保健医療社会学論集
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特集 保健医療社会学論集のこれまでを振り返り、今後を展望する
  • 朝倉 京子
    2020 年 31 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿の主たる目的は、2017–2019年度日本保健医療社会学会機関誌編集委員会が企画し実施した、日本保健医療社会学会30周年記念編集委員会特別企画シンポジウムの趣旨と概要を記録に残すことである。加えて、2020年度編集委員会の実施した規定類の改正についても簡略に記し、その経緯を後世に伝えることを目的とする。はじめに、現在の投稿・査読システムが整備された2007–2009年度編集委員会から現在までの保健医療社会学論集の編集委員会体制、並びに諸規定類の整備の状況と問題点を記載した。次に、2017–2019年度編集委員会が企画したシンポジウム「保健医療社会学論集のこれまでを振り返り、今後を展望する」の企画の趣旨と概要を解説した。最後に、シンポジウムの内容及び2020年度編集委員会の実施した諸規定類の改正状況をふまえて、保健医療社会学会の今後の展望について4つの点から将来への提言をまとめた。

  • 三井 さよ, 堀川 英起, 三枝 七都子, 木矢 幸孝
    2020 年 31 巻 1 号 p. 6-20
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿は、編集委員会特別企画に際して、保健医療社会学論集の今後を展望するためには、まずこれまでについて踏まえることが必要だろうということから、既刊分を振り返った分析内容の報告である。まず、時代を経るにつれて、保健・医療・福祉領域における問題やトピックの立て方に大きな変化があったことが確認された。また、当初から患者や障害を持つ人たちなどへのアプローチは意識されていたが、当初はどうしても提供者中心だったのが、本人たちの視点により近づこうとするものが増えてきていることもわかった。研究手法の面でも、本人や提供者たちの語りに注目する研究が増えている。本学会がこうした特徴をはぐくんできたことを踏まえることは、今後を展望する上で重要な材料となるだろう。

  • 小澤 温
    2020 年 31 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    保健医療社会学論集の掲載論文を次の3つのカテゴリーに整理し検討した。sociology in medicineに関しては、全体的にmedicine(医療)よりは、health(健康)が主要に扱われており、そこではsociologyに拘らずに、広くsocial science(社会科学一般)が使用されていることから、social sciences in healthに該当するカテゴリー(第1カテゴリー)である。sociology of medicineに関しては、既存の医学的な視点とは異なる社会学的な視点の提示とそれによる現象の解明に関わるカテゴリー(第2カテゴリー)である。その他のカテゴリーとして、患者、当事者の視点を中心に据えて、これまでの医療分野における専門職中心の視点の見直しの意図を含んだカテゴリー(第3カテゴリー)である。全体的に、研究者の関心分野(医療、看護、介護、福祉、生命倫理など)に応じて、研究者が明確に保健医療への貢献を意識しているとは限らないが、広い意味でなんらかの保健医療分野の実践への寄与を目指している論文が多いことが示された。

  • 伊藤 美樹子
    2020 年 31 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    本学会は研究対象が、「保健医療」と「社会」、あるいは方法論が社会学的という広範囲な研究テーマを許容するゆるさ、豊かさがある。研究テーマや研究者のいずれにも寛容であることが、高度に分化した専門職中心の医学系の学会とは対照的な魅力である。本稿ではそうした学際性を擁する保健医療社会学論集において「保健医療社会学的な価値の発見と知見の創造」への期待とその達成に必要なアカデミックなコミュニケーションの成立のしにくさについて、看護学系研究者という経験から述べた。すなわち、1)医学系研究の範疇で研究を行う人々の間では、「人を対象とした医学系倫理指針」倫理審査受審という研究上の手続きによって何をどの程度説明するべきかについてが統制された一定の基準をもっていること、2)医学系の分野は、文献のデータベースが早くから整備されており、その点、人文社会学系との知的体系によるギャップがあること。3)「新しい」知見や理論の価値を「誰が」どのように認めるのかについても、編集委員会の統制力が比較的小さい本学会では難しさを伴いやすいということである。

  • 佐藤 哲彦
    2020 年 31 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿の目的はこれまで保健医療社会学論集が果たしてきた役割について明らかにすることである。そこで本稿は、主として保健医療社会学会名義の諸研究と保健医療社会学論集に掲載された論文を題材として、日本における保健医療社会学というジャンルの成立経緯について考察し、これまで指摘されたことのない日本の保健医療社会学のローカルな発展経過を明らかにした。そしてその発展過程を明らかにする中で、これまで日本でしばしば用いられてきたSociology in MedicineとSociology of Medicineの対立とは別の形で展開したローカルな分割を、あえて保健医療社会学Aおよび保健医療社会学Bと名づけることで浮き彫りにし、その分割の存在それ自体が、多様性と継続性という点から、保健医療社会学論集および保健医療社会学会自体の活性化に果たしてきた役割を論じた。

原著
  • 由井 秀樹
    2020 年 31 巻 1 号 p. 40-50
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    都市部において、低所得層向けに設立された施設を中心に、1920年代から医療施設出産が普及しはじめていたことが近年の研究で明らかになってきた。本稿では、この議論を精緻化させるため、行政の社会調査を主な素材に、1920–30年代の東京市における①低所得層の利用できた施設の分布状況、②低所得層のなかでも生活のより厳しい人々が施設の利用をためらった要因を検討した。

