昭和学士会雑誌
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78 巻, 1 号
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講演
原著
  • 八木 敏雄, 久保 和俊, 丸山 博史, 川崎 恵吉, 稲垣 克記, 富田 一誠, 金澤 臣晃, 池田 純, 大塚 成人
    2018 年 78 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    近年,新しい骨接合インプラントの登場で上腕骨遠位端骨折の治療成績は明らかに向上した.しかし,各インプラントの特徴と各骨折型への至適なインプラント選択に関してのevidenceは未だ確立されていない.本研究では屍体上腕骨を用いMayo Clinic Congruent Elbow Plate Systemを用いて骨接合を行いLocking Screw (LS)使用群と非使用群に分けcyclic loading後の両群の力学的強度の比較検討を行った.5検体10肢の屍体上腕骨からAO分類C型の骨折モデルを作成し,同一屍体の左右を用い,最遠位は両群ともNon-Locking Screw (NLS)で固定し,遠位2穴目の固定をLSで固定したLS群とNLSで固定したNLS群に分けた.試験は圧縮荷重とねじりモーメントを同時に25万回加え,試験終了時の軸方向への変位と,回旋角度を測定し,両群のねじり剛性を算出した.軸方向への転位はNLS群が平均0.32mm,LS群で平均0.27mmであった.回旋角度はNLS群が平均17.1°,LS群で平均15.1°であった.ねじり剛性に関してはLS群で計測値が高い傾向で,剛性低下率はNLS群で低い傾向だった.両群とも軸方向へは十分な固定性があり,LS群は初期のねじり剛性が高いが,その剛性低下率は高い傾向であった.LSの使用は,回旋方向への初期固定性は高いが,回旋負荷により骨とスクリュー間にmicromotionが発生しやすい環境にあると考えた.
  • 武冨 麻恵, 信太 賢治, 小林 玲音, 大嶽 浩司, 山本 典正, 増田 豊
    2018 年 78 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    ペインクリニック外来診療において悪性腫瘍を疑わせる症例を経験することがある.本研究の目的は,悪性腫瘍を疑うためのスクリーニングに有用な臨床症状を見出すことである.2011年11月から2014年12月の間に当ペインクリニック外来で,悪性腫瘍が判明した11症例の診療録から患者背景,問診,検査結果,画像所見,治療経過,悪性腫瘍の種類を抽出し,悪性腫瘍を疑う契機となった所見を解析した.経過中に判明した悪性腫瘍は肺がんが4例のほか,胃がん,大腸がん,胆管がん,膵がん,前立腺がん,腎盂がん(再発),甲状腺がんがそれぞれ1例であった.診断に至る重要な契機は,新たな症状の出現(4例),血液検査所見(2例),画像検査所見(3例),治療への抵抗性(2例)の4つに分類できた.悪性腫瘍を見逃さないために,上記4項目に留意しながら診療し,悪性腫瘍の既往がある患者の場合,寛解症例であっても常に再発を念頭にいれて画像検査を行うことが重要である.
  • 船古 崇徳, 髙塩 理, 五十嵐 礼子, 原田 敦子, 太田 真里絵, 大森 裕, 佐藤 綾夏, 澤登 洋輔, 土岐 幸生, 中村 善文, ...
