昭和学士会雑誌
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78 巻 , 6 号
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特集:昭和大学での放射線治療の現状と今後
講演
資料
  • 成島 道昭
    2018 年 78 巻 6 号 p. 649-655
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    創縫合手技は外科必須修得項目であるが,医学生や臨床研修医がon the job training(OJT現任訓練,以下OJT)で修練することは人権意識の高まりや医療安全上の見地から困難になりつつある.このため,学習者は人工素材を用いた医学教育用縫合シミュレータで学習する機会が多いが,これらはヒトの皮膚に近似するものではあるものの,その進展性や構造はまだ十分とはいえない.このため,よりヒトに組織構造が近いブタ臓器を用いた外科手技シミュレーション講習会を企画・運営する機会を得たので報告する.2011年度から毎年1回,昭和大学横浜市北部病院医療教育支援室および消化器センターなど外科系医師の協力の下で開催した.開催は毎年度秋または冬の土曜日午後,神奈川県足柄上郡中井町にあるテルモメディカルプラネックスへバス移動し,約3時間半の実技講習を行った.これまでに延べ208名(臨床研修医122名,外科系医師86名)が参加した.基本的な外科手技の修得のみならず,最近の内視鏡下手術の広がりやよりレベルの高い手技も体験させることを意図して(1)皮膚創縫合,(2)気管切開,(3)腹腔鏡下胆嚢摘出術(4)臓器吻合(胃–小腸)とし,2013年度からは新たに(5)血管吻合を追加した.臨床研修医からの結果では,手技の自己達成感について約95%が「達成できた(good)」と回答した.また指導方法についても約90%が「適切である(good)」と回答した.講習時間配分については,約37%が「時間が足りなかった(poor)」という意見であった.ブタ臓器を用いた本講習会の開催により,集中的に基本的外科手技を学習することができ大変好評であった.年度初め4月の研修開始から半年以上経った時期での開催は,学生実習や研修早期に学んだ知識や技術の再確認に有用であり,また受講者の基本的な外科手技の向上に結びつくことができるものと考えられる.その開催には費用や講師への配慮を要するが,本講習会に参加することが将来のキャリア形成を見据えた外科臨床を理解・経験する機会と捉え,今後も充実させていきたい.
原著
  • 本多 英彦, 小林 広和, 山本 雅人, 小倉 浩, 稲垣 昌博, 片岡 有, 唐川 亜希子, 福島 美和子
    2018 年 78 巻 6 号 p. 656-662
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンの構成成分であるBisphenol A Glycidyl Methacrylate(Bis-GMA)とTriethylene glycol dimethacrylate(TEGDMA)を30mol%と70mol%の比率になるよう混合し,Camphorquinone,2-(Dimethylamino)ethyl Methacrylate,Butylated hydroxytolueneをそれぞれ1.0wt%添加した試料を作成した.この試料を歯科用LED照射器(照射光波長420-480nm)により照射時間60秒で硬化させ,熱重量・示差熱同時測定(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis, TG-DTA)により熱挙動を測定した.また,試料の状態をデジタルカメラにより撮影し,TG-DTAデータと比較した.TG-DTA測定は,温度が1時間に100℃上昇するよう設定し,窒素雰囲気中で行った.TGのデータからは昇温中の試料の質量変動がわかり,DTAデータからは試料温度の設定温度に対する追随具合が測定される.試料の熱容量が変化したり吸熱発熱現象がおきると,DTAデータに反映される.TGデータを温度に対してプロットしたTG曲線も,DTAデータを温度に対してプロットしたDTA曲線も,変化の傾向は3つの温度域で異なることが分かった.270℃から350℃までを領域Ⅰ,350℃から395℃までを領域Ⅱ,395℃から測定終了温度である500℃までを領域Ⅲとして,それぞれの温度域で撮影された画像との関連を調べた.領域Ⅰでは試料の色が黒色に変化する現象が観察された.黒色化は炭化によって起きていると考えられ,DTA曲線の変化は炭化を伴う熱分解によるものと考えられる.領域Ⅱでは,概形を維持したままで熱収縮する現象が観測された.概形が維持された収縮であるので,残留応力による収縮であると考えられる.領域Ⅲでも熱収縮現象は続いたが,試料表面も崩壊し,大きく形状が変化していた.残留応力の測定には,光弾性素材やストレインゲージを用いる方法が一般的であるが,熱収縮現象の理解に,熱測定が有効であることを明らかにした.
