昭和学士会雑誌
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73 巻, 2 号
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原著
  • 三邉 武彦, 戸嶋 洋和, 龍 家圭, 小林 義人, 近藤 泰之, 小口 勝司, 西村 有希, 内田 直樹, 岩瀬 万里子, 張本 敏江, ...
    2013 年 73 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    漢方薬は日常診療で使用される頻度が増えており,西洋薬との併用も多い.しかし,漢方薬と西洋薬の薬物相互作用に関する情報は少ない.これまでわれわれは,上部消化管疾患に対して汎用されている安中散の薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3Aを介する相互作用を検討してきた.その結果,安中散をラットに1週間反復投与することにより,CYP3Aの指標薬物であるミダゾラム(MDZ)の経口投与後の血中濃度が上昇し,これは安中散に含まれる成分の代謝物が小腸CYP3Aを阻害した結果,生じることを示唆した.さらに臨床試験においても,安中散1日3回6日間の反復投与によりMDZの血中薬物濃度下面積(AUC)が有意に増加することを明らかにした.一方,安中散は一般用医薬品としても市販されており,短期使用も多いと考えられる.そこで本研究では,短期服用による安中散のCYP3A4を介する薬物相互作用を明らかにすることを目的として臨床試験を実施した.被験者として日本人健康成人男性12名をgroup Aとgroup B,各6名に分け,open-label,fixed-sequence,2-period studyで検討した.CYP3A4の指標薬物としてMDZを用い,第1期は安中散非内服時のMDZ薬物動態を評価する対照試験とし,第2期は安中散3回内服2時間後(group A)または16時間後(group B)にMDZの薬物動態を評価した.MDZを経口投与後,経時的に採血し血清中濃度をHPLCにより測定し,薬物動態学的パラメータを算出した.また,MDZの鎮静効果はVAS(Visual analoguge scale)を用いて評価した.その結果,group Bでは短期安中散投与後,MDZのAUCは投与前に比べ有意に減少したが,その差は約13%であった.Group Aにおいても短期安中散投与によるMDZの薬物動態に著明な変化は認められなかった.さらに両groupにおいて安中散投与前後でVASスコア値に有意な差は認められなかった.以上の結果,安中散は,短期投与(3回)の2または16時間後にMDZを投与した場合には,その薬物動態および薬効に著明な影響を与えず,臨床的にもCYP3A4を介する薬物相互作用を引き起こす可能性は低いことが示唆された.
  • 松原 英司, 矢持 淑子, 塩沢 英輔, 佐々木 陽介, 太田 秀一, 瀧本 雅文, 深貝 隆志, 小川 良雄, 井上 克己, 島田 誠
    2013 年 73 巻 2 号 p. 76-84
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    細胞内増殖シグナル伝達の経路にPTEN/PI3K/Akt(Phosphate and Tensin Homolog deleted on Chromosome 10/Phosphoinositide 3-kinase/Akt)経路があり,同経路は癌の発現・進行に重要な役割を担っているとされている1).PTENは同経路を抑制する癌抑制因子である.今回われわれはPTENの発現がアンドロゲン除去療法(ADT:Androgen Deprivation Therapy)を施行されたStage IV前立腺癌の予後に与える影響を検討した.症例は米国ハワイ州のThe Queen’s Medical Center cancer tumor registry databaseより,1992 年から2006 年の間に前立腺癌組織標本が採取され,ADTが施行されたStage IV前立腺癌192例を抽出した.さらに組織が入手可能かつ評価可能であった85歳以下で抗癌化学療法が施行されていない133例を抽出した.133例中治療前PSA(Prostate Specific Antigen)値が得られたのは108例であった.免疫組織化学的に標本をPTENで染色して0,1+,2+,3+の4段階で評価した.全生存率と年齢・治療前PSA値・Gleason score2)との関係や,PTENの発現と全生存率との関係を統計学的手法を用い解析した.年齢・治療前PSA値・生存期間の中央値はそれぞれ71.2歳,53.4ng/ml,80.4か月であった.Gleason scoreの分布は7以下が25%,8以上が75%を占めていた.PTEN 0,1+,2+,3+の割合はそれぞれ45%,8%,5%,42%であった.Stage IV前立腺癌全症例において,年齢・治療前PSA値・Gleason scoreそれぞれと全生存率の間に相関があったが,PTENの発現と全生存率の間に相関はなかった.Stage IV前立腺癌133例をJewett Staging System のStage C,D1,D2の3つのサブグループに分けて解析したところ,Stage D2群においてPTENの発現と生存率の間に相関がみられ,Gleason scoreとPTENの発現は多変量解析でそれぞれ生存率との間に相関がみられた.PTENの強い発現は,Stage D2前立腺癌の予後因子である可能性が示唆された.Gleason scoreとPTENの発現はそれぞれ独立した予後因子である可能性も示唆された.
