日本では1999年以降、行政の主導の下に全国的な医療安全への取り組みが進められてきた。その過程で誕生することになったのが医療安全管理者であるが、それを主に担っているのが看護師である。本稿は、看護師の医療安全管理者の業務に対する動機づけ要因を質問票を用いて明らかにした。調査対象は日本医療機能評価機構から医療安全の認定を受けている全国の2,317の病院とした。そのうちの930病院(40.1%)から回答を得ることができた。回答者の中で看護職の占める割合は、約7割であった。統計分析のデータとして、この看護師の安全管理者からの回答を用いた。フレドリック・ハーズバーグ(F. Herzberg)によれば職務満足に影響を与える要因には、動機づけ要因と衛生要因とがあるが、本稿は前者を研究対象とした。動機づけ要因の内容として、患者・家族からの安全管理者への評価(患者評価)、組織の医療安全に対する姿勢(組織姿勢)、他職員からの安全管理者への評価(他職員評価)、職務成果の組織内での活用度(データ活用度)を設定した。その上で、職務満足に関する回答で「どちらでもない」(176名:29.3%)を除いたデータを満足群(178名:29.6%)と不満群(247名:41.1%)とに分けてロジスティック回帰分析を行った。結論として動機づけ要因のうち、他職員からの安全管理者への評価、組織の医療安全に対する姿勢、職務成果の組織内での活用度の順で職務満足に影響を与えていることが明らかとなった。
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