  • 植松 秀護, 北見 明彦, 鈴木 浩介, 高宮 新之介, 佐野 文俊, 大橋 慎一, 田中 洋子, 神尾 義人, 氷室 直哉, 片岡 大輔, ...
    2018 年 78 巻 6 号 p. 663-672
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    Thymidylate synthase(TS)はDNA合成の律速酵素である.TSはがん細胞の活動性および悪性度との関係性が示されている.また腫瘍内のTSの活性レベルの上昇はTS阻害薬の治療抵抗性と予後に関連していることが報告されているが,喫煙がTS活性に及ぼす影響は十分に解明されていない.本研究は,喫煙が原発性肺癌における腫瘍内TS活性値にどのような影響を与えるのかを調べることを目的に,肺癌手術で得られた腫瘍内のTSの活性値と喫煙の関係を臨床病理学的背景の側面から検討し,また喫煙状況によるTSの活性値と予後について検討した.昭和大学呼吸器外科で原発性肺癌手術を行った113例を対象とした.手術検体の薄切切片からRT-PCRを用いてTSのmRNAの発現量を測定し,各因子との関係を検討した.対象のうちAdenocarcinoma (Ad)が68例で,Squamous cell carcinoma(Sq)が45例であった.全SqのTS活性値は全Adより高値であった(p=0.0276).喫煙歴のあるAd(35例)とSq (43例)の喫煙量の中央値は,それぞれ45pack-years,50pack-yearsであった.喫煙者のSqのTS活性値は喫煙者のAdに比べ高くなる傾向があった(p=0.0047).喫煙者のAdにおけるTS活性値は,喫煙量が45pack-years以上の群の方が,45pack-years未満の群に比べ高値であった(p=0.0187).Ad全体では,喫煙歴の有無でのTS活性値の差はみられなかった.また喫煙者のSqにおけるTS活性値は,喫煙量で差はみられなかった.喫煙歴のあるSqにおけるTS活性値は,腫瘍径が30mmより大きい群は,30mm以下の群に比べ高値であった(p=0.0186).喫煙状況と予後には明らかな関係は見られなかった.しかし腫瘍径が30mmより大きい群においては,TS活性値の高値群で予後が良い傾向が見られ,術後補助化学療法や再発時治療の影響が推測された.以上の結果からTS活性値を高くする影響を持つ因子は,喫煙者のAdでは喫煙量,喫煙者のSqでは腫瘍径であることが示された.本研究で,Adにおいては喫煙量がTS活性値に影響を与えている可能性が示唆された.
  • 五十嵐 礼子, 山田 浩樹, 中村 善文, 林 若穂, 徳増 卓宏, 田玉 紘史, 斎藤 綾華, 山田 真理, 宮保 嘉津真, 小野 英里子 ...
    2018 年 78 巻 6 号 p. 673-681
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    昭和大学附属烏山病院は大学附属病院でありながら精神科救急入院料算定病棟(スーパー救急病棟)を2病棟有す急性期型の単科精神科病院である.患者背景や症状経過の詳細な情報が得られにくいことの多いスーパー救急病棟には,時に急性精神病の診断で入院し,その後診断の変更がないまま退院に至るケースが存在する.精神科救急の現場ではしばしば多用される急性精神病診断は,精神科救急の現場である程度の有用性があるが,一方でその臨床的特徴については曖昧になり,学術対象となりにくいという弱点がある.われわれは当院に2010年1月1日から2014年12月31日に当院スーパー救急病棟に入院した患者の診療録を集計したデータベースを作成した.当院スーパー救急病棟では統合失調症圏の患者が最も多く入院するなど先行文献における患者層とほぼ同じであった.このなかでICD-10における急性一過性精神病性障害診断のまま退院した患者は28人であり,これを統合失調症患者996人と比較すると,統合失調症に比べて激しい症状で入院する一方で,比較的少量の抗精神病薬の投与で寛解していることが明らかになった.また,急性一過性精神病性障害のうち半数は非定型精神病の診断に合致し,統合失調症との比較や治療は概ね非定型精神病の特徴に類似していたため,当院のスーパー救急病棟における急性一過性精神病性障害患者に対し,非定型精神病の疾患概念は一定の有用性がある可能性が示唆された.
