昭和学士会雑誌
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75 巻, 5 号
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最終講義
原著
  • 肥田 典子, 手塚 美紀, 熊坂 光香, 三邉 武彦, 鈴木 立紀, 龍 家圭, 山崎 太義, 廣澤 槙子, 田中 明彦, 大田 進, 相良 ...
    2015 年 75 巻 5 号 p. 542-550
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/09
    ジャーナル フリー
    気管支喘息 (喘息) は気道の慢性炎症,可逆性のある気流制限,気道過敏性亢進と繰り返し起こる咳,喘鳴,呼吸困難で特徴づけられる閉塞性呼吸器疾患である.喘息予防・管理ガイドライン2012では吸入ステロイドが長期管理薬の中心に位置づけられ,治療目標として健常人と変わらない日常生活が送れること,喘息発作が起こらないこと,非可逆的な気道リモデリングへの進展を防ぐこと等が掲げられており,ガイドライン導入後の喘息死は確実に減少している.しかし,アドヒアランス不良による喘息発作による救急外来受診は少なからず存在し,入院治療を要する例もある.これまでに長期間の喘息治療薬の休薬が呼吸機能検査に及ぼす影響を検討した報告は多くあるが,短期間休薬の影響については検討が不十分である.今回,症状安定期の喘息患者において喘息治療薬を短期間休薬し,休薬前後での呼吸機能の変化を検討したので報告する.健康成人15名および喘息患者20名についての呼吸機能検査 (forced vital capacity; FVC,forced expiratory volume in one second; FEV1.0,forced expiratory volume % in one second;FEV1.0%,percent predicted forced expiratory volume in one second; %FEV1.0,V25,V50,peak expiratory flow; PEF) 結果を,2014年4月から7月に昭和大学臨床薬理研究所にて実施した治験のデータより抜粋して解析を行った.喘息患者では吸入ステロイドのみ継続し,治療薬の種類によって中止期間を指示した.長時間作用性β2刺激薬は48時間前から,ロイコトリエン受容体拮抗薬は24時間前から,抗アレルギー薬は72時間前からの休薬とした.各呼吸機能検査値について比較検討した.健康成人では2回目来院時ではFEV1.0%,V50,V25値の有意な増加を認めた.一方喘息患者では2回目の来院時のPEFが有意に低下した.特に喘息治療薬として吸入ステロイド/長時間作用性β2刺激薬配合剤を使用している症例では休薬によるPEF低下率が大きかった.喘息患者では,短期間の治療薬休薬によって自覚症状の増悪がなくてもPEF低下がみられることが確認された.短期休薬によるPEF低下と長期休薬による喘息コントロールの悪化との関連について今後の検討が必要であり,喘息コントロール良好を維持するためには,アドヒアランス向上を目的とした患者教育が重要と考えられた.
  • 水谷 勝, 高橋 寛, 花村 祥太郎, 長濵 正亞
    2015 年 75 巻 5 号 p. 551-560
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/09
    ジャーナル フリー
    表層拡大型早期胃癌は早期胃癌全体の4.7%を占め,比較的若年者に多く,組織型は未分化型~中分化型,肉眼型は陥凹型・複合型,占居部位はM領域,壁在は小弯・後壁,深達度は粘膜下層癌が多く,組織混在型胃癌が多く,粘液形質では胃型・胃腸混合型が多く,潰瘍・潰瘍瘢痕の併発率が高かった.手術例ではリンパ節転移陽性率が有意に高かった.表層拡大型胃癌と多発早期胃癌とは似た特徴を有する部分もあるが,性質の異なる点もみられた.未分化型の表層拡大型胃癌では,多発癌の集合によって形成されたと想定される症例が報告されている.他方,分化型の表層拡大型胃癌の場合は多発癌の集合体と考えるよりも,一つの病巣が時間を掛けてゆっくりと水平方向へ進展したものが主たる発生様式であると思われた.
  • 小川 玄洋, 井上 紳, 酒井 哲郎, 小林 洋一, 瀧本 雅文, 松山 高明
    2015 年 75 巻 5 号 p. 561-566
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/09
    ジャーナル フリー
    Bachmann束は冠静脈洞とともに洞調律時の心房間興奮伝搬に関わる主要な筋束であるが,肉眼的な定義・分布は必ずしも明確でない.ヒト剖検心において左房天蓋部におけるBachmann束の分布を検討した.頻脈性不整脈を認めない非循環器疾患の剖検心15例,平均年齢61.4歳 (51~79歳,女性6例) について左房側の付着部位である天蓋部中央におけるBachmann束の筋束厚,幅を計測し周辺の組織性状を観察した.Bachmann束の平均厚は3.67mm,平均幅21.4mmで,心重量と筋束の厚みは相関係数-0.56で逆相関した.Bachmann束は左右心耳を結ぶ主幹部と,左右心耳の静脈側および房室弁輪側に伸展する周辺部に分けられた.主幹部は房室弁輪に平行に走行する筋束であるが,4例が上下に二分していた.また,上大静脈筋袖がBachmann束表層に伸展している例もみられた.Bachmann束は心重量と相関して菲薄化するが,各種不整脈との関連ではより詳細な検討が必要であると考えられた.
