昭和学士会雑誌
Online ISSN : 2188-529X
Print ISSN : 2187-719X
ISSN-L : 2187-719X
76 巻, 2 号
泌尿器科学の最前線
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
特集
最終講義
原著
  • 境野 利江
    2016 年 76 巻 2 号 p. 176-186
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    国際放射線防護委員会 (ICRP) は患者防護の最適化を行うために,診断参考レベル (diagnostic reference level:DRL)を利用することを勧告しており,患者線量の観測された分布におけるあるパーセンタイル点をDRLの初期値として選択することを提案した.本研究の目的は,自施設での口内法撮影における患者線量分布を調査し,ローカルDRLを決定し,歯科X線検査の最適化と品質管理を行うことである.患者入射線量を求めるため,成人患者に対する中切歯部のX線写真の被写体が写っていない背景の光学密度を測定した.アルミニウム半価層1.5から2.0mmを持つ4台の歯科用口内法撮影装置とセンシトメトリー制御された3台の自動現像機を用いて,1999年5月から2000年4月まで診断用X線検査を行ったフィルム (Carestream/Kodak UltraSpeed) から合計5,045枚のX線写真を抽出した.フィルム特性曲線を用いて測定した光学密度を患者入射線量に変換した.上顎と下顎の中切歯部の口内法撮影X線検査に対する患者入射線量はガウス分布として観察された.上顎と下顎の中切歯部の平均患者入射線量 (±標準偏差) はそれぞれ1.27 ± 0.25mGyと1.16 ± 0.24mGyであり,対応する光学密度は2.59 ± 0.43と2.39 ± 0.42であった.上顎と下顎の中切歯部に対する平均患者入射線量は,Japan DRLs 2015の値 (1.3mGyと1.1mGy) にほぼ等しかった.これらの平均値と標準偏差から,X線検査の品質管理に有用なローカルDRL,警告・改善レベル,中止レベルを導いた.しかしながら,適切に口内法X線撮影を最適化するには,患者線量を合理的に達成できる限り低くするため,利用し得る,より高感度な受像体を用いるべきである.
  • 廣瀬 真, 長谷川 毅, 小岩 文彦, 吉村 吾志夫
    2016 年 76 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    血液透析 (Hemodialysis:HD) 患者において末梢動脈疾患 (Peripheral Arterial Disease:PAD) は一般人口と同様に冠動脈疾患や脳卒中などと強く関連し,全死亡や冠血管死亡の強力な予後因子になることが報告されている.われわれは非糖尿病HD患者においてPADの新規発症と関連する因子を探索的に検討した.PADの新規発症に関連する因子を調べるため,後ろ向きコホート研究を行った.ベースラインの下肢動脈エコーでPADを認めない単施設の非糖尿病維持透析患者106人を対象とした.5年後の下肢動脈エコーでPADの有無を評価し,PADを認めるものをPAD新規発症とした.年齢・性別・透析歴・喫煙歴・低High Dense Lipoprotein (HDL) 血症の有無・スタチン内服の有無の中からPADの新規発症に寄与する因子を探るため,ロジスティック回帰分析による多変量解析を用いて検討した.年齢・性別・透析歴・喫煙歴・低HDL血症の有無・スタチン内服の有無などの因子とPADの新規発症との関連を多変量解析で検討したところ,低HDL-cho血症のみで有意な関連が認められた (Odds ratio 1.91,95% confidence interval 1.11-3.34,p=0.02).非糖尿病HD患者において低HDL血症はPADの新規発症と関連する可能性を示唆した.