    2018 年 78 巻 1 号 p. 38-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    日本の自殺者数は1998年には3万人を超え,自殺は深刻な社会問題となった.一次予防の観点からデザインされたわが国の精神医学的自殺研究は少ない.精神科健康診断式メンタルヘルス活動を通して得られたデータを使用し,自殺関連行動と関係の強い精神疾患をスクリーニングすることは自殺予防につながるという予測のもと,中小企業の勤労者では精神疾患と自殺関連行動準備群が潜在している,また両者の関連の程度は潜在する精神疾患により異なるという仮説を立て,検証することとした.2014年10〜11月の期間中に,われわれが勤労者を対象として実施している精神科健康診断式メンタルヘルス活動を通して得られたデータを用いて後方視的に調査した.主要評価には,The Mini-International Neuropsychiatric Interview 精神疾患簡易構造化面接法(以下M.I.N.I.)を用いた.自殺関連行動と強く影響する項目を調査するため,M.I.N.I.Scの自殺Sc(確定診断ではなくScreeningの意味としてScを付けた)の有無別で対象を二群に分け,性別,年齢,自殺Sc以外のM.I.N.I.Scなどについて比較検討した.結果は,対象は1,411名(男性1,047名,女性364名,平均年齢40.1±10.3歳)であった.多変量解析を行い,有意な補正オッズ比は高い順に,気分変調症Sc(3.72),パニック症Sc(2.93),双極性障害Sc(2.73),うつ病Sc(2.66),心的外傷後ストレス障害Sc(2.18),強迫症Sc(1.98),女性(1.77),そして若年(0.96)であった.主要評価項目としたM.I.N.I.の結果から,中小企業の勤労者には精神疾患や自殺準備群が潜在しており,自殺準備群には精神疾患,特に気分障害と不安症が多く潜んでいる可能性が示唆された.そして気分変調症Scやパニック症Scの補正オッズ比は双極性障害Scとうつ病Scより高く,自殺関連行動を強く説明する要因であることが分かった.また心的外傷後ストレス障害Scや強迫症Scの補正オッズ比も有意に高く,自殺スクリーニングにおいては見逃せない疾患であることが分かった.一方,全般性不安症Scや薬剤使用障害Scなど予想していたその他の精神疾患は関連を認めなかった.また副次評価項目としたCES-D,BSDS,そしてLSAS-Jの得点は自殺準備群では有意に高く,M.I.N.I.と併用することで自殺関連行動予測の精度を向上させるかもしれない.本研究から中小企業の勤労者においても自殺関連行動の予防対策が必要であり,また自殺関連行動と関連の強い精神疾患をスクリーニングすることは自殺予防につながる可能性が示唆された.
  • 西本 雄飛, 和田 一佐, 岡田 智彰, 稲垣 克記, 渡邊 幹彦
    2018 年 78 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    野球肘の診断には臨床上,理学的所見と共に画像診断が重要であるが,MRIなどの定性的な評価が中心で靭帯の弾性などを定量的に評価した方法は少ない.近年,超音波技術の進歩により組織の質的評価も可能になっている.その一つが超音波エラストグラフィーであり乳腺領域や甲状腺領域で臨床応用されている.運動器領域では腓腹筋筋挫傷,アキレス腱,烏口肩峰靭帯などが評価されている.今回,その技術を応用し,野球肘と診断された野球選手において,肘内側側副靭帯(以下MCL)の弾性を定量化することによって,損傷の程度や罹病期間などとの関係を調査し,復帰までの指標になる可能性があるか検討を行った.投球時に肘内側部痛を訴え,野球肘と診断された24名(平均年齢16歳)の野球選手を対象とした.方法は,超音波診断装置を使用し,探触子(L64)に定量化用音響カプラを装着,Real-time Tissue Elastographyにて測定を行った.計測肢位はGravity test に準じて前腕の自重を掛け,仰臥位,肩関節外転90°,肘関節屈曲30°最大回外位とした.適切な圧迫深度で周期的に端子を肘内側に圧迫させ,測定画像から得られたカプラの歪み値を対象組織(MCL)の歪み値で除したstrain ratio(以下SR)を算出し,5つの値のうち中央3値の平均値をSR値と定義し弾性を評価した.SR値は患側3.11±1.13,健側2.48±0.79と有意差を認めた(p=0.03).これらを骨片の有無で検討すると,裂離骨片あり群(n=9)では,SR値は患側3.86±0.73,健側2.61±0.91と有意差を認めた(p=0.006).裂離骨片なし群(n=15)では患側2.66±1.10は健側2.40±0.72と有意差を認めなかった(p=0.45).裂離骨片なし群で発症後1か月未満とそれ以降で比べると1か月未満は患側と健側で有意差はなく,それ以降も有意差は認めなかったが,患側のみで比べると,発症後1か月未満と1か月以上で有意差を認めた.損傷靭帯は弾性が上昇しSR値は低値になると仮説をたてたが,結果は患側で健側より高く,損傷した靭帯は弾性が低下していると言える.裂離骨片なし群では健患側に差はなく損傷の有無によって弾性に違いはないと思われたが,裂離骨片あり群で患側SR値が有意に高く,裂離骨片の有無が靭帯の弾性に影響していた.また,発症後1か月未満の患側SR値と1か月以上の患側SR値を比較すると前者で有意に低値を示した.靭帯の弾性は損傷の時期に変化しており,急性期は弾性が上昇し,亜急性期〜慢性期は弾性が低下している可能性がある.また,裂離骨片を伴うMCL損傷の野球肘では,靭帯の弾性低下が顕著であった.今後,肘MCL損傷の修復の過程をより正確に超音波エラストグラフィーで捉えることができるようになれば,肘MCL損傷の評価にさらに有用になると考えられる.野球肘の肘MCLは急性期で弾性が上昇し,亜急性期〜慢性期になると低下していた.裂離骨片があると著明に肘MCLの弾性は低下していた.