    結果、以下が明らかになった。①施設は市の中心部に集中していた。②減額されていたとしても、利用料の負担が重く、利用手続きが手間であったことなどが、低所得層のなかでも生活の厳しい妊婦に施設の利用をためらわせていた。彼女たちは、修練のため低価格で出産介助を行う資格取得後間もない産婆を利用することがあったが、低所得の施設利用者は、専門職養成や医学研究のための学用患者でもありえたことを考慮すれば、学用患者の階層化が生じていたといえる。

  • 篠宮 紗和子
    2020 年 31 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、自閉症の脳機能障害説という医学理論が日本の教育制度に採用されたプロセスを明らかにすることである。2000年代に自閉症が脳機能障害として制度上に位置づけられたことを契機に、自閉症が脳の障害であることが多くの人に知られ始めた。これを受けて、社会学では問題行動や自己に関する語りにおける自閉症の脳機能障害説の役割が分析されてきたが、制度面の研究は少数であり、教育制度に脳機能障害説が持ち込まれた背景は未検討である。本研究では資料調査を通じて、医学では1970年代に脳機能障害説が定説化したが、制度上は医学的な正確さよりも教育機会確保のために自閉症を心因性の「情緒障害」の枠内で扱ったこと、2000年代に入ると障害児教育制度改革において障害の「特性」に応じた教育が目指され、把握すべき「特性」は障害の原因によって異なるという考えから自閉症が脳の障害として位置づけ直されたことを明らかにした。

  • 大島 岳
    2020 年 31 巻 1 号 p. 62-72
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    世界のエイズ対策の基本原則Greater Involvement of People Living with HIV(GIPA)が日本で遵守されてきたとは言い難い。本稿は、1990年代のHIV陽性者の生存への希望が培われた取り組みをGIPA原則から検討することを目的とする。結果、生存や生活に関する情報にアクセス困難な中で、ピアサポートや医療情報誌の協働作成など、希望を模索したヘルスリテラシー向上のための取り組みの生起が明らかとなった。これらは、①病いの経験が隔離される危機を乗り越えるための、②情報だけでなく生活の悩みや感情の共有を通じた場全体に智慧が蓄積されるケイパビリティ向上であり、そして③サービスの受け手である患者としてではなく他者をケアする担い手である市民として貢献する新しい社会運動であったと言える。今後は「慢性の病いと共に生きる者の積極的な関与」原則と体制の整備が求められる。

  • 山田 香
    2020 年 31 巻 1 号 p. 73-83
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    近年の疾病構造の変化、少子高齢化を背景に、ルーラルナース、コミュニティナースといった地域密着型のケアを担う看護師が注目されている。本稿では、過疎地域である山形県小国町の訪問看護師の実践に着目し、介護力低下が進む地域における地域密着型看護師の専門性を明らかにすることを目的とする。小国町立病院訪問看護ステーションの訪問看護に同行し、参与観察および看護師へのインタビューを行い、実践されたケアを質的に分析した。その結果、小国町の看護師は、豪雪地帯特有の地縁血縁のつながりやそれを生んだ家族・地域の歴史を尊重したケアを実践していた。看護師が医療者と生活者の両方のフレームを持ちえる「生活者としての看護師」であることが「生活者としての患者・家族」の意思決定の文脈に添える医療者としてのスキルを生み、これらが地域密着型看護師の専門性であることが示唆された。

研究ノート
  • 内山 裕美
    2020 年 31 巻 1 号 p. 84-93
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿は、質的調査から看護師のケアとはどのようなプロセスかを明らかにすることを目的とする。キャリアを積んだ看護師10名に半構造化面接を行い、M-GTAを用いて分析した。

    キャリアを積んだ看護師のケアを困難にするものは、患者のリアリティ分離であった。しかし、看護師自身が内省を繰り返しながら個の限界性を認識し、他者との相互補完関係を築きながら患者と向かい続け、困難の乗り越えをはかる。これらをケアの基盤として、一人ひとりの患者の変化に即した4つのケアである〔聴くケア〕〔生活を見据えるケア〕〔変化に対応するケア〕〔シームレスケア〕を重ね合わせながら実践し、一人ひとりの患者の生活再建を目指していくプロセスであることが明らかになった。

    看護師のケアとは、患者と向き合う中でそのつど内省しつつ、患者や家族、ケアにかかわる人たちとインタラクティブな関係を築きながら、患者の変化に即した個別具体的なケアを実践することである。

  • 松繁 卓哉
    2020 年 31 巻 1 号 p. 94-104
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    20世紀後半以降、人々の日常生活における様々な問題(「出産」「睡眠」「気分」他)がますます医療の扱うべき対象とされてきた。同時に、病気として顕在化する前に「リスク」を発見するためのスクリーニング(検診)の仕組みが整備されてきた。社会学研究は、医療化論・監視医療論を通じて、こうした状況の理解・説明に取り組んできた。本稿は、近年、米国を中心に巻き起こされたスクリーニングをめぐる論争に着目しながら、現実の社会動向が、監視医療論の説明様式を超えて展開されている点を提示する。

    「便益–害」という軸をもとに検診・医療介入の是非を検討する思潮は、「早期発見」「早期治療」に対する態度変容を萌芽させただけでなく、この対比軸上の「グレーエリア」において医学的所見のみならず、多種多様な要素を含めた価値判断を人々に課した。これらの動向をふまえた監視医療論の再構築が必要となっている。

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