昭和学士会雑誌
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79 巻, 3 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
特集:脊椎外科学の進歩
講演
資料
  • 成島 道昭
    2019 年 79 巻 3 号 p. 371-375
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/08
    ジャーナル フリー
    昭和大学横浜市北部病院人間ドックにおける肺がん検診の現状についての調査を行った.対象は2006年4月から2018年3月までの期間で肺がん検診を受診した2,275名(男性1,728名,女性547名)で,要精検率は3.8%(87名/2,275名),精検結果判明率63.2%(55名/87名),発見肺がん数6名(胸腺腫,原発不明癌 各1名含む),切除肺がん数4名(胸腺腫1名含む),Ⅰ期肺がん数3名,肺がん疑い濃厚かつ診断未確定7名(胸腺腫疑い,悪性胸膜中皮腫疑い 各1名含む)であった.また精検受診率は87名中78名(89.7%),がん発見率は2,275名中4名(0.18%),精検による陽性反応的中度は86名中4名(4.7%)であった.これらは胸部X線検査による肺がん検診の全国集計平均値と比べ,いずれも高い数値であり,当院肺がん検診の有用性の高さが示された.
原著
  • 岡本 圭司, 安田 知弘, 西中 直也, 三邊 武幸, 神崎 浩二, 泉﨑 雅彦
    2019 年 79 巻 3 号 p. 376-383
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/08
    ジャーナル フリー
    腱板断裂によって肩関節の可動域の減少や回旋筋群の筋力低下をきたす.腱板は回旋筋群の筋腱で構成されており,その断裂により回旋方向における肩関節の位置感覚異常が起こる可能性は排除できない.これまでに腱板断裂後の位置感覚に関する報告はなく,さらには回旋筋群が肩関節の位置感覚に関与するかどうかの報告もない.そこで,本研究では,健常男性16名を用い,肩関節の外旋筋または内旋筋に対し,それぞれの筋紡錘を刺激する80Hzの振動刺激を与え,回旋方向における肩関節の位置感覚異常が生じるか検討した.肩関節位置計測器で被験者の右肩関節の回旋方向の位置感覚を測定した.視覚的に把握できる模擬手の位置に被験者には見えない自分の右腕の位置を回旋方向に一致させる試験を行い,模擬手の位置と右腕の位置の角度誤差を評価した.右腕は上腕と前腕が一体となって動くよう,右肘関節を曲げないようにした.被験者は右肩関節を用いて右腕全体を動かした.マッチングの目標となる模擬手の位置は回旋方向に5段階設定した.この結果,外旋筋へ振動刺激を与えると,自分の腕,すなわち肩関節が実際よりも内旋方向にあるという位置錯覚が生じた.一方,内旋筋へ振動刺激を与えると,自分の腕,すなわち肩関節が実際よりも外旋方向にあるという位置錯覚が生じた.肩関節の回旋筋群に筋紡錘を刺激する振動刺激を与えると,回旋方向における肩関節の位置感覚異常が生じることが明らかとなり,回旋筋群が肩関節の位置感覚に寄与することが示された.
  • 大下 優介, 八木 敏雄, 平林 幸大, 石川 紘司, 江黒 剛, 逸見 範幸
    2019 年 79 巻 3 号 p. 384-388
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/08
    ジャーナル フリー
    登山ブームに伴い富士登山を楽しむ方が増えてきている.しかし登山に伴い受診を要する疾患についての報告は多くない.そのため当院に受診した症例を調査し今後の予防と対策を検討した.2018年の富士山の登山シーズンに受診された症例を後ろ向きに検討した.受診された症例は24名(男性10名,女性14名)であった.平均年齢は48歳(16歳~73歳)であった.受傷患者の富士登山経験回数は初回が13人(54.2%)であり,1~3回目が6人(25%),4~5回目が1人(4.2%),10回以上が4人(16.7%)であった.登山のレベルの自己評価では16人(66.7%)が初心者,5人(20.8%)が中級者,3人(12.5%)が上級者と答えた.また16人の初心者の内3人(12.5%)は登山そのものが初めてであった.受傷時の疲労度は,「とても疲れていた」6人(25.0%),「やや疲れていた」10人(41.7%),「やや余裕があった」2人(8.3%),「十分余裕があった」6人(25.0%)であった.当院に受傷された症例は,登山初心者が,疲れている状態で受傷されていた.