  • ―食道悪性腫瘍と喫煙歴の関係―
    光本 英雄, 的場 匡亮, 上條 由美
    2018 年 78 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    喫煙による超過罹患に関わる医療費は,国民医療費の約5%を占めると言われている.国民医療費が年々増加していることからも喫煙による超過医療費の削減は喫緊の課題であると考えられる.罹患後の治療過程において,喫煙が周術期の合併症を増加させることは多く報告されているが,喫煙が医療費にどの程度影響を及ぼすのかは明らかになっていない.そこで本研究では,主要な危険因子として喫煙が挙げられている食道癌に着目し,胸腔鏡腹腔鏡併用食道亜全摘術(VATS-E)施行症例における周術期の入院治療において,喫煙歴の有無が入院医療費に与える影響についてDPCデータを用いて検討した.2012年4月から2014年3月の期間にDPC算定病院であるA大学病院で入退院が完結した食道癌症例のうちVATS-Eを施行した症例を対象とし,DPCデータ(様式1,Dファイル,EF統合ファイル)を用いてデータの収集・分析を行った.また,様式1の「喫煙指数」より非喫煙群(喫煙歴なし)と喫煙群(喫煙歴あり)に分類し,各群の性別,年齢,入院日数,手術前入院日数,手術後入院日数,DPC入院期間,合併症発症件数,入院医療費(DPC/PDPS[診断群分類包括支払い制度],出来高),について比較・検討した.性別,DPC入院期間,合併症発症件数はχ二乗検定,その他の項目はWilcoxonの順位和検定を用いて解析を行った.全症例のうち喫煙群は約80%を占めた.また,非喫煙群では男女比がほぼ均等であったのに対し,喫煙群では男性の比率が著しく高かった.これは,喫煙が食道癌の危険因子であること,また,男性に喫煙者が多いことを反映していると考えられた.入院日数,手術前入院日数,手術後入院日数,DPC入院期間,合併症発症件数,入院医療費(DPC/PDPS,出来高)は,喫煙群が非喫煙群に比べて多かったが有意な差は認められなかった.喫煙歴の有無が入院医療費に大きな影響を与えなかったのは,A大学病院では手術1か月前からの「完全禁煙指導」を行っていることや,低侵襲の術式であるVATS-Eを施行していること等,合併症予防対策が徹底されていることが考えられた.合併症予防対策を講じることは,患者のQOL向上のみならず医療費削減につながるため重要であると考えられた.DPCデータを用いて,食道癌周術期のVATS-E施行症例を喫煙群と非喫煙群の2群間に分類し,手術前入院日数,手術後入院日数,入院日数,DPC入院期間,術後合併症,入院医療費(DPC/PDPS,出来高)を比較した.喫煙歴は,各評価項目に影響を与えなかった.
  • 原田 敦子, 山田 浩樹, 笹森 大貴, 船古 崇徳, 横山 佐知子, 吉澤 徹, 清水 勇人, 田中 宏明, 峯岸 玄心, 常岡 俊昭, ...
