昭和学士会雑誌
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74 巻, 6 号
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特集:精神疾患の診断と治療 —最近の進歩—
総説
  • 吉原 祥子
    2014 年 74 巻 6 号 p. 654-660
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    前立腺がんは5年生存率が比較的良好で,進行の緩やかながんである.排泄や性に関連する合併症が出現しやすい前立腺がん治療においては,生命の維持だけでなくQOLの視点が重視されるようになってきており,看護の立場からも排泄や性に関連したQOLの維持・向上をどのように支えていくかを考える必要がある.そこで,わが国の前立腺がんの排泄や性に関連する看護研究について文献検討を行い,知見を整理し,今後の課題を検討した.結果,2003年から2013年までの文献11本を対象とし概観したところ,前立腺がんの排泄や性に関する看護研究は細部を明らかにしたものはまだ少なく,研究方法は量的な研究,特に記述的研究デザインや相関関係的デザインで行われているものが多かった.研究内容は「排泄・性機能障害や負担感の実態」「排泄・性機能障害や負担感への対処」「排泄・性機能障害や負担感のセクシュアリティへの影響」「排泄・性機能障害や負担感に対する看護」に分類でき,「排泄・性機能障害や負担感への対処」については,深まった内容のものがみられていたが,「排泄・性機能障害や負担感のセクシュアリティへの影響」に関する研究は本数が少なく,また,日本の国民性を踏まえた探究には至っていなかった.今後はさらに対象者を焦点化すること,実験的研究や質的研究を行い,より看護実践に結びつけられるような研究を行っていくことが必要となる.
原著
  • ―アンケート調査をふまえて―
    小橋 京子, 平野 勉
    2014 年 74 巻 6 号 p. 661-668
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    糖尿病治療の根幹は食事,運動療法であるが, 目標の血糖コントロールが達成されない場合には薬物療法が開始される.欧米ではビグアナイド(以下BG)薬が第1選択薬となっているが,日本では特に治療ガイドラインがないため第1選択薬は実地診療医に一任されている.このような現状の中,われわれは東京都内における医師を対象に,症例に則した糖尿病治療薬の処方動向を専門医,一般医に分けて調査した.2013年1月~6月にかけて,東京都内で勤務する医師に対して以下の1)~3)の項目についてアンケート調査を行った.1)現在の糖尿病診療の状態:診療人数と治療内容の割合,食事・運動療法中の2型糖尿病患者さんに対して薬物投与開始を考えるHbA1c(NGSP値)の目安について.2)患者の状況別治療方法の選択; 4症例に対しての第1,第2,第3選択薬について<症例1>56歳,女性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 7.2%<症例2>56歳男性,BMI 26.0 kg/m2,HbA1c 7.2%<症例3>56歳,男性,BMI 22.9kg/m2,HbA1c 8.5%<症例4>67歳男性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 8.5%.3)DPP-4阻害薬の処方状況について; DPP-4阻害薬処方後にHbA1c悪化症例に対する対処方法について.各質問項目について専門医,一般医に分けて解析した.回答した1086名の(回収率85.5%)医師の内訳は専門医290名,一般医796名であった.アンケート1)専門医でインスリン治療の使用率が高かった.薬物治療を開始するHbA1cの目安は専門医,一般医とも7%であった.アンケート2)BMI<25m2/kg未満の症例で血糖コントロールが比較的良好例に対する第1選択は専門医ではBG薬,一般医ではDPP-4阻害薬であった.少量のスルホニル尿素(以下SU)薬は,一般医,専門医とも第3選択薬であった.症例3,4のHbA1c 8%以上のコントロール不良糖尿病例に関しては専門医,一般医ともDPP-4阻害薬が第1選択薬であった.少量のSU薬に関しては,専門医では血糖コントロール不良例に対しても選択しない傾向が判明した.アンケート3)第1選択は「食事・運動療法を再徹底する」が最も多く,第2選択としては「BG薬を追加する」が多かった.専門医では非肥満例に関してもBG薬の処方が選択される傾向があり,少量のSU薬は血糖コントロール不良例に対しても選択順位が低下することが判明した.DPP-4阻害薬の処方選択順位は様々な症例に対して高まっており,その傾向は専門医より一般医に強く認められた.
