいない。日本でも、スティグマや差別の軽減のための具体的な施策が、今後さらに展開されていく必要がある。
抄録全体を表示