昭和学士会雑誌
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78 巻 , 3 号
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特別寄稿
総説
  • 田中 周一
    2018 年 78 巻 3 号 p. 239-248
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    「永遠に生成するのみでけっして完成することがない」芸術としてのロマン主義文学を掲げるドイツの文学者フリードリヒ・シュレーゲル(以降シュレーゲルとする)は,その固有の特質を損なうことなしに近代の美的生産が自らの価値を自己承認する道を拓いた.しかし,こうした認識に至るまでのゲーテからシュレーゲルへの思考の連なりは,複雑に入り組んだ道程を示している.表題に掲げた四人はいずれも,完成された過去の文化である古代ギリシア芸術との関係のなかで近代固有の芸術のあり方を模索し,創作をとおして実践していった.ゲーテ,シラー,ヘルダーリンの三者は文芸という美的営為に道徳的価値を与え,その文芸によって人間性が高められ「完成」へと導かれるという構想をうちたてる.美という領域は他のいかなる価値によっても浸食されるものではないとしながらも,本来は美の範疇の外部に位置する道徳の領域と交感する文芸の樹立を求めた.そして,人間を「完成」へと導く道徳的機能をもつものとしての文芸のあり方を提唱するに際し,自身の生み出す芸術作品それ自体もまたひとつの「完成」をめざすものとして企図し,彫琢を重ねていった.これに対し「完成」という領域をはじめから放棄したシュレーゲルのロマン主義文学は,芸術の徹底した自律性を原理とする新しい時代の文芸のあり方を主張するものである.こうした芸術のあり方を「病気(krank)」と評したゲーテは,しかしながらそのロマン主義文学の樹立に多大な影響を及ぼしてもいる.この小論は,「完成」という言葉を鍵として,芸術の自律性と社会的機能の問題を視界にとらえつつ,ドイツ古典主義からロマン主義に至る四者の作家による美的近代の自己理解を考察するものである.
原著
  • 安田 知弘, 岡本 圭司, 新井 昌幸, 中村 弘毅, 皆川 裕人, 有馬 敏彦, 篠原 大地, 神崎 浩二, 西中 直也, 三邊 武幸, ...
    2018 年 78 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    日常の骨折診療において外固定期間を要するため骨折部の隣接関節の拘縮を経験することが多い.しかし,その傾向やリスクは明らかではない.橈骨遠位端骨折が同側の肩関節位置感覚に与える影響を調査し,骨折外固定治療が同側隣接関節の位置感覚に与える影響と拘縮の関連を検討する.対象は,当院へ受診され橈骨遠位端骨折と診断された女性患者6名とした.受傷時から手術まで手関節のシーネ固定と肩関節までの三角筋固定をした.手術は,全例観血的整復固定術を施行した.術後は,三角布とシーネ固定をした.受傷して平均16.4日に位置感覚と肩関節可動域を測定した.結果は,橈骨遠位端骨折後の患肢肩関節位置感覚は健側に比較し外旋30,45度における誤認角度が大きかった.また,同様に外旋方向の拘縮を認めた.肩関節内旋位で固定した結果として肩関節内旋筋(肩甲下筋)に,Proskeらのflexors are contracted (conditioning flexed)と同様の状態となり位置感覚に影響を与えていると考えられた.
  • 大滝 周, 大木 友美, 萩原 綾香
    2018 年 78 巻 3 号 p. 254-263
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    看護学生が生体侵襲を受ける患者を理解するための1つの方略として,手術室実習の有効性が報告されている.しかしながら,看護学生にとって手術室での実習は初めて見るものばかりであるため,学習の視点を明確にすることができず重要な場面を見逃す,また看護師の説明内容を理解することが難しいなどの課題を抱えている.このような看護学生が置かれた状況に対し,筆者らは看護学生が意図的な思考で実習に臨むことができるように手術室見学記録用紙(以下,記録用紙)を作成し,記録用紙を導入した.そこで本研究では,記録用紙の活用状況および看護学生が感じた記録用紙を用いた手術室見学実習の効果について調査した.調査方法は,106名の看護学生に対して,記録用紙の活用に関する自記式無記名質問紙調査を行った.分析方法は,単純集計および質的帰納的分析を行った.本研究は筆者らが所属する機関の倫理委員会の承認を得た(no. 214).看護学生106名中77名(回収率73%)から回答を得た.本研究の結果より,看護学生の記録用紙の活用状況として,77名中74名(96%)の看護学生が肯定的な回答を表す〔とても使いやすかった〕〔使いやすかった〕と回答し,看護学生が記録用紙を肯定的に捉え,活用していたことが明らかとなった.また,記録用紙を用いた実習に関する自由記述から得られた記述内容より,190コード,35のサブカテゴリー,11のカテゴリーを抽出され,『看護学生が感じた効果』『看護学生が感じた記録用紙のメリットとデメリット』『看護学生が感じる手術室の環境』の4つのテーマが明らかとなった.