  • 外池 孝彦, 佐々木 晶子, 土屋 洋道, 橋本 翔太郎, 百々 悠介, 角田 ゆう子, 瀧本 雅文, 九島 巳樹, 澤田 晃暢, 中村 清 ...
    2014 年 74 巻 6 号 p. 669-674
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    予後不良のTriple Negative Breast Cancer(TNBC)はホルモン感受性がないために標的治療薬が確立されていない.また近年,TNBCがbasal-like1(BL1),basal-like2(BL2),immunomodulatory(IM),mesenchymal(M),mesenchymal stem-like(MSL),luminal androgen receptor(LAR)の6種類に亜分類されたことから,各サブタイプにおける標的ターゲットを確定することが望まれている.今回われわれは乳癌90症例を用いて乳癌の進行度と関連するアクチン結合タンパク質Fascinの発現を解析した.さらにTNBC 22症例についてはbasal like typeとnon- basal like typeに分類しFascinの組織特異的な発現を検討した.乳癌90症例のうちFascin陽性率はLuminal Aで0%,Luminal B (human epidermal growth factor receptor 2(HER2)negative)6%,Luminal B(HER2 positive)14%,HER2 positive(non luminal) 13%,TNBCは73%であった.また,TNBC 22症例で臨床病理学的因子との関係ではFascin陽性乳癌はKi-67 indexが30%以上の腫瘤が有意に多く,悪性度の高さが示された.TNBC亜分類のbasal like typeのFascin発現率はnon- basal like typeよりも高かった.以上のことからFascinタンパク質発現とTNBC basal like typeの関係が明らかとなった.FascinはTNBCにおける悪性度や予後予測の新たな診断基準となり,TNBC治療ターゲットになる可能性が示唆された.
症例報告
  • 国井 紀彦, 泉山 仁
    2014 年 74 巻 6 号 p. 675-681
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    内視鏡的な腫瘍生検術施行後,経過観察中に腫瘍内出血による症状の増悪をきたした中間型松果体実質腫瘍(Pineal Parenchymal Tumor of Intermediate Differentiation:PPTID)の一例を経験したので報告する.症例は57歳男性.他院で松果体部に腫瘍を指摘され当院を受診.診断確定のため内視鏡的腫瘍生検・第III脳室底開窓術を施行.病理組織診断はPPTID WHO Grade IIで治療もすすめたが,本人の意向により経過観察となっていた.約1年半経過後,突然の頭痛・複視が出現し,CTで腫瘍内出血を認め緊急入院となった.再出血防止のため開頭腫瘍摘出術を施行.病理診断は今回もやはりPPTIDのGrade IIで,術後に放射線療法を施行,現在再発なく経過観察中である.本例では病理組織上,腫瘍内部に腫瘍内出血によるヘモジデリンの沈着が認められ,へモジデリン沈着部周囲の血管壁には硝子化変性による肥厚が認められた.このことから血管壁の硝子化変性により腫瘍内血管の内腔が狭小化し血栓が形成され,それに伴う壊死や出血が起きた可能性が考えられた.
  • 紺野 有紀子, 山本 松男
    2014 年 74 巻 6 号 p. 682-690
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    重度慢性歯周炎患者に対し,歯周組織再生療法および自家歯牙移植を用いた歯周治療を行うことで良好な結果が得られたので報告する.患者は54歳の女性で,右下奥歯の歯肉が腫れることを主訴に来院した.残存歯25本中4mm以上の歯周ポケットの割合は43.3%でBleeding On Probing(BOP)陽性率は24.0%であった.基本治療による原因の除去とそれによる病変の進行停止後,上顎右側第二小臼歯,下顎左側犬歯,下顎左側第一小臼歯の垂直性骨欠損部に対して歯周組織再生療法を行った.また主訴である下顎右側第二小臼歯は保存不可と診断し,同部位に下顎右側第三大臼歯を自家歯牙移植した.再評価後に補綴処置を行い,メインテナンスに移行した.患者の希望により咬合拳上を伴う全顎的な矯正治療および補綴処置は行わなかったが,咬合干渉のない補綴装置およびオクルーザルスプリント装着によって咬合力のコントロールを行った.現在まで定期的なメインテナンスにより良好に経過している.本症例は,歯周治療が成功するためには,炎症のコントロールと咬合のコントロールが共に重要であることを示すものである.
第61回昭和大学学士会総会
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