昭和学士会雑誌
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75 巻, 1 号
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特集:歯科医療のパラダイムシフト “デジタル・デンティストリー”
教育講演
原著
  • ―発症時年齢と長期予後の関連―
    小向 大輔, 吉村 吾志夫, 長谷川 毅, 廣瀬 真
    2015 年 75 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/22
    ジャーナル フリー
    成人発症微小変化型ネフローゼ症候群(成人MCNS)のステロイド反応性や長期予後についての報告は少ない.当施設において腎生検で診断した成人MCNS 68例について,寛解導入期間(治療開始から完全寛解までの期間)および寛解維持期間(完全寛解から初回再発までの期間)と,年齢をはじめとする患者背景因子との関連について解析した.年齢の中央値で若年群と高齢群の2群に分け寛解導入期間と寛解維持期間をカプランマイヤー法で解析したところ高齢群で寛解導入が有意に遅延していた.COX比例ハザードモデルを用いて寛解導入期間と寛解維持期間をそれぞれ従属変数とし,発症時の年齢,性別,血清アルブミン値,推定糸球体濾過量(estimated Glomerular Filtration rate:eGFR),一日尿タンパク排泄量,ステロイドパルス療法施行を独立変数として解析した結果,高年齢,男性,eGFR低下が寛解導入遅延と相関を示した.一方で寛解維持期間と関連する因子はこれらの変数の中には認めなかった.治療内容,再発様式,累積prednisolone投与量は両群間に差を認めなかったが経過観察期間中の細菌感染症の頻度は高齢群で有意に増加していた.MCNSはステロイド薬への感受性が高く,本研究においても68例全例で少なくとも一度は完全寛解に到達し得たが,63.2%で再発がみられ,累積prednisolone投与量は経過観察3年目においても更に増加傾向を認めており,高齢群においても若年群と同様に増加する傾向が見られた.高齢者においては感染症をはじめとする有害事象に注意する必要があり,初期治療の段階から積極的な免疫抑制剤の併用によりステロイド薬の累積投与量を抑えるなど新たな治療レジメン開発の必要があると考えられた.
  • ―術後早期の壊死域修復に対するMRIからの検討―
    石川 翼, 渥美 敬, 玉置 聡, 中西 亮介, 渡辺 実, 小林 愛宙, 田邊 智絵, 柁原 俊久
    2015 年 75 巻 1 号 p. 78-85
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/22
    ジャーナル フリー
    ステロイド性大腿骨頭壊死症は,青壮年期に両側に発症することが多く,壊死域が広い場合は圧潰が早期に生じ,進行性であり治療に難渋する.活動性の高い若年者に対して行われる人工股関節置換術は,長期経過では再置換の可能性が危惧されるため,関節温存治療が望むべき治療法である.渥美らは広範囲大腿骨頭壊死に対する大腿骨頭高度後方回転骨切り術後,単純X線にて術後回転により内側に移動した圧潰壊死域の再球形化が生じることを明らかにし,有効な関節温存手術であることを報告した.そこでわれわれは若年者ステロイド性広範囲大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭高度後方回転骨切り術後の壊死域修復をMRIから検討したので報告する.対象は大腿骨頭高度後方回転骨切り術を行ったステロイド性広範囲壊死例19関節(19例)であり,男性8例,女性11例,手術時平均年齢は33.8歳である.ステロイド投与の基礎疾患はSystemic lupus erythematosus 7例,Glomerulonephritis 4例,Mixed connective tissue disease 3例,Lymphatic leukemia 2例,Interstitial pneumonia1 1例,Malignant lymphoma 1例,Facial nerve palsy 1例であった.厚生労省班会議改訂分類における術前の病型はType C-1:8関節,Type C-2:11関節であり,全例広範囲壊死域を有していた.病期はStage 3A:11関節,Stage 3B:8関節であった.