症例報告
  • 藤井 三晴, 栗原 祐史, 代田 達夫, 八十 篤聡, 武井 良子, 高橋 浩二
    2015 年 75 巻 5 号 p. 567-572
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/09
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは構音障害を主訴に来院した,巨大な口蓋隆起と両側性の下顎隆起の症例を治療する機会を得たので報告する.症例は60歳男性である.口蓋および下顎舌側臼歯部の骨隆起を放置していたところ徐々に増大し,構音障害を生じたため,当科を受診した.初診時,口蓋正中部に約27×20×14mm,上顎右側臼歯部に約16×11×13mmの骨様硬の膨隆を認め,下顎右側前歯部舌側から臼歯部にかけて約6×7×8mm,下顎左側前歯部から臼歯部にかけて約20×14×13mmの骨様硬の膨隆を認めた.全身麻酔下で,口蓋隆起および下顎隆起除去術を施行した.術前と術後で構音障害について,発語明瞭度検査,文章了解度検査,会話明瞭度検査により評価したところ,術後に改善が確認された.また,患者本人も術後に構音障害の改善を自覚し,満足感を得ていた.なお,創部の治癒経過も良好であった.
  • 菊岡 修一, 岡本 健一郎, 横山 和彦, 佐々木 佐枝子, 松石 純, 鈴木 陽子
    2015 年 75 巻 5 号 p. 573-577
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/09
    ジャーナル フリー
    進行乳癌症例の経過において,緩和ケア病棟での薬物療法と全人的アプローチが及ぼした影響について報告する.50歳,女性.乳癌術後再発に対する化学療法後に呼吸困難,胸部痛,四肢硬直,不安感が出現し,化学療法が中止された.当院緩和ケア病棟入院後,薬物療法,リハビリテーションと精神科の介入を行い,呼吸困難と胸部痛は消失したが,四肢の硬直と不安症状は十分に改善しなかった.このため,全人的なアプローチを行ったところ,日常生活動作 (ADL) は全介助の状態から歩行可能となり,不安感の訴えも消失した.また,血液検査でCRP正常化,腫瘍マーカーも低下し,癌性胸膜炎,肝転移,骨転移も退院までの約13か月間悪化することがなかった.当院退院後は化学療法を再開している.緩和ケア病棟において,適切な薬物療法とともに,詳細に患者の訴えを聴取し,きめ細やかな対応・ケアが行われたことが,全身状態や生活の質 (QOL) の向上だけではなく,乳癌の経過に影響を与えた可能性があった.
  • 南保 舞, 久保田 雅人, 槇 宏太郎
    2015 年 75 巻 5 号 p. 578-586
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/09
    ジャーナル フリー
    両側性の上顎犬歯および第一小臼歯の移転歯を伴う症例を経験し,満足し得る結果が得られたので,その概要を報告する.症例は15歳の男性で乳歯の残存および両側性の移転歯を認めた.移転歯部分の配列について,本来の順番である犬歯,第一小臼歯の順に配列することは,当該歯,および隣在歯歯根等への影響を考慮するとリスクが高いと判断し,移転したままの状態で配列することとした.しかし,審美的観点,咬合機能的観点,歯周組織の観点,隣接歯歯根状態に,良好な結果が得られた.移転歯の治療には本来の配列に修正することが可能か否か,どのようなメカニクスで配列を行うか,さらにその予後について,十分な検討が必要であると認識した.
  • 山下 剛史, 村上 雅彦, 榎並 延太, 古泉 友丈, 大塚 耕司, 五藤 晢, 藤森 聰, 渡辺 誠, 青木 武士
    2015 年 75 巻 5 号 p. 587-591
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/09
    ジャーナル フリー
    86歳男性.整形外科疾患に対して鎮痛剤を長期内服していた.腹痛,下痢,食欲低下などで当科受診し,高度貧血を認め精査のため入院となった.諸検査にて十二指腸潰瘍による十二指腸横行結腸瘻と診断し,絶食,中心静脈栄養,proton pump inhibitor投与を行った.その後,腹痛,黒色便は消失し,貧血は改善傾向を認めた.経過観察の上部消化管内視鏡検査では,潰瘍は縮小するも瘻孔は難治性であった.以上より,瘻孔に対する手術が必要と判断したが,瘻孔部を含めた胃切除では侵襲が大きいと考え,胃空腸バイパス手術を選択した.術後経過は良好であった.退院後2か月が経過し,内視鏡検査で潰瘍は瘢痕化し瘻孔は消失した.近年,制酸剤の進歩などにより減少してきており,十二指腸潰瘍の結腸への穿通は最近では稀な疾患である.本疾患に対する治療としては瘻孔切除を基本とした手術が多く行われるが,本症例は高齢でありバイパス手術を選択したが,良好な経過を得ることができた.本症例につき若干の文献的考察を含め報告する.
第24回昭和大学学士会シンポジウム
第324回昭和大学学士会例会(医学部会主催)
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