保健医療社会学論集
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24 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 第39 回大会(2013年度)東洋大学
大会長講演
教育講演
  • 佐藤 久夫
    2014 年 24 巻 2 号 p. 5-12
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    症状や機能障碍に関する医師の診断をもとに障碍者の認定と障碍程度の認定がなされ、それを用いて障碍者福祉サービスの支給決定がなされてきたが、リハビリテーションや環境改善などの取り組みの結果、機能障碍と参加障碍の相関が弱まってきた。そこで近年障害程度区分制度の開発などによって対応をはかってきたが、基本的には医学モデルの枠内での対応であり、障碍者の法的な範囲の面でも支援ニーズの評価の面でも問題がますます顕在化しつつある。さらに障害者権利条約は医学モデルからの脱却を促している。専門的でかつ障碍当事者の意見表明を組み込んだ個別ニーズ評価のシステムへの移行が求められている。
シンポジウム「「障害」と「支援」を考える」
  • 八巻 知香子
    2014 年 24 巻 2 号 p. 13-18
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    医療・医学・社会福祉の分野において、サービス提供者側のパターナリスティックな体制への批判がなされるようになって久しい。障害者運動や障害学では、障害の社会モデルをとり、障害者自身が生活の所有者でありすべての決定権をもつという前提が強く押し出されてきた。この社会モデルは徐々に市民権を得て、現在はそれが通常のこととみなされるものではあるが、後者のモデルをとった場合にも軋轢が生じ、また障害当事者も必ずしも一方的な指示関係が好ましいとは感じていないことが調査結果から明らかになっている。本稿では要援護者のプロジェクトを例として、障害当事者と支援者が対峙する関係ではなく、共通の目標に向かって協働するカウンターパートとしての関係を築くことの可能性について検討した。このカウンターパートとしての関係が当事者性、支援者の専門性を互いに尊重し、互いに好ましい相手であるために必要なことではないかと考えられた。
  • 川内 美彦
    2014 年 24 巻 2 号 p. 19-22
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    障害のある人の社会運動は、自立の獲得の歴史だとも言える。米国ではエド・ロバーツを中心とした自立生活運動が起こり、やがて“Nothing about Us without Us”の掛け声につながっていく。当事者を主体としたまちづくりにおいてどのような実践が行われているのかを示し、ケアの分野での専門性における、当事者との関係性を構築する技量について考察した。
  • 大島 巌
    2014 年 24 巻 2 号 p. 23-26
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    本稿では、障碍当事者のニーズに根ざした当事者中心の支援を実現する方法として、科学的根拠に基づく実践(EBP)など効果的プログラムモデルと、その効果モデル構築の意義を示し効果モデル構築に向けた利用者・実践家参画型プログラム評価アプローチ法の意義と有用性、その具体的方法論を提示した。そのうえで利用者・実践家参画型アプローチ法の今後の発展可能性について考察した。
原著
  • 小坂 有資
    2014 年 24 巻 2 号 p. 27-37
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、ハンセン病者やハンセン病療養所の記憶や記録の継承可能性について考察するためのひとつの視座を示すことである。具体的には、瀬戸内国際芸術祭2010の舞台のひとつである国立療養所大島青松園における他者(よそ者)の活動を考察し、その活動がハンセン病者にどのような社会関係の変化をもたらしたのかということに焦点をあてた。その考察の結果、瀬戸内国際芸術祭2010での他者の活動により、(1)大島青松園内の関係性の変化がもたらされるとともに、(2)大島青松園の内と外とをつなげる新たな契機が形成されつつあることを示した。加えて、(3)他者がハンセン病者やハンセン病療養所の記憶や記録の継承に関わる可能性を明らかにした。
  • 福本 良之
    2014 年 24 巻 2 号 p. 38-47
    発行日: 2014/01/31
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    医療訴訟は、患者側が提訴しなければ開始されない。そこで、原告が提訴した理由を明らかにするために、治療開始から提訴までの過程で、原告がどのように「患者の病状変化と医師の行為」を解釈したのかを、3組4名の原告の逐語録から検討した。その結果、原告が「提訴する」理由として「想定外の悪い結果」を前提とした《二重の怒り》の存在があることが明らかとなった。《二重の怒り》とは、(1)医師にミスがあり、(2)さらにそのミスを医師が隠ぺいしている、という原告の主観的解釈に基づく怒りである。その医師に対して向けられた「怒り」は、原告が〈応報感情〉を抱き「真相究明」「再発防止」という提訴目的を形成していく契機となっていた。提訴は、原告の単独行為であるが、「提訴する」という行為選択は、医師と患者側との「連携的な行為 joint action」(Blumer 1969=1991)の中で形成された《二重の怒り》に基づいていた。
研究ノート
編集後記
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