  • 西岡 貴弘
    2018 年 78 巻 3 号 p. 264-274
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    心臓磁気共鳴画像診断法(Cardiac Magnetic Resonance Imaging; CMRI)において,通常,体血流量(Qs)は上行大動脈通過血流量(Qaao)に相当するが,大動脈弁狭窄による乱流や各種短絡などはQaaoの正確な測定の妨げとなる.本研究では心臓MRI位相画像法を用いて体血流量の測定方法を検討した.2010年から2011年までCMRIを施行した73例.年齢は0か月〜72歳(中央値7歳),体重は2.0〜77.4kg(中央値21.8kg),男女比は37:36.Qaao,下行大動脈血流量(Qdao),上大静脈血流量(Qsvc),および下大静脈血流量(Qivc)について位相画像法を用いて計測し,QsがQsvcとQdaoの合計から推定可能かを検討した.またCineMRI法で測定した左室一回拍出量(LVSV)とQaaoの関連を検討した.撮影は3.0T,1.5TMRI機器を,信号収集系列はFastcard PC法を,LVSV測定はCineMRI法を使用した.LVSVとQaao,LVSVとQivc+Qdao,Qsvc+QivcとQaao,Qsvc+QdaoとQaaoは,各相関係数r=0.98*,0.92*,0.93*,0.97*と強い相関を認め(*:p<0.001),Bland-Altman分析で一致を確認した.CineMRI法を用いてLVSVを測定することでCMRI-PC法で測定されたQaaoの正確性を確認した.CMRI-PC法にて大血管各部位の血流量を正確に計測することができた.QsはQsvcとQdaoの加算値に一致することが証明できた.心臓カテーテル検査では測定困難な肺動脈閉鎖や大動脈弁狭窄などの疾患群でも,上大静脈と下大静脈または下行大動脈の血流量を計測することで,Qsの計測が可能になり,各種疾患群への応用が期待できることが判明した.以上の結果から,Qaaoが測定不可能な疾患群でもQsを算出することが可能であり,各種先天性心疾患手術前後の評価に応用が期待できる.心臓MRI位相画像法を用いることにより上大静脈および下行大動脈の血流量測定をすることで体血流量の測定が可能になる.
症例報告
  • 岡本 奈央子, 岡本 義久, 石川 琢也, 大貫 裕太, 小川 玲, 児玉 雅彦, 渡邊 常樹, 西岡 貴弘, 池田 裕一, 磯山 恵一
    2018 年 78 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    原発性シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome, SS)は慢性唾液腺炎と乾燥性角膜炎を主徴とする自己免疫疾患である.小児膠原病疫学調査において若年性特発性関節炎,全身性エリテマトーデスに次ぐ高頻度な疾患であることが明らかにされた.小児では目や口の乾燥を呈する腺症状ではなく,非特異的な症状で受診する例が多い.今回,日常生活に支障をきたすほどの全身倦怠感や発熱の反復などの症状を認めながら,長期間にわたり起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation, OD)と診断されていたSSの1例を経験したので報告する.症例は14歳女児.12歳時にめまいと一時的な両下肢の筋力低下を自覚したのを契機にODと診断された.その後も頻回な倦怠感を訴え,複数の診療科・施設でODと診断されていた.14歳時に発熱,嘔吐,腹痛,下腿紫斑を主訴に前医に入院し,アレルギー性紫斑病の疑いでプレドニゾロン(PSL)の投与を開始された.しかし,症状改善せず,多様な所見が加わったため当科に紹介となった.抗核抗体,抗SS-A/Ro抗体,抗SS-B/La抗体が陽性,ガム試験と口唇小唾液腺生検がSSの診断基準を満たし,原発性SSと診断した.PSLは漸減中止しNSAIDsの内服を開始したが,低血圧および全身倦怠感が増悪した.その後,昇圧剤やPSLの内服を再開するも症状のコントロールが困難だったため,免疫抑制剤を投与した.現在はPSL,シクロスポリン,昇圧剤の内服を併用し加療中である.倦怠感や原因不明の発熱や皮疹などの症状を繰り返す症例では,腺症状がなくともSSの可能性を考慮し,精査する必要性があると考えられた.
