昭和学士会雑誌
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76 巻, 4 号
特集:眼科治療の進歩
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特集:眼科治療の進歩
資料
  • ―手術室見学実習記録用紙の作成過程―
    大滝 周, 大木 友美, 加藤 祥子
    2016 年 76 巻 4 号 p. 451-458
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    近年,手術操作の進歩,麻酔技術の向上および地域支援の拡充等により患者の早期退院が可能となった背景の中,周手術期実習を行う看護学生は短期間で急激な生体侵襲を受ける患者を理解することが求められるようになってきた.このような環境の中で,急激な生体侵襲を受ける患者や患者の家族を理解するための方略として,手術室実習の有効性が先行研究により明らかにされている.そこで本研究では,看護学生が意図的な思考で手術室見学実習に臨むための教育方略の1つとして,手術室見学実習記録用紙の作成(以下,記録用紙)を試みたので報告する.記録用紙を【病棟】,【手術室入室】,【麻酔導入】,【手術開始前準備】,【術中】,【手術終了~退室】の6つの流れに分類した.また,手術室見学実習中に見学が一目で理解できるように表現された項目をチェックする部分と学びを記述する部分の2部構成とし,A3用紙1枚に収めた.作成後,看護系A大学が実習を行っているB病院手術室の臨床実習指導者とともに実際の臨床現場で行われている看護援助か否か,また,看護学生が手術室見学実習の行動目標(SBOs)を達成できる内容であるか否かの確認をした.本研究の特徴の1つとして,【病棟】の項目を導入した.これは,記録用紙に手術前,手術中,手術後へと連動する内容を含むことで,手術前・手術中・手術後という継続した看護への理解が進むことが推測される.また,本記録用紙は,著者らが以前に作成した手術室見学実習資料の内容と同様であることから,手術室での学習すべき具体的な視点のガイドとなりうる可能性が期待できる.作成した記録用紙を臨床実習指導者と大学教員との双方で確認することにより,大学側の教育方針と受け入れ側との指導方針の乖離を防ぐ1つの方法と成りうることが示唆された.
原著
  • 吉澤 徹, 山田 浩樹, 堀内 健太郎, 中原 正雄, 谷 将之, 高山 悠子, 岩波 明, 加藤 進昌, 蜂須 貢, 山元 俊憲, 三村 ...
    2016 年 76 巻 4 号 p. 459-468
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬に比べ錐体外路系の副作用などが少なく,また陰性症状にも効果を示すため,統合失調症治療薬の第一選択薬として用いられている.しかし,これら非定型抗精神病薬の副作用として,体重増加や耐糖能異常などが生じることが問題となっている.われわれは抗糖尿病作用,抗動脈硬化作用,抗炎症作用などを示し,脂質代謝異常により減少する高分子量アディポネクチン (HMWアディポネクチン) や増加するとインスリン抵抗性を助長するレチノール結合蛋白4 (RBP4) を指標として非定型抗精神病薬であるオランザピンとブロナンセリンの影響を統合失調症患者において観察した.薬物は通常臨床で使用されている用法・用量に従って投与され,向精神病薬同士の併用は避けた.その結果オランザピンはブロナンセリンに比べ総コレステロールおよびLDLコレステロールに対し有意な増加傾向を示し,HDLコレステロールは有意に増加させた.また,HMWアディポネクチンとRBP4に対してオランザピンは鏡面対称的な経時変化を示した.すなわち,オランザピン投与初期にHMWアディポネクチンは減少し,RBP4は増加した.ブロナンセリンはこれらに対し大きな影響は示さなかった.体重およびBMIに対してはオランザピンは14週以後大きく増加させたが,ブロナンセリンの体重増加はわずかであったが,両薬物間ではその変化は有意な差ではなかった.インスリンの分泌を反映する尿中C-ペプチド濃度に対してはオランザピンはこれを大きく低下し,ブロナンセリンはわずかな平均値の低下であり,有意な差はなかった.血中グルコースおよびヘモグロビンA1c (HbA1c) やグリコアルブミンは両薬剤において有意な影響は認められなかった.このようにオランザピンはコレステロール値や体重,BMIなどを増加させ,さらにインスリンの分泌を抑制し耐糖能異常を示す兆候が認められたが,ブロナンセリンはこれらに大きな影響を与えないことが示された.