  • 米山 早苗, 砂川 正隆, 本田 豊, 池本 英志, 須賀 大樹, 岩本 泰斗, 石川 慎太郎, 中西 孝子, 久光 正, 岡田 まゆみ
    2013 年 73 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    クロモグラニンA(CgA)は主に副腎髄質クロム親和性細胞,交感神経終末の分泌顆粒中に存在し,カテコールアミンの貯蔵や分泌に関与する糖タンパクであることから,視床下部-交感神経系の反応を反映すると考えられている.コルチゾールと比べると,精神的ストレスに対して鋭敏にかつ特異的に唾液中への分泌が高まることから,近年,唾液CgAが精神的ストレスマーカーとして用いられている.しかし,どのようなストレス条件下で分泌が促進されるのかについては充分明らかにされていない.そこで本研究では,疼痛発現とCgA分泌との関係について検討することを目的とした.急性炎症性疼痛モデルラットならび慢性炎症性疼痛モデルラットを作製し,疼痛ストレス下における唾液CgAの分泌動態を調べた.急性実験では,ラットの右側後肢足底に4%ホルマリン溶液50µlを皮下注射し,1時間後に唾液と血液を採取した.慢性実験では,同部位にComplete Freund’s adjuvant 100µlを皮下注射し,1週間後に唾液と血液を採取した.その後,血漿コルチコステロンと唾液CgA,唾液α-アミラーゼの濃度を測定した.血漿コルチコステロンは急性痛・慢性痛ともに有意に増加した.唾液α-アミラーゼは急性痛では有意に増加し,慢性痛でも増加傾向を示した.しかし,唾液CgAは急性痛では変化せず,慢性痛では有意な増加がみられた.過去の報告では,CgAは精神的ストレスに特異的に反応し,身体的ストレスによる影響は受けにくいとされている.疼痛は身体的にも精神的にもストレスをもたらしうるが,慢性痛に比べ急性痛は危険信号としての意味合いが大きく,精神的ストレスよりも身体的ストレスの要素が大きいため,急性痛では唾液CgAは増加しなかったと考えられる.近年,CgAが精神的ストレスマーカーとして応用されているが,正確に利用するためにも,様々なストレス条件下での分泌動態の検討が必要である.
  • 德中 真由美, 大槻 克文, 大場 智洋, 太田 創, 千葉 博, 岡井 崇
    2013 年 73 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    サイトカインの均衡がとれている正常の状態と比較して,炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの均衡が崩れ,炎症性サイトカインが増加することが早産を誘発する可能性があると考えた.通常血中炎症性サイトカインは早産間近でないと上昇しないが,抗炎症性サイトカインは妊娠早期から変化が認められる可能性がある.妊娠初期において抗炎症性サイトカインであるIL-10を測定し,妊娠早期の早産および切迫早産の発症予知につながるかどうかを調べる目的で本研究を実施した.2010年5月から2012年7月までの間に昭和大学病院で妊娠初期から妊婦健診を受けた患者のうち,本研究に対して書面により同意し,2012年7月までに出産した149人を対象とした.妊娠初期(妊娠7週~14週)に血液検体を採取し,血漿中IL-10を測定した.測定にはHigh Sensitivity Human ELISA Kit(abcam, Cambridge,United Kingdom)を用いた.IL-10の計測値と妊娠・分娩経過との関連を以下の比較により検討した.検討(1):早産群(妊娠22~36週分娩)と正期産群(37~41週分娩の正期産群)との比較.検討(2):切迫早産入院あり群(切迫早産治療の目的で入院し安静・点滴・手術での治療をした)と切迫早産入院なし群との比較.6症例の早産群と143症例の正期産群では,母体年齢や経産回数に差は認めなかった.両群間のIL-10値に有意差を認めなかった.17症例の切迫早産入院あり群と132症例の切迫早産入院なし群では,母体年齢に差は認めなかったが経産回数には有意差を認めた.切迫早産入院あり群では入院なし群と比較し,IL-10が有意に高値であった.妊娠初期母体血液中のIL-10値を測定することが,切迫早産の予知の指標となる可能性が示唆された.
