昭和学士会雑誌
Online ISSN : 2188-529X
Print ISSN : 2187-719X
ISSN-L : 2187-719X
73 巻, 6 号
特集:遺伝性乳がん・卵巣がん
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集:遺伝性乳がん・卵巣がん
資料
原著
  • —無作為化比較試験—
    岩本 泰斗, 岩本 梢, 釋尾 知春, 鈴木 尚志, 世良田 和幸, 田山 愛, 大橋 祐介, 鈴木 孝明, 渡井 有
    2013 年 73 巻 6 号 p. 518-525
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    定期手術をうける患者は,術当日を絶飲食とする術前管理が従来一般的であった.これに対し,炭水化物含有飲料を術前に摂取させると,術後の回復が促進されることが,欧州を中心とした近年の研究で明らかになった.本邦でも術前に飲料を摂取させる施設が増えつつあるが,この管理方法に関する小児での検討は少なく,本邦で入手可能な飲料も欧州と異なる.今回,小児の定期手術を対象とし,飲料の術前摂取を許可した際の,摂取状況,麻酔導入時における脱水および飢餓の発生状況と誤嚥の危険性などの検討を目的に,以下の要領で無作為化比較試験を行った.腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術が予定された1歳から10歳までの患児120名を無作為に5群に割り付け,各群24例とした.炭水化物を2.5%含有する経口補水液であるオーエスワン®(OSB),OSBと同一の熱量と電解質組成を保ちながらゼリー状であるオーエスワン®ゼリー(OSJ),アルギニンを含有し,炭水化物も18%含有する滋養飲料であるアルジネード®ウォーター(ArgW),水道水(TW)のみのいずれかの飲用を許可した4群に加え,絶飲食(NPO)を継続させた患者群の計5群を設定した.いずれの患者群も,術当日0時からNPOとしたが,飲料を許可した4群では手術室入室予定時刻の2~3時間前に,体重が15kg未満の場合は最大100ml,体重が15kg以上の場合は最大200mlを患児の要求に応じて飲用させた.麻酔の導入,維持はセボフルランで行い適宜フェンタニルも併用した,静脈路確保時に採血し.気管挿管後に腹部超音波検査によって胃幽門部断面積(CSA)を計測し,胃管の挿入により胃内容を吸引・計量した.血液および尿の試料は,遊離脂肪酸(FFA),血清総タンパク,血清アルブミン,血糖および尿比重の測定に供した.統計学的検討は一元配置分散分析法およびSchefféの方法による多重比較検定と,Spearmanの順位相関係数を用いた.有意水準はp<0.05とした.飲料摂取を許可した4群の実際の摂取量に差はなかった.一方,胃内容量は患児による偏差が多く,その平均値はArgW群が他群に比べ,約3倍と突出していた.CSAは群間に差がなく胃内容量とも相関しなかった.FFAはArgW群が有意に低く,尿比重はNPO群がOSJ群に対してのみ有意に高かった.使用した3種の飲料に対する患児の受容と脱水の予防効果は水道水と同様と考えられたが,FFAから評価した飢餓の予防効果はArgWのみに認めた.浸透圧や熱量が高い飲料は胃内停滞時間の延長傾向が指摘されているが,小児を対象とした本研究の結果も,これに追随した.したがって,本邦でも浸透圧や熱量がArgWより低く,OSBあるいはOSJよりも高い製品の発売が望まれる.現時点で対応可能な方策としてArgWの希釈が考えられるが,至適希釈濃度は今後の検討課題となろう.
  • 荒井 典子, 溝渕 正英, 柴田 孝則, 秋澤 忠男, 緒方 浩顕, 衣笠 えり子, 小岩 文彦
    2013 年 73 巻 6 号 p. 526-531
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    慢性腎臓病患者において,心血管病にはミネラル代謝異常や炎症が強く関与している.ビタミンD受容体(VDR)を活性化する,VDRアクティベーターは抗炎症効果などの多面的作用を有している.また,血中の内因性ビタミンD[25-ヒドロキシビタミンD3:25(OH)D3]濃度と心血管系疾患との関連性が示されているが,血管組織内局所におけるビタミンD代謝は検討課題である.われわれは,リン(P)および炎症性サイトカイン刺激によるヒト大動脈血管平滑筋細胞(VSMC)の石灰化への25(OH)D3の影響を検討した.高Pおよび腫瘍壊死因子-α(TNF-α)で刺激したVSMCに,25(OH)D3(10-6~10-8 M)を添加し,VSMCの石灰化,およびビタミンD代謝について検討した.高PおよびTNF-αによりVSMCの石灰化は促進し,25(OH)D3は石灰化を抑制した.25(OH)D3によりVDR mRNA発現の上昇やオステオカルシンmRNA発現低下が認められた.25(OH)D3は高Pおよび炎症性サイトカインによるVSMCの石灰化プロセスを抑制した.
臨床報告
  • 渡辺 誠, 村上 雅彦, 加藤 貴史, 青木 武士, 榎並 延太, 大塚 耕司, 藤森 聡
    2013 年 73 巻 6 号 p. 532-536
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    教室における腹腔鏡下手術映像ライブラリーシステムの現状と課題について報告する.術前に手術映像に関する同意書にてICを行う.術後,手術映像が録画されたDVDとデータベースファイルを所定場所へ提出する.厳重に管理・隔離された専用PCに映像とデータを入力,保存する.3年間で保存,管理された手術映像は1381件であった.システム化により手術ビデオ検討会や学術用ビデオ編集,検索閲覧が容易となった.腹腔鏡下手術映像ライブラリーシステムは,教育・技量の向上ならびに医療の質の向上につながると考えられた.今後,手術映像撮影と保存に関する取扱いを院内基準として明確にしていくことが急務であると考えられた.
feedback
Top