  • ―仮想症例を用いた,アンケート結果―
    永井 隆士, 黒田 拓馬, 坂本 和歌子, 石川 紘司, 阪本 桂造, 稲垣 克記
    2016 年 76 巻 4 号 p. 469-479
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症治療薬は,PTH製剤,抗RANKL製剤,ビスホスホネート製剤,SERM製剤などが主体である.どの治療薬を選択するかは主治医の判断に委ねられている.骨折の危険性が高い骨粗鬆症の症例では治療方法の選択に大差はないと考えられるが,骨粗鬆症の程度が中等度から軽度の場合,治療選択に違いが見られる可能性がある.そこで本研究では,症例を提示して近隣の開業医,勤務医を対象に骨粗鬆症の診断,治療選択の意識調査を行い,円滑な医療連携のために,骨粗鬆症診療の情報を共有することを目的に調査を行った.当院設置地区および隣接地区である東京都品川区,目黒区,大田区,世田谷区における開業医と勤務医 (標榜科:内科,外科,整形外科,婦人科,麻酔科,脳外科) を対象に,仮想症例を提示して,無記名式のアンケートを行い骨粗鬆症の診断,治療選択の意識調査を行った.症例の特徴は,1.70代前半,2.骨密度軽度低下,3.骨質劣化,4.臨床症状なし,5.母親の大腿骨頸部骨折の既往歴あり,であった.330人中143人から回答を得た (回収率43.3%).アンケート対象者が提示された検査項目リスト以外に考える追加の画像検査としては,胸腰椎のレントゲン撮影 (53%),腰椎または大腿骨の骨密度測定 (31%) が多かった.血液尿検査では,これ以上の検査は行わないと回答した医師は皆無であり,何かしらの検査の追加があった.骨代謝マーカーを測定すると回答した割合は73%と多く,内訳はTRACP-5b (48%) や尿中NTX (41%),P1NP (27%) の順で多かった.治療方法では,運動療法や食事療法が30~40%を占め,薬物治療ではビスホスホネート製剤 (75%) とビタミンD3製剤 (67%) であった.治療選択に当たり参考となる知識の根拠は,治療経験 (43%),骨粗鬆症診療ガイドライン (41%),学会・講演会 (24%) の順であった.著者の提示した検査項目以外に追加する検査項目として,骨代謝マーカーの測定と回答した割合が73%と多く,骨密度と併せて診断を行っていることが分かった.骨粗鬆症診断ガイドラインや治療経験を参考にして,本症例でも保存療法も含め全員が骨粗鬆症治療を開始したいと考えていた.
  • 片山 恵子, 伊藤 雄太, 濱田 裕子, 宇野 裕和, 中田 土起丈, 末木 博彦
    2016 年 76 巻 4 号 p. 480-485
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症は原因不明の難治性疾患であるが,誘因として病巣感染,喫煙,金属アレルギー等が指摘されている.本症における金属アレルギーを検討する目的で,22年間のパッチテスト結果を検討した.1990年4月より2012年3月までに昭和大学病院附属東病院皮膚科を受診し,歯科金属シリーズのパッチテストを施行された1,025名 (男210名,女815名,4~85歳, 平均年齢40.1±18.1歳) を対象に,掌蹠膿疱症患者群 (148名) と他疾患患者群 (877名) との間で陽性率の比較を行った.パッチテストは18種類の金属試薬を健常皮膚に貼付し,48時間後に除去した.判定は72時間後にICDRG (International Contact Dermatitis Research Group) 基準に基づいて施行し,+~+++を陽性とした.掌蹠膿疱症患者群と他疾患患者群とで金属の陽性率を比較すると,0.5%塩化白金酸に対する陽性率が前者では6.8% (148名中10名)であったのに対して,後者では2.6% (877名中23名) であり,χ2検定で両群間に有意差が認められた (p<0.05).したがって,掌蹠膿疱症においては白金(Pt)に対するアレルギー反応が重要な役割を担っている可能性が高いと考えられた.本症のパッチテスト結果について,1施設での長期間にわたるデータの検討結果は報告されておらず,新知見を与える研究と考えられる.
  • ―半構造化面接による失語症者の思いについての調査―
    松元 瑞枝, 吉岡 尚美, 川手 信行, 水間 正澄
    2016 年 76 巻 4 号 p. 486-497
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    医療従事者が失語症者にInformed consent (以下,IC)をする際になすべき支援を明らかにするために,失語症者がICについて抱いている思いを調査して検討した.対象は,在宅生活を送っている40~70歳代の失語症者で,ボストン失語症重症度尺度2~5の22名であった.まず,描画を併用しながら研究についてのICを行った.その後,失語症者に回答の選択肢を提示しながら急性期やリハビリ開始時そして退院時の日常診療におけるICについての半構造化面接を実施した.1)半構造化面接の結果を集計した.2)本研究で用いた描画と回答の選択肢についての感想を集計した.3)失語症者がICを受けた時に抱いている思いについての発話を抽出して検討した.1)の結果,説明を受けたか否かについては,急性期には覚えていないと回答したヒトが最も多かった.リハビリ開始時と退院時には説明を受けたと回答したヒトが多かった.説明が分かったかどうかについては,いずれの時期においても半数以上のヒトが分かったと回答したが,退院時に分かったと回答したヒトが最も少なかった.説明を受けた時のコミュニケーション支援については,いずれの時期においても過半数のヒトが工夫はなかったと回答した.説明を受けたことによる不安の変化については,減らなかったとどちらとも言えないと回答したヒトが多かった.なお,不安が減ったと回答したヒトは全員説明が分かったと回答したヒトであった.2)の結果,描画の提示が理解を促進したと回答したヒトが多かった.また,面接の際に選択肢が回答に役だったと答えたヒトが多かった.3)急性期に理解できていたことやリハビリについての認識がなかったこと,退院後の生活を想像困難だったことなどの発話が抽出された.以上の結果から,1.急性期の病気についての説明は覚えていないヒトが多かったが,なかには表出は困難だが理解は可能である失語症者がいることを念頭に置いてICをする必要がある.2.リハビリ開始についての説明は具体的にすることが望まれる.3.退院時の説明は,退院後の支援者と連携して行うと失語症者の不安を軽減できる可能性がある.4.ICによって失語症者の不安を軽減するためには,まず,失語症者が分かるように説明することが重要である.5.本研究の倫理規定としてのIC の際の描画の提示は,失語症者の理解を促進できたと思われる.また,半構造化面接で用いた回答の選択肢は表出の支援になったと考えられる.しかし現状では,多くの失語症者は日常診療におけるICの際にコミュニケーション支援を受けていないことが明らかになり,今後の実践が望まれる.