後方回転角度は平均119.5°(110°~135°),追加した内反角度は平均20°(15°~25°)であった.MRI (脂肪抑制T2強調冠状断像)を術前,術後1か月,術後6か月,術後1年で撮像し,冠状断像の骨頭前方から後方までのスライスをイメージソフト(Pixs2000-Pro)に取り込み,各スライスにおける壊死面積を測定し,積分することで体積(mm3)を算出した.術前壊死域体積に対する術後壊死域体積の割合(%)で修復を評価した.年代別における壊死域体積割合(%)は,術後1年で20歳代(n=9):30.3%,30歳代(n=6):50.8%,40歳代(n=4):59.5%と各年代において継時的に壊死域体積の減少を認め,年代が若いほど壊死域修復が良好である傾向を認めた.病期別における壊死域体積割合の比較では,術後1年ではStage 3A (n=11):47.2%,Stage 3B (n=8):37.6%であり,骨頭圧潰が進行している症例においても壊死域修復は良好である傾向を認めた.術後ステロイド継続投与有無別における壊死域体積割合の比較では,術後1年でステロイド継続投与あり(n=8):53.5%,ステロイド継続投与なし(n=11):35.5%であり術後ステロイド継続投与を行わない症例では壊死域修復が良好である傾向を認めた(P<0.05).大腿骨頭高度後方回転骨切り術は壊死域が内側から後内側の非荷重部に移動し,生存域が前方に位置することから壊死域が修復しやすい環境にあると考えた.術後ステロイドを継続投与された症例は有意に壊死域の修復が劣っていることからステロイド性大腿骨頭壊死症に対する回転骨切り術の成績は術後ステロイド継続の有無により左右される可能性が示唆された.ステロイド性広範囲壊死症に対する高度後方回転骨切術術後早期に壊死域修復が生じることが示された.
  • ―CTを用いた高度後方回転骨切り術と前方回転骨切り術の比較検討―
    田邊 智絵, 渥美 敬, 中西 亮介, 渡邉 実, 石川 翼, 玉置 聡, 柁原 俊久
    2015 年 75 巻 1 号 p. 86-94
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/22
    ジャーナル フリー
    大腿骨頭回転骨切り術は広範囲壊死を有する大腿骨頭壊死症に対して考案された関節温存術である.残存する骨頭生存域を回転させ臼荷重部に移動して荷重をうける術式であり,前方回転骨切り術(Anterior rotational osteotomy:ARO)と後方回転骨切り術(Posterior rotational osteotomy:PRO)が報告されている.PROは術後,骨頭前方に生存域が位置し屈曲動作が中心となる日常生活において骨頭前方の生存域が臼荷重部に移動し荷重をうけるため常に骨頭は臼内で安定した状態になる.また,術後に栄養血管がたわむため回転角度が100°以上の高度後方回転骨切り術(High degree posterior rotational osteotomy:HDPRO)が可能となる.一方で,AROは術後に壊死域が前方に位置するため股関節屈曲位では圧潰壊死域が臼荷重部に移動し股関節の前方不安定性を生じやすいと報告されている.AROとHDPRO後では圧潰の進行した例において,寛骨臼内での股関節の安定性が異なると考えた.本研究の目的は高度に骨頭圧潰を認める特発性大腿骨頭壊死症(厚生労働省班会議改定分類Stage 3B:関節裂隙は保たれているが骨頭圧潰を3mm以上認める例)に対して,AROとHDPRO後の股関節不安定性を股関節0°伸展位,45°屈曲位で撮影した股関節CT水平断像を用いて評価し,AROとHDPRO群を比較検討することである.対象はARO,HDPROの術後6週で股関節CTを撮影し評価しえた32例35関節であり,ARO 12関節HDPRO 23関節である.手術時平均年齢は32.2歳(17~49歳)であり,女性11例男性21例である.壊死誘因はステロイド多量投与15例17関節,アルコール多飲16例17関節,誘因なし1例1関節であった.術前壊死範囲を示す病型(厚労省班会議分類)はARO 12関節ではType C1が5関節,Type C2が7関節,HDPRO 23関節ではType C1が4関節,Type C2が19関節であった.評価方法は,股関節CT水平断像で骨頭最大径となるスライスを用い骨頭後方関節面から臼蓋後方関節面までの距離を計測し,股関節0°伸展位,45°屈曲位の肢位間における距離の差を骨頭の移動距離とした.移動距離が1mm以上のものを股関節不安定性ありと定義しAROとHDPRO群を比較検討した.結果,HDPRO 2/23関節(9%)の不安定性は,ARO 6/12関節(50%)に比べて有意に少なかった(P=0.01).圧潰を強く認めた症例でもHDPROは術後に関節安定性が得られやすいことが明らかとなった.