  • 鈴木 慎太郎, 本間 哲也, 眞鍋 亮, 木村 友之, 桑原 直太, 田中 明彦, 相良 博典, 柳川 容子
    2018 年 78 巻 3 号 p. 282-288
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は38歳男性.自家製のお好み焼きを食べている最中から喉頭違和感,呼吸困難,眼球結膜の充血などを訴え救急搬送された.アナフィラキシーの診断で加療し,後日当科へ精査目的で来院した.患者には著しいダニ・ハウスダストによるアレルギー性鼻炎の既往があった.お好み焼きの具材に対する抗原特異性IgEによるアレルギー検査とプリックテストを行ったが全て陰性だった.問診上,開封後密封せずに常温で6か月以上経過した市販のお好み焼き粉を用いて調理したことが判明し,お好み焼き粉に混入したダニによるアナフィラキシーを強く疑った.お好み焼き粉を鏡検した結果,多数のコナヒョウヒダニが検出され,さらに,Dani Scan®(生活環境中のダニアレルゲン検出を目的とする簡易型検査キット)を用いた検査においても強陽性を示した.近年,お好み焼きやパンケーキ等の小麦粉製品に混入したダニを経口摂取して生じるアナフィラキシーの報告が急増している.診断のためには,調理に用いた小麦粉製品の保管状況の聞き取りと,感作が成立した同種のダニを発症前に摂取した調理材料中に証明することが求められる.今回,使用したDani Scan®は,一般家庭においても食品中のダニ汚染を検知する簡便なキットであり,本病態の診断や発症の予防に一定の効果が期待できるものと推察した.
  • 村元 勤, 岡田 あかね, 向井 勇貴, 小池 亮, 池本 舞, 吉泉 絵理, 福谷 梨穂, 岡崎 美寿歩, 山下 有加, 竹中 慎, 濱田 ...
    2018 年 78 巻 3 号 p. 289-295
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性,以前から慢性虫垂炎の再燃を繰り返しており,右卵巣腫瘍も併存していたため腹腔鏡下同時手術の予定であった.数日前から下腹部痛が出現し慢性虫垂炎の再燃と診断し,緊急入院した.以前から再燃を繰り返していたことから保存的加療後も短期間に再燃する可能性が高く,卵巣および卵巣腫瘍に虫垂炎の炎症が波及し卵巣膿瘍を形成しうること,虫垂と右卵巣は同一術野で手術が可能であることから一期的に腹腔鏡下同時手術を行った.虫垂切除および右付属器摘出を行い,術後経過は良好で4日病日に退院となった.蜂窩織炎性虫垂炎は進行した場合に壊疽性虫垂炎や穿孔性虫垂炎に移行する.卵巣と虫垂は解剖学的に近接した臓器であり虫垂より炎症が卵巣に波及し卵巣膿瘍を形成することや,もともと卵巣腫瘍が存在する場合にも術後卵巣膿瘍を形成することがある.本例のように右卵巣腫瘍が併存する場合,同一術野で手術が可能であり,虫垂炎の炎症が波及するリスクを考慮し虫垂炎の程度などを評価した上で侵襲性を考慮し腹腔鏡下同時手術を考慮すべきである.
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