  • 路 昭欣, 前田 真之, 岩柳 美波, 石野 敬子, 大戸 祐治, 馬場 俊之, 吉田 仁, 金子 堯一, 茅野 博行, 小林 洋一
    2016 年 76 巻 4 号 p. 498-504
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    抗菌薬適正使用は抗菌薬処方を最適化し,患者に利益をもたらすことを目的としている.その効果測定にはプロセス指標として抗菌薬の使用量が用いられてきたが,患者アウトカム評価の検討が不十分であった.そこで,新たな抗菌薬適正使用を評価する因子を探索するため,カルバペネム系抗菌薬投与患者の基礎疾患,検査データ,鑑別診断などを調査し,30日死亡に関連する因子を探索した.対象患者は生存群が289名で,死亡群が43名であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,鑑別診断が30日死亡に関連する因子であった(オッズ比:0.228;95%信頼区間:0.109–0.476;P=0.000).プロペンシティスコアマッチングによる解析においても,鑑別診断が30日死亡に関連する有意な因子であった.以上より,カルバペネム系抗菌薬投与患者における抗菌薬適正使用の評価項目として,疾患や患者重症度,背景を加味した因子を評価することの重要性が示された.
症例報告
  • 小口 江美子, 岡崎 雅子, 石野 徳子, 越川 裕樹
    2016 年 76 巻 4 号 p. 505-513
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    患者は50歳代後半のうつ病の女性で薬物治療のため通院していた.健康運動指導士であり薬剤師でもある著者の一人が,通常の外来治療に加え,ヨーガによる運動療法(以後ヨーガセラピーと記載)を指導者として約2年間にわたり計65回実施した.その結果,うつ症状の軽減,セルフケア能力の増加,処方薬剤の種類および用量の減少が見られた.毎回のヨーガセラピー実施後の患者の感想と主治医の診療記録を基に検討したところ,上記効果への影響要因として次に示す4つのポイントが示された.1.患者自身の心身の状態への気づきとセルフケアに対する意識開発,2.患者と指導者の間の信頼関係の構築とその継続,3.ヨーガセラピー終了後の参加患者グループでのシェアリングによる振り返りの実施(ピアサポート),4.多職種連携によるうつ病の統合的患者サポート.今回のうつ病に対するヨーガセラピー併用療法は,患者の体力の向上や気分の改善および自信の回復に寄与し,うつ症状改善を促進する可能性のあることが示唆された.
臨床報告
  • 武冨 麻恵, 信太 賢治, 大嶽 浩司, 泉山 舞, 山元 俊憲, 蜂須 貢, 増田 豊, 亀井 大輔
    2016 年 76 巻 4 号 p. 514-519
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー
    神経因性疼痛の治療にSSRIが有効であるという報告がある.加えて近年新しく臨床使用されているノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant:NaSSA)であるミルタザピンは三環系抗うつ薬やSSRIと異なる機序により脳内でノルアドレナリンとセロトニン神経を活性化する抗うつ薬である.本研究の目的は帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain:ZAP)に対するミルタザピンの除痛効果を明らかにすることである.2010年〜2013年にZAPによるアロデニアを発症している患者を前向きに調査した.SSRIであるフルボキサミンを50mg/日で一週間内服し,その後NaSSAのミルタザピンを15mg/日で一週間内服し効果を確認した.評価項目は視覚アナログスケール(visual analogue scale:VAS),嘔気,眠気の発生率とした.エントリー症例12例(男性8例.女性4例)の平均年齢は70歳(58〜79歳)であり,うちミルタザピンを7日間服用できたのは8例であった.ミルタザピンを内服中に中止となった3例はいずれも眠気とふらつきとが主な理由であり,7日間服用できた症例の中でも1例,眠気のため半量しか服用できなかった症例があった.ミルタザピン服用の8例中4例でVASは減少し,嘔気が問題となった症例はなかった.抗うつ薬にはさまざまな種類があり,どの薬を選択するかは難しいが,ミルタザピンは眠気の副作用があるもののフルボキサミン無効例にも効果があった.
第25回昭和大学学士会シンポジウム
第328回昭和大学学士会例会 (医学部会主催)
第329回昭和大学学士会例会(薬学部会主催)
第330回昭和大学学士会例会(歯学部会主催) 
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