  • 新妻 学, 池田 純, 西川 洋生, 臼井 勇樹, 稲垣 克記, 木村 仁, 伊能 教夫
    2015 年 75 巻 1 号 p. 95-103
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は表面置換型人工肘関節であるKudo-type 5人工肘関節において,挿入された人工肘関節が,各肘関節角度において周囲の骨組織に与える負荷が変化するか生体工学的に調査すること,および有限要素法による応力解析によって人工肘関節の緩みが生じやすい部位をコンピュータシミュレーション計算により明らかにし,臨床に生かすことのできるための基礎的研究を確立することである.人工肘関節を設置し,1kgw(≒10N)のものを把持した状態で,肘関節角度を30°,50°,70°,90°と伸展から屈曲へ準静的に動作する場合をコンピュータ上で想定した.各角度の肢位保持に必要な筋力を設定した.上腕二頭筋を肘屈筋,上腕三頭筋,腕橈骨筋を拮抗筋とし,人工関節摺動面の関節反力を計算した.次に,その結果を用いて3次元有限要素モデルを作製し,上腕骨および尺骨骨組織の応力分布を自動解析ソフトで算出した.その結果,尺骨コンポーネントステム先端周囲骨組織に肘関節角度30°で12.3MPa,50°で10.5MPa,70°で9.9MPa,90°で9.8MPaの応力が生じ,上腕骨コンポーネントステム先端周囲骨組織に肘関節角度30°で1.50MPa,50°で0.90MPa,70°で0.68MPa,90°で0.52MPaの応力が生じた.尺骨に生じる応力が約10倍であった.Burr D.Bらの報告では骨リモデリングは20MPaから生じるとあり,この値は臨床上骨リモデリングを生じるほどの応力ではなく,臨床長期成績の結果と同様,Kudo人工肘関節の良好な成績を示す根拠となった.また,尺骨コンポーネントステムの長さや形状については,設定変更し応力計算し適切なステムの長さを示唆することができると考えられた.今後の課題として,コンポーネントの形状設定や把持する物体の重量設定を変更するなど,より様々な条件設定を行うことで,臨床における治療の指針となる研究を行う予定である.
症例報告
  • 堀内 一哉, 笠原 慶太, 黒田 佑介, 諸星 晴菜, 肥田 典子, 蘒原 洋輔, 石井 源, 鈴木 隆
    2015 年 75 巻 1 号 p. 104-109
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/22
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代の女性.繰り返す喘鳴,および発熱を主訴に近医を受診した.上気道感染症とそれに伴った気管支喘息発作と診断され,約6か月に渡り吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬配合剤と抗菌薬治療を行われ,寛解と増悪を短期間で繰り返していた.難治性喘息と考えられ紹介となったが,聴診上wheezingを聴取する以外に気管支喘息を支持する所見に乏しく,胸部CT検査を施行したところ左主気管支の狭窄と両肺野にびまん性に粒状影を認めていた.気管支鏡検査を施行したところ,左主気管支に白苔を伴った潰瘍性病変を認めた.気管支吸引痰にて抗酸菌を認め,PCR法で結核菌陽性であり気管支結核の確定診断を得た.気管支結核は喘息との鑑別に難渋することがあり,診断の遅れが問題となることが多く,文献的考察を加えて報告する.
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