症例報告
  • 箱崎 智樹, 村上 雅彦, 草野 智一, 山崎 達哉, 平井 隆仁, 冨岡 幸大, 吉澤 宗大, 小澤 慶彰, 田代 良彦, 野垣 航二, ...
    2018 年 78 巻 6 号 p. 682-687
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    症例は16歳の男性で,幼少期から食べ過ぎると嘔気,嘔吐を来していたが,自然軽快するため医療機関は受診せず放置していた.今回は食後の嘔気が2週間持続するため,前医を受診した.上部消化管内視鏡検査で胃内に大量の残渣を認め,上部消化管の通過障害を疑われ,精査加療目的に当院へ紹介となった.腹部造影CTや経口胃十二指腸造影等の結果から,明らかな通過障害は認めずnonrotation型の中腸軸捻転を伴う腸回転異常症と診断した.検査所見,臨床所見の結果より腸管虚血を疑う所見が乏しいことから,絶食として保存的加療を選択した.その後腹部症状は改善するも,食事再開後に再度嘔吐を認め,腹腔鏡下にて軸捻転整復術を行う予定となった.腹腔内所見で小腸間膜間の癒着が強く開腹移行し,軸捻転を解除した.術後は良好に経過し,特に合併症無く退院となった.腸回転異常症の多くは乳児期に発見されるものが多いが,若年期以降に発見される症例も散見され,反復性の嘔吐や持続性の腹部症状を呈する症例では,本疾患も念頭に置くべきだと考えられる.
  • 箱崎 智樹, 村上 雅彦, 松田 和広, 草野 智一, 古泉 友丈, 藤森 聰, 青木 武士
    2018 年 78 巻 6 号 p. 688-694
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.前医で右乳癌に対し右乳房部分切除術を施行.病理診断で非浸潤性乳管癌(Ductal Carcinoma In Situ:DCIS)と診断され,術後補助放射線療法後に外来経過観察されていた.術後2年8か月に健診で施行した腹部超音波検査で,肝臓S3, 4に3.6cm大の腫瘤を指摘された.前医で同腫瘤を針生検し,病理診断で乳癌異時性肝転移疑いと診断され,当科へ手術目的に紹介された.過去にDCISの異時性肝転移切除例で,長期生存を得た報告がある事を考慮し,肝部分切除術を施行した.病理診断では乳癌異時性肝転移に矛盾しないと診断された.DCISは間質浸潤を示さない乳癌であり,現在本邦において増加傾向にあるが,外科的切除後に再発・遠隔転移を認める症例は稀である.今回われわれはDCISの術後2年8か月で異時性単発肝転移を認め,肝切除を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 大宮 信哉, 高見 礼示, 梶谷 英人, 川田 尚人, 藤岡 愛, 天笠 允仁, 中村 恭菜, 宮﨑 友晃, 前住 忠秀, 丸田 雄一, 小 ...
    2018 年 78 巻 6 号 p. 695-702
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    被嚢性腹膜硬化症(EPS)は壁側腹膜および臓側腹膜が全体に線維性肥厚を示す病変であるが,8〜10年以上長期に腹膜透析を施行すると発生率が上昇する.今回,われわれは腹膜透析開始後3〜5年程度で血液透析に移行したが,EPSを生じた症例を2例経験した.両症例の共通点として尿毒症・透析困難により血液透析に切り替えた点,高浸透圧・高ブドウ糖濃度液の使用が2例で認められた.比較的短期間で腹膜透析を終了した場合でも腹膜透過性の亢進を認める,高ブドウ糖液使用例や腹膜炎歴がある場合などのEPSハイリスク例では排液中のCA125を始めとした液性因子検査で腹膜透析中止のタイミングを検討し,終了後に腹部CT等の経時的評価がEPSの早期発見に重要と考えられた.