  • 松坂 貫太郎, 緒方 浩顕, 山本 真寛, 伊藤 英利, 竹島 亜希子, 加藤 雅典, 坂下 暁子
    2019 年 79 巻 3 号 p. 389-396
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/08
    ジャーナル フリー
    血液透析患者では,摂取不足,腎での生合成の減少や透析療法による除去などのためにカルニチンが極めて高頻度で欠乏すると報告されており,カルニチン欠乏がさまざまな腎不全合併症(エリスロポエチン抵抗性貧血,低左心機能や筋痙攣等)に関与することが想定されている.本研究ではカルニチン代謝障害の実態を検討するため,カルニチン静脈投与の有効性を検証する前向き観察研究(「透析患者の合併症に対するL-カルニチン静注製剤の有効性の検討」)に登録された昭和大学横浜市北部病院およびその関連施設の外来血液透析患者501名に対して,血中カルニチン分画を測定し,その関連因子を横断的に検討した.主要評価項目として遊離カルニチン(Free)濃度とアシルカルニチン濃度/Free濃度(A/F比)を解析した.Free濃度を3群間(充足群(36≦Free≦74µmol/l),不足群(20≦Free<36µmol/l),欠乏群(Free<20µmol/l))に分類したところ,充足群は全体のわずか8.4%であり,A/F比も>0.4が98.8%と,ほとんどの患者がカルニチン代謝障害を合併していた.Free濃度とA/F比それぞれに関連する因子を多変量解析で検討したところ,カルニチン代謝障害と血清尿素窒素濃度(SUN),透析歴,性別,アルブミン,リンや標準化タンパク異化率(nPCR)との間に有意な関連がみられた.一方,血液透析療法の差異(血液透析と血液ろ過透析)は,カルニチン代謝障害に関連していなかった.興味深いことに,ともに栄養状態,タンパク摂取状況の指標とされるSUNとnPCRがFree濃度との関連では全く反対の関連性を示したことである.透析患者におけるカルニチン代謝障害の病態生理について更なる検討が望まれる.
症例報告
  • 宮部 真以, 古賀 康史, 張 卓, 山内 日香里, 住永 莉華子, 門松 香一
    2019 年 79 巻 3 号 p. 397-402
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/08
    ジャーナル フリー
    本邦においては,母指多指症は通常1歳前後で初回手術を行う.今回われわれは6歳で初回手術を行った両側中手骨型母指多指症という稀な症例を経験したので報告する.症例は6歳,男児.生下時より両側母指多指症(Wassel分類:右Ⅵ型,左Ⅴ型)を認めていたが1か月健診以降医療機関の受診はなく,5歳8か月時に当科初診し6歳時に形成術を行った.右側は低形成である尺側指を切除した.術前よりみられていた指節間関節の尺側偏位が残存しており機能的および整容的両面で問題が存在するため,今後骨切りによる指軸矯正を行うか検討中である.左側は尺側指を温存し,橈側指から短母指外転筋を移行した.左側の術後経過は良好である.乳幼児期での治療に比べ,手術手技や周術期の評価は容易であったが,患児の運動発達や心理社会的側面を考慮し,適切な時期に手術を行えるように啓蒙が必要であると考えられた症例であった.
第351回昭和大学学士会例会(保健医療学部会主催)
第352回昭和大学学士会例会(医学部会主催)
第353回昭和大学学士会例会(アーツ・アンド・サイエンス部会主催)
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