  • 安水 渚, 市塚 清健, 長塚 正晃, 岡井 崇
    2013 年 73 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    妊娠中は骨吸収が亢進し骨量が低下するとの報告がある一方で,変化しないとの報告もあり定まった見解はない.本研究はその点をあきらかにするために年齢や体重などの因子が妊娠中の骨量に影響を及ぼすか否かを検討することを目的として行った.合併症のない妊婦(n=77)を35歳未満の若年群および35歳以上の高年群に分類,妊娠時期を中期(妊娠20週前後)と後期(妊娠30週前後)に分類,体格を低BMI群(BMI<20),高BMI群(BMI>25)に分類するとともにこれらの因子を初産・経産別に比較検討した.また当院に切迫早産で入院中の10名の妊婦(平均入院期間32日±14)について骨量を入院前後で比較検討した.23歳から45歳の健康女性を対照(n=32)とした.本研究は昭和大学医学部倫理委員会承認のもとに患者の同意を得て行われた.骨量は踵骨超音波骨評価装置であるAOS-100を用いて音響的骨評価値(osteo sono-assesment index:OSI)を算出し評価した.OSI値は,妊婦・非妊婦いずれも若年群と高年群の間に有意差は認めなかった.BMI別や経産婦初産婦の間にも有意差はなかった.妊娠時期による検討では,若年群の妊娠中期(n=21)2.92±0.26,後期(n=22)は2.72±0.25で,後期のOSIが有意に低値であった(p=0.0119).高年群では妊娠中期(n=22)2.77±0.30,後期(n=20)2.71±0.33で有意差はなかった(p=0.5795).また切迫早産のため安静入院中の患者に骨量の変化は認められなかった.OSIは妊娠時期別さらにその中で若年妊婦において有意差を認めた.妊娠中においては年齢毎に骨量低下のリスクが異なる可能性があり,妊娠中の指導を緻密に行う必要性が示唆された.入院安静患者においては骨量の低下を考慮する必要があるが,今回の入院日数以内では経時的な骨量低下は確認されず,安静入院する際の一つの指標になる可能性が示唆された.
  • ―一般市民,患者および家族,医学生,文系学生の意識差をもとに―
    黒瀬 直樹, 佐藤 啓造, 根本 紀子, 藤城 雅也, 苅部 智恵子, 米澤 弘恵, 若林 紋, 米山 裕子, 加藤 礼, 李 暁鵬, 浅見 ...
    2013 年 73 巻 2 号 p. 103-112
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    病理解剖とブレインバンクについて国民の意識がどうなっているか調査した論文はみられない.本研究では剖検脳を確保し,ブレインバンクの確立を目指すリサーチリソースネットワーク(research resource network:RRN)が現行法規に抵触しないか再検討するとともに,病理解剖とブレインバンクについて一般市民,患者および家族,医学生,文系学生を対象として同じ内容のアンケート調査を行い,その内容を解析することにより現時点でのブレインバンクの倫理性について検討した.アンケート調査票はRRN研究者間で用いられているものを一部改編して使用した.アンケートは回答者の年齢・性別,パーキンソン病および関連疾患に罹患しているか否か,家族あるいは自分の病理解剖を承諾するか否か,病理解剖を承諾あるいは拒否する理由,病理解剖で標本保存した臓器・組織を診断だけでなく研究に用いることへの賛否,ブレインバンクへの生前登録の賛否について尋ねており,最も該当する選択肢を1つ選択する方式とした.一般市民は昭和大学公開講座受講の品川区民88名(回収率:68.8%),患者および家族はパーキンソン病とブレインバンクについての市民講座受講者102名(回収率:87.9%),医学生は法医学実習参加学生101名(回収率:90.2%),文系学生は上智大学文系学部のドイツ語講義受講者166名(回収率:91.2%)から有効なアンケートを回収した.