    2018 年 78 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    精神科救急入院料算定病棟(スーパー救急病棟)は,多くの義務を課せられている半面,治療における具体的指針は示されておらず,各現場において短期間での改善を目指すための計画性と臨機応変な対応の両立を求められる.スーパー救急病棟における治療の質的な向上のために,実情と問題点を明らかにしていく必要があると考え,われわれはスーパー救急病棟2病棟を有す昭和大学附属烏山病院の2010年から2015年における診療録調査を実施した.患者の総数は1,899名(平均年齢は46.9±17.6歳)であり,入院患者の年齢層,非自発的な入院率,高い女性比率などは4年間で大きな傾向の違いはなかった.在棟期間が90日以内での退院者は1,650人(86.9%),スーパー救急病棟から自宅に退院した患者は1,322名(69.6%)であった.診断別でみると,統合失調症は823人(62.3%)でありその他の疾患と比較して入院期間は長かった.双極性障害は入院回数が多く,大うつ病は平均年齢が高い傾向があった.短期集中的で効率的な入院治療と再発予防を考慮した地域移行を両立させることが,今後の精神科治療では重要になると思われる.
  • ―経皮的椎弓根スクリューシステム単独での後方固定には注意が必要―
    白旗 敏之, 豊根 知明, 工藤 理史, 松岡 彰, 丸山 博史, 石川 紘司, 稲垣 克記
    2018 年 78 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    持続する強い疼痛や神経障害のある骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節には手術療法を選択せざるをえないことがある.本研究の目的は当科での手術成績の検討を行った.対象は2009年〜2015年12月に手術を行った骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節17例で,手術は後方固定術に椎体形成術を併用して施行した.後方固定術は従来通りに正中の皮膚切開部から椎弓根スクリュー刺入点を展開してスクリューを挿入する従来法(Open:O群)と経皮的椎弓根スクリューシステム(Percutaneous Pedicle Screw system;PPS:P群)で施行した.これら症例の手術成績を調査した.体動困難な疼痛は術前visual analog scale 8.4が術後3.3と全例で優位に改善した.局所後弯角は術前/術直後/最終観察時で平均23.1°/6.8°/19.6°で,矯正損失は平均14.1°(O/P群14.6°/13.0°)であった.全例で体動困難であった疼痛や麻痺は改善が得られたが全例で矯正損失が認められた.術中・後合併症は認められなかった.X線上椎弓根スクリュー周囲の透亮像が平均9.2週で全例に認め,特にP群では出現時期は術後約2週とO群に比べ早期に見られていた.頭側の隣接椎体骨折を2例(O群1例,P群1例)認めた.本研究の結果から,骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節に対する椎体形成術を併用した後方固定術では矯正損失は認めたが,その臨床成績は概ね良好であった.しかし,インプラントの緩みと矯正損失を全例で認め,特にPPS使用群では早期から緩みの出現があった.経過観察期間がP群では平均約6か月と短いにも関わらずO群(平均約28.1か月)と同程度の矯正損失を認めていることから今後更なる矯正損失の進行は考えられ慎重な経過観察が必要と考えられる.本疾患の様な骨脆弱性の強い場合にはPPS単独の後方固定術に追加の補助固定など一手加える必要があると考えられた.
症例報告
  • 三森 香織
    2018 年 78 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
    広汎型侵襲性歯周炎は,全身的には健康であるが,急速な歯周組織破壊を認めることを特徴とする歯周炎である.本症例は,広汎型侵襲性歯周炎患者に対して,歯周組織再生療法を行い,良好な改善がみられたので報告する.患者は31歳の女性で,歯肉からの出血,排膿,疼痛を主訴として来院した.残存歯28本中4mm以上の歯周ポケットの割合は91.7%でBleeding On Probing (BOP) 陽性率は92.9%で,高度な歯槽骨吸収が多くの部位で認められた.早期に歯周基本治療,歯周外科治療としてエナメルマトリックスタンパク質,およびエナメルマトリックスタンパク質と自家骨移植を併用した歯周組織再生療法を行った.再評価後に補綴処置を行い,定期的なメインテナンスに移行した.その結果,歯周組織の良好な改善が認められ,歯の保存に努めることができた.本症例は,広汎型侵襲性歯周炎患者において,エナメルマトリックスタンパク質,およびエナメルマトリックスタンパク質と自家骨移植を併用した歯周組織再生療法の有用性を示す1例である.
第342回昭和大学学士会例会(薬学部会主催)
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