  • 大澤 俊亮, 佐藤 智夫, 山下 紘正, 望月 剛, 北角 権太郎, 千葉 敏雄, 土岐 彰
    2016 年 76 巻 2 号 p. 193-198
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    近年,先天性横隔膜ヘルニアに対して,胎児鏡下気管閉塞術 (Fetal Endoscopic Tracheal Occlusion;FETO) の有用性が報告されている.着脱式バルーンによって気管を閉塞することで,胎児肺・気道に肺胞液が貯留し,肺の成長を促進できるとされる.一方,バルーンによるこの閉塞の解除法に関してはこれまでさまざまな手技が試行されているものの,母児への負担が大きい再度の胎児鏡手術による気管内バルーンの摘出などが主体となるため,より低侵襲的で簡便な手法の開発が望まれている.本研究では,バルーンによる気管閉塞解除の手段として,強力集束超音波 (High Intensity Focused Ultrasound ; HIFU) に着目し,その可能性につき検討を行った.脱気水で満たした水槽内にシリコンチューブを固定し,ナノ液滴0.5~1.0mlを注入した着脱式バルーンをシリコンチューブ内に留置し,チューブを閉塞した.次にバルーンの後壁を焦点として,超音波ガイド下にHIFUを3kW/cm2の音響強度で2秒間照射した.バルーンが破裂した時点でHIFU照射を終了し,バルーンおよびシリコンチューブを観察した.シリコンチューブ内に留置したバルーンは4例全例で破裂した.また,シリコンチューブ前壁には熱変性を認めた.胎児鏡下気管閉塞術の有用性が報告されてきているが,その閉塞解除の手段とその時期についてはいまだ議論が乏しい.HIFUを気管閉塞解除に応用できれば,将来より低侵襲に気管閉塞解除を行うことが可能となり,従来特定の医療施設でのみ実施可能であった先天性横隔膜ヘルニアに対するより安全なFETOがさらに多くの施設で導入可能となる.今後,動物実験を加えることにより,本治療の技術精度・安全性を高め,同時にHIFUの新たな臨床応用を目指していく.
  • 小金澤 征也, 山本 将平, 金子 綾太, 外山 大輔, 池田 裕一, 磯山 恵一
    2016 年 76 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    造血細胞移植用臍帯血ユニット (以下,ユニット血) は,同時に凍結保存された付属の検査用臍帯血 (以下,チューブ血) を用いて細胞機能評価が行われている.通常,ユニット血は長期間凍結保存されていても利用可能と考えられているが,その品質の判定にチューブ血が使用できるかどうかの検討はなされていない.本研究では,長期間保存されたチューブ血がユニット血の造血能を反映しているかどうかについて検討した.保存期間が10年以上経過したユニット血,チューブ血それぞれ110検体を対象とした.それぞれの総有核細胞 (TNC) 数,CD34陽性 (CD34+) 細胞数,生細胞率,顆粒球マクロファージ由来コロニー (CFU-GM) 数,一部の検体でCD34陽性かつCD38陰性 (CD34+/CD38-) 細胞の割合,CD34陽性かつCXCR4陽性 (CD34+/CXCR4+) 細胞の割合を測定した.TNC,CD34+細胞数,生細胞率,CFU-GM数はユニット血で各々5.61±1.91×108個,1.23±0.91×106個,86.73±7.87%,1.46±0.89×105個,チューブ血で各々4.72±1.85×108個,0.91±0.72×106個,72.48±23.4%,0.55±0.62×105個 (p<0.001,p=0.0011,p=0.0011,p<0.001) でありチューブ血はユニット血と比較し,いずれも有意に低値であった.また,チューブ血において42/110 (38.2%) でCFU-GMが検出できなかった.そこで,チューブ血に対応するユニット血の各項目測定値をチューブ血CFU-GM検出群,非検出群に別に比較したが,すべての項目で有意差は見られなかった.チューブ血と対応するユニット血ではCD34+細胞数で正の相関関係を認めた (r=0.747).又,チューブ血のCD34+細胞数と対応するユニット血のCFU-GM数に正の相関関係を認めた (r=0.345).今回の検討から長期間保存されたチューブ血の造血能が低下していることが示唆された.CFU-GM非検出のチューブ血に対応するユニット血の造血能は維持されており,ユニット血の造血能を判定する因子としてチューブ血におけるCD34+細胞数がより重要であると考えられる.以上より,長期間保存されたユニット血の品質の判定にはチューブ血のCD34+細胞数が適しており臍帯血提供の可否を判断できる可能性があると考えられる.