一般市民,医学生,文系学生のそれぞれ69%,89%,91%が自分も家族も病気でないと答えたのに対し,患者および家族は自分がパーキンソン病と答えた人49%,家族がパーキンソン病と答えた人15%であった.自分の死亡時,病理解剖を「承諾する」と答えたのは患者および家族で92%と最も多かったが,一般市民で73%,医学生で79%,文系学生で78%を占め,一般市民や文系学生では否定的意見が多いのではという予想に反し,病理解剖に対し,肯定的意見が多いことが分かった.自分の病理解剖を承諾する理由は「治療法の進歩に貢献したい」が4群とも70%以上を示した.解剖を拒否する理由は「遺体を傷付けられたくない」が4群とも50%以上を示したほか,「個人情報を知られたくない」も4群とも13~25%を示した.自分の病理解剖時,臓器・組織を診断だけでなく研究に用いることへの賛否では,自分の解剖を「承諾する」と答えたアンケートは4群とも「研究に用いてよい」が80%以上を示した.ブレインバンクの生前登録の賛否では自分の病理解剖を「承諾する」と答えたアンケートは「登録してもよい」が4群とも60%以上を示したが,解剖を「承諾しない」と答えたアンケートでは「登録してもよい」は皆無であった.今後,ブレインバンクの確立を目指すRRNを普及させるには病理解剖の意義を啓蒙していく必要があることが示唆された.いずれにせよ,病理解剖とブレインバンクについては一般市民にも肯定的意見が多いことから,両者は現時点で倫理に適っていると考えられる.さらに,法的検討から日本法医学会の異状死ガイドラインに6番目の項目として明らかな外因の関与した神経・筋疾患による死亡を追加した神経・筋疾患患者の異状死ガイドラインを作成した.
  • 禅野 誠, 恩田 秀寿, 植田 俊彦, 小出 良平, 高橋 春男
    2013 年 73 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    Orbital floor fractureのTrap door type症例における自覚的複視(以下,複視)の有無,Hess赤緑試験(以下,Hess)の異常の有無,両眼単一注視野検査(以下,注視野)の異常の有無の組み合わせによる重症度分類を試みた.2008年1月1日~12月31日に昭和大学病院眼科で眼窩CT・Hess・注視野等の結果から総合的に診断された眼窩底骨折患者147症例中,自覚症状および画像所見で眼窩内側壁骨折を合併しないOrbital floor fractureのTrap door type 49症例を検討した.複視は9方向すべての眼位で行い,そのうち1か所でも複視を認める場合は異常あり(+)とした.Hessは垂直方向の異常の有無と水平方向の異常の有無の2項目を設けた.Hessではそれぞれ5度以上基線より変位している場合を異常ありとした.注視野は両眼単一視できる領域が視野の中心5度領域を含まない場合を異常ありとした.49症例をこの4項目の組み合わせ全16群に術前および術後でそれぞれ分類した.また各症例のHessにおける健眼に対する患眼の四角いエリアの割合比率HAR(Hess area ratio)%を計測し各群の平均値を求めた.HAR%の計算方法は中心から30度のラインを使用し算出した.その結果,全項目異常なしの群は12症例,自覚的複視のみの群は15症例,自覚的複視・垂直方向の異常を認める群は12症例,自覚的複視・垂直方向の異常・水平方向の異常を認める群は3症例,全ての項目で異常を認める群は4症例であった.49症例中46症例が特定の5群に分類されることが判明した.また術後結果は例外なく同様の5群に分類されることが判明した.また異常項目の多い群ほど平均HAR(%)が低いことが判明した.自覚症状およびCT画像所見で診断したTrap door type Orbital floor fractureでは4項目による重症度分類評価を行うと5段階で表現でき,各段階はHAR(%)による重症度順とも一致し,術前評価だけでなく予後判定や手術適応の決定にも有用である可能性がある.
  • ―ミダゾラムを用いた臨床試験―
    戸嶋 洋和, 三邉 武彦, 木崎 順一郎, 小口 勝司, 内田 直樹, 西村 有希, 岩瀬 万里子, 張本 敏江, 川上 桃子, 廣澤 槙子 ...
