保健医療社会学論集
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集 第40回大会(2014 年度)東北大学
大会長講演
  • 朝倉 京子
    2015 年 25 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2015/01/31
    公開日: 2016/07/31
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は、日本の看護師の専門職化を巡る三つの問いについて論述することである。その問いとは、(a)看護師は専門職化を果たしたのか、(b)何が看護師の専門職化の評価を難しくしているのか、(c)看護師の専門職化に関する今後の研究にはどのような課題があるのか、である。本稿では、それぞれの問いについて、以下のような考察をした。(a)看護師の専門職化は進んではいるが、未だ、専門職の成立要件は部分的に満たされ、部分的に欠けているのが実態である。(b)看護師の専門職性を評価する場合、専門職の成立要件3つのうち、自律性の評価がとりわけ困難であり、その理由として4点があげられる。(b-i)看護師は患者のニーズに応じて看護ケアを展開するため、看護師の側の自律性は傍からは見えにくいこと、(b-ii)看護師はチーム医療における「調整役」を担うが、その調整役の自律性は傍からは見えにくいこと、(b-iii)看護師の従事する「療養上の世話」業務はケア労働とも言い換えられ、他のコメディカルが従事する「診療の補助」業務に比べ専門性が高いとは捉えられにくいこと、(b-iv)看護師が医療行為の実施に関して自律的に判断ができても、医師に「指示」を確認しなければならない構造的限界があり、看護師の自律性は傍からは見えにくいこと。(c)看護師の専門職化に関する今後の研究領域では、看護師が自身の仕事の内容と条件をどう統御しているのかということに関わる、より緻密な分析が必要とされる。
教育講演1
  • 平林 勝政
    2015 年 25 巻 2 号 p. 7-17
    発行日: 2015/01/31
    公開日: 2016/07/31
    ジャーナル フリー
    保健医療福祉職の中でも特に看護職に焦点をあて、プロフェッション(専門職)の特徴の一つである「自律」と法との関わりを考える。その際、看護師が「療養上の世話」と「診療の補助」の業務を遂行するプロセスにおいて、「医師の指示」との関連において、いかに自律性を発揮しうるか否かを検討する。とりわけ、診療の補助として「医行為」を行う場面において、今日、法改正が進行中の「特定看護師(仮称)」ないし「特定行為に係る看護師の研修制度」を取り上げ、従来、保健師助産師看護師法上、明確にされてこなかった①「手順書」(プロトコール)という「医師の指示」のあり方と、②「診療の補助」として行いうる医行為の特定及びその範囲の拡大と明確化について、その概要と問題点を明らかにした上で、かかる改正保健師助産師看護師法の下で、なお、看護師の専門性を確立し、その自律性を発揮しうる方途を提示する。
教育講演2
シンポジウム「保健医療福祉職が生き生きと働き続けるために」
原著
  • 加藤 博之, 井上 洋士
    2015 年 25 巻 2 号 p. 40-51
    発行日: 2015/01/31
    公開日: 2016/07/31
    ジャーナル フリー
    精神科病院における禁煙化の普及状況・影響する関連要因等の全国的な実態を調査し、従来から例外扱いされてきた精神科病院の禁煙化に関し考察することを目的とした。公益社団法人日本精神科病院協会のWeb上会員病院名簿を使用し全国の会員病院(総数1,210施設)の中から239施設を無作為抽出し、各病院の看護部長宛てに質問紙を郵送し回答を求めた。有効回答数142票、有効回答率59.4%だった。研究対象施設の禁煙化状況は、病院建物内喫煙所での喫煙は可(「分煙」)は70施設(49.3%)、一部の病棟内のみ禁煙化(「病棟毎禁煙」)は24施設(16.9%)、病院建物内は禁煙化されている(「建物内禁煙」)は24施設(16.9%)、病院敷地内全面禁煙(「全面禁煙」)は22施設(15.5%)だった。精神科病院の禁煙化には「日本全体の受動喫煙防止の動き」「健康増進法」、病院管理者のリーダーシップ等が影響していた。
研究ノート
  • 海老田 大五朗, 藤瀬 竜子, 佐藤 貴洋
    2015 年 25 巻 2 号 p. 52-62
    発行日: 2015/01/31
    公開日: 2016/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究は、障害者を雇用する側が障害者の特性や抱える困難に配慮する労働の「デザイン」に焦点を定めて分析し、障害者を生産者として位置づけるための創意工夫を、インタビュー調査やフィールドワークによって明らかにする。その際、障害者の特性や抱える困難を「方法の知識」という切り口によって細分化し、その細分化された困難を克服するような「デザイン」がどのように組み立てられているかを記述する。ここでは2つのデザインを検討する。1つは、障害者の雇用を可能にする作業のデザインである。もう1つは、障害者が会社に定着することを可能にする組織のデザインである。言いかえるならば、筆者らは、これら2つのデザインによって、知的障害者が採用され企業に定着することが、どのように実現するのかを論証する。
  • 相良 翔
    2015 年 25 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2015/01/31
    公開日: 2016/07/31
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、ダルク在所者が「スリップ」と呼ばれる依存薬物の再使用によってどのような影響がもたらされるのかを考察することである。本稿では調査期間中にスリップを経験したHさんのデータに着目する。本稿の結論は次のとおりである。第一に、Hさんはスリップ以前において「スリップした者から距離を置く」ことや「『クスリを使ったH』の呈示」することによってスリップを回避していた。第二に、そのような方法をとっていたがHさんはスリップをしてしまった。第三に、スリップ後においては、Hさんは「クスリを使わないH」から「クスリを使ったH」へと自己イメージを変化させた。第四に、「クスリを使ったH」を他者に呈示することにより、「愛され欲求」への対応が必要となった。その一方で「愛され欲求」の芽生えは「スリップした者から距離を置く」ことをやめたことを意味していることも重要であることが指摘できた。そして、スリップにより「仲間」との絆が形成され、改めてダルクのメンバーシップを得ていることに気付く契機になったことも考察された。
書評
編集後記
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