  • 水間 紘子, 山口 宗大, 本間 哲也, 大田 進, 楠本 壮二郎, 山本 真弓, 田中 明彦, 大西 司, 相良 博典
    2018 年 78 巻 6 号 p. 703-710
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    市中感染型methicillin-resistant Staphylococcus aureus (CA-MRSA)感染による敗血症性肺血栓塞栓症の1例を経験した.症例は生来健康な19歳男性で39℃台の発熱と右鼠径部の自発痛を訴え近医受診し,胸部CTにて空洞を伴う多発結節影を認め当院紹介受診した.臨床症状や血行性に分布した画像所見より,右大腿部骨髄炎と敗血症性肺血栓塞栓症を疑い,喀痰や血液培養検査を施行しMRSAを検出した.従来の院内発症型MRSA(HA-MRSA)感染症のリスク因子を認めずCenters for Disease Control and Prevention (CDC)が示すCA-MRSA感染症の定義を満たした.PVL遺伝子の検出を認めCA-MRSAによる敗血症性肺血栓塞栓症と診断した.診断後,リネゾリド(Linezolid LZD)を投与し症状は10日で消退し,その後3か月の加療で肺病変も消失した.本例は今後増加が予想されるCA-MRSA感染症であり,早期の抗MRSA薬の投与にて治癒した症例である.
  • 平井 尚子, 榊 惠子
    2018 年 78 巻 6 号 p. 711-716
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    精神科慢性期病棟A病棟は,1年以上の長期入院患者が約64%を占めており,この現状を改善すべく2015年度より多職種による退院支援強化の取り組みを開始した.本研究は5年8か月に及ぶ長期入院生活のなか,自宅退院に向けて援助を継続した事例である.退院への不安を抱える長期入院患者B氏の地域移行が,多職種連携による取り組みにより実現した.この取り組みにどのようなエッセンスや効果があったのか,退院支援の実践結果を明らかにし,今後の長期入院患者に対する退院支援への課題を検討する.効果的な支援のエッセンスを抽出したところ「フォーミュレーション」「自己効力感へのアプローチ」「退院支援ミーティング(第三者としての医療スタッフの加入)」「再入院の保障」の4つとなった.長期入院のB氏は病院という環境への慣れから持てる能力を十分発揮しているとは言えない状況であった.しかし,退院したいという意向を大事にして,多職種で各々の職種の特色を生かして支援することにより,B氏を退院に導くことができた.さらに長期入院患者の多職種退院支援の4つのエッセンスを今後の支援に向けた指標として明らかにすることができた.本事例では,第3者である医師の後押しが保護的な環境からの脱却の契機になっていたが,こうした第3者性をどのように活用していくかが今後の課題である.本研究における多職種とは,医師,看護師,精神保健福祉士,作業療法士,薬剤師,退院支援相談員のことである.
  • 竹ノ下 祥子, 龍 家圭, 山崎 太義, 肥田 典子, 三邉 武彦, 外谷 衣都子, 佐々木 哲哉, 内倉 健, 小林 真一, 内田 直樹
    2018 年 78 巻 6 号 p. 717-725
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー
    人を対象とした侵襲介入を伴う臨床研究において,モニタリングが必須となったが,その手法は定着していないのが現状である.われわれは,麻酔科で実施された臨床研究のモニタリングの機会を得て,研究計画書作成段階から研究責任者とモニタリング計画について協議し,効率よいモニタリングが実施出来たので,その1例を報告する.モニタリングは科学性の担保のみならず,倫理性,安全性の担保も重要であることを踏まえ,リスクや試験に及ぼす影響を考慮し,モニタリング内容は同意取得状況,データ取得状況,割付治療の適切性,重篤な有害事象の有無を中心とした.またデータ取得漏れのないようワークシートの活用について提案した.仮に試験実施に問題があっても早急に改善してその後の試験が進められるよう,1例目エントリー直後速やかにモニタリングを実施し,その後は目標症例の半数実施後,全症例終了後に症例をサンプリングしてモニタリングを行うこととした.研究責任者と終始良好なコミュニケーションがとれ,モニター教育が十分なされたのみならず,研究者へのモニタリングに関するノウハウの提供にもつながり,相互教育が実践できた.臨床研究の支援の一つとしてモニタリングによる質の担保に貢献したい.
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