    2013 年 73 巻 2 号 p. 120-128
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    漢方胃腸薬の主薬成分として使用されることが多い安中散は7種の生薬を含有しているが,その生薬にはCYP3Aを阻害する成分と誘導する成分が報告されている.今までわれわれはラットを用いた実験にて,安中散反復経口投与によりミダゾラム経口投与後のミダゾラム血中濃度が上昇することを報告してきた.そこで,今回健康成人における安中散反復経口投与がCYP3A4に及ぼす影響をミダゾラムを指標薬物として検討する臨床研究を計画した.日本人健康成人男性を対象とし,試験は安中散非内服期と安中散内服期の2期にわけて実施し,先行して行われた安中散非内服期をコントロールとするfixed sequenceデザインにて,経口投与後のミダゾラム薬物動態学的パラメータに対する安中散の影響を検討した.主要評価項目として,ミダゾラム血中濃度より算出したAUC(0-8),Cmax,t1/2,tmaxを設定し,副次評価項目としてはVASによる鎮静効果ならびに安全性を設定した.まず日本人健康成人男性2名を対象としたパイロット試験を実施し,本試験におけるミダゾラムの経口投与量ならびに血中濃度測定用の採血時間など試験デザインの妥当性について確認した後,6名を対象とした本試験を実施し,パイロット試験2名と本試験6名の計8名で検討を行った.パイロット試験・本試験は実施前にUMIN-CTRに事前登録(UMIN000006655,UMIN000007982)し,昭和大学附属烏山病院臨床試験審査委員会において審査,承認された.試験の結果は,ミダゾラムのCmaxは安中散非内服期で64.99±18.61ng/ml,安中散内服期で88.66±16.73ng/mlとなり,安中散の内服により1.36倍の有意な上昇が認められた(p=0.018).同様にAUC(0-8)は安中散非内服期で192.59±78.13ng/ml・hr,安中散内服期で249.06±72.84ng/ml・hrとなり,同様に1.29倍の有意な増加が認められた(p=0.043).VASにおいては差を認めず,安全性にも問題はなかった.この結果より,安中散の反復経口投与はラットでの非臨床試験と同様にヒトでも小腸のCYP3A4を阻害し,CYP3A4にて代謝される薬物の併用によりその血中濃度を上昇させる可能性が示唆された.
  • 奥 和典
    2013 年 73 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    スパイロメトリーでの検討には最大呼出努力を要するので,安静呼吸時に短時間で測定が可能なimpulse oscillation法(IOS)を用いて妊婦の肺機能の推移を検討した.対象は昭和大学病院ならびに昭和大学藤が丘病院において帝王切開が予定された35症例で,測定期間は妊娠17週から37週までとし,4週毎にIOSの測定を行った.座位でIOSを用い5Hz及び20Hzのインパルス付加時の呼吸抵抗R5とR20,インピーダンス(Z5),リアクタンス(X5),共振係数などを計測し,R5−R20を算出した.17週から37週までの体重増加が10kg未満と以上の2群に分けて検討した.また,各パラメーターにおける17週値と各週値との差と17週からの体重増加量との相関性について検討した.初回測定時の平均年齢は32.1±4.5歳,平均身長は159.8±4.6cmであった.体重は妊娠の進行に伴い56.1±8.7から63.9±8.6kgへと増加した.R5,R20及びZ5は妊娠経過に伴って微増したが,30週以降はより顕著に増加し,17週値との間に有意差を認めた(p<0.05).R5−R20およびX5は妊娠の進行に関係せず,明らかな変化を認めなかった.共振係数は妊娠の経過ともなって30週まで上昇したが,34週からは17週値に復する傾向があった.なお26週値,30週値および34週値は17週値との間に有意差を認めた(p<0.05).体重増加が10kg未満と以上との2群における全パラメーターの推移は類似したが,共振係数は10kg未満群で高い傾向にあった.各パラメーターの17週値と各週値との差と体重増加との相関性はR5,R20ならびにZ5では正の相関関係を認めた.上記の検討で得たR2値は10kg以上群で0.35ないし0.4であり,10kg未満群では最大でも0.254と10kg以上群で大きい傾向にあった.妊娠の進行に伴いR5,R20,Z5及び共振係数が上昇したが,その変化は30週以降に強く,R5,R20およびZ5の変化は体重増加量と相関した.妊娠に伴う肺機能の変化は30週以降に強く,また,その程度は体重増加に影響される事が示唆された.
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