  • 近藤 泰之, 青 暢子, 辻 まゆみ, 小口 勝司
    2016 年 76 巻 2 号 p. 207-216
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    Propofolは,GABA受容体を活性化し麻酔作用を示す静脈内麻酔薬である.現在,麻酔作用のほかに,脳虚血後などにおける脳細胞保護作用が注目されている.神経保護作用の機序として,大脳の代謝や酸素消費の抑制作用および酸化ストレスやアポトーシスの抑制作用が,認められているが,詳細は不明のままである.一方,オートファジーは細胞器官やタンパク質の再利用を起こす恒常性機構で,飢餓時の生存システムとして,臓器や個体の恒常性の維持に必須の生命現象である.また,オートファジーはアポトーシスのようなプログラム細胞死を調整することができ,それによりさまざまな疾患に影響する.そこで,本研究ではヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用い低栄養誘発性オートファジーに対するpropofolの細胞保護作用の有無とその作用機序を明白にすることを目的とした.SH-SY5Y細胞をFBS不含有培養液にて培養し,オートファジーを誘発した.Propofolは0.5µM, 1µM, 5µM濃度を,1~24時間処置した.アポトーシスの評価としてcaspase-3活性を測定し,オートファジーの評価として細胞質p62およびオートファゴソーム内LC3- II を測定した.さらにc-jun N-terminal kinase (JNK) リン酸化能および AMP-activated protein kinase (AMPK) 活性を測定し,細胞内Ca2+レベルの変動を観察した.低栄養培養液によりオートファジーを誘発した細胞は,FBS含有培養液にて培養した細胞に比べ,細胞質内p62は低下し,LC3- II の増加およびcaspase-3活性,AMPK ,JNKリン酸化を促進した.しかしながら,propofol処置は,低栄養によるオートファジー誘発で減少した細胞内p62を抑制した.さらに,オートファジー誘発により増加したLC3- II,caspase-3活性,AMPK,JNKリン酸化はpropofol処置により減少した.また,細胞内[Ca2+iレベルはpropofol処置により減少した.以上より,propofolは低栄養誘発性オートファジーに対し,細胞内[Ca2+iを減少させ,AMPK活性化およびJNKリン酸化能を抑制することで,phagophore形成を抑制しオートファジー誘発による細胞傷害を抑制した.Propofolはアポトーシスや酸化ストレスに対する細胞保護作用を示すだけでなくオートファジー誘発による細胞傷害に対しても細胞保護作用を示し,propofolが多面的作用を有することが示された.
短報
  • 北原 功雄, 福田 直, 水谷 徹
    2016 年 76 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    C1外側塊スクリューの刺入 (Goel&Harms法) を安全に行うことを目的とした脊椎,脊髄ナビゲーションの有用性とC1–2間の硬膜外静脈叢の剥離操作の工夫について報告する.2013年4月から2015年5月までにC1外側塊スクリュー刺入 (Goel&Harms法) を行った6症例を対象とした.脊椎ナビゲーションは,Brain LAB navigationを使用し,Paired pointsの4点法により,C1外側塊に刺入するポイントと方向を確認する.C1–2間の硬膜外静脈叢の剥離は,まずC1椎弓を,骨膜下でC1椎骨動脈溝内縁まで行う.続いてC2椎弓を,C1椎弓と正中から同じ距離で骨膜下で剥離し,C2椎弓神経根と硬膜外静脈叢を一塊に剥離して,双極性凝固止血器により,これを凝固し縮小させた後,Harms pointに達し,C1外側塊にスクリューを挿入する.6症例とも,スクリューの逸脱はなく,静脈叢からの出血は1g以下であり,椎骨動脈損傷もなかった.また,C2神経根の切断もなく,神経根障害もなかった.C1外側塊スクリュー刺入(Goel&Harms法)を安全に行うための,脊髄ナビゲーションとC1–2間の硬膜外静脈叢の剥離操作について報告した.ナビゲーションにおける4points Paired-Registrationと本静脈剥離法は,Goel&Harms法 (C1外側塊に刺入する) を安全に行うために極めて有用である.
第326回昭和大学学士会例会(保健医療学部会主催)
第327回昭和大学学士会例会(医学部会主催)
feedback
Top