昭和学士会雑誌
Online ISSN : 2188-529X
Print ISSN : 2187-719X
ISSN-L : 2187-719X
82 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
講演
原著
  • ―前期高齢者と後期高齢者の比較―
    弓桁 亮介, 山内 里紗, 刑部 慶太郎, 堀川 浩之, 村田 加奈子, 稲葉 康子, 鈴木 浩子, 中山 香映, 池田 亜由美, 宮下 ま ...
    2022 年 82 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
    ジャーナル フリー
    本研究は地域在住の高齢女性の体脂肪および筋肉分布の推移を前期高齢者と後期高齢者の比較から明らかにすることを目的とした.被検者は,山梨県A市在住の高齢女性131名とした.被検者を年齢により,前期高齢者群(EG:65歳以上75歳未満)87名,後期高齢者群(LG:75歳以上)44名に分類した.被検者の体重,体脂肪率,総体脂肪量,総筋肉量,身体部位別の体脂肪量および筋肉量の測定,内臓脂肪レベルの判定は,生体電気インピーダンス法により実施した.身体組成では,体脂肪率および内臓脂肪レベルでEGよりLGの方が有意に高値を示し,総筋肉量ではEGよりLGの方が有意に低値を示した.身体部位別の体脂肪量の比較では,体幹部でEGよりLGの方が有意に高値を示した.総体脂肪量に占める身体各部の体脂肪量の割合において,体幹部および腕部ではEGよりLGの方が有意に高値を示し,脚部ではEGよりLGが有意に低値を示した.また,体幹部体脂肪量と内臓脂肪レベルの間に有意な相関関係がみられた.一方,身体部位別の筋肉量の比較では,体幹部および脚部でEGよりLGの方が有意に低値を示した.総筋肉量に占める身体各部の筋肉量の割合において,体幹部,腕部および脚部のすべての部位でEGとLGの間に有意な差異はみられなかった.これらの結果から,EGとLGでは体脂肪分布に違いがみられ,EGに比べLGの方が上半身に体脂肪が多く分布していることが明らかになった.また,両群の体脂肪分布の違いには内臓脂肪量が影響していると考えられた.一方,筋肉分布ではEGとLGに違いがみられず,両群の筋肉分布は同様であることが明らかになった.
  • —復職後の助産観と助産援助に焦点をあてて—
    水井 美生, 下平 和久
    2022 年 82 巻 2 号 p. 63-74
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
    ジャーナル フリー
    妊娠・出産・育児経験が,育児休業を取得し復職した助産師の,助産観と助産援助にどのような変化をもたらしたのかを明らかにすることを目的とする.対象者は育児休業取得後にA大学関連病院に復職した助産師10名とした.データ収集は,インタビューガイドを用いた半構造化面接を1回行い,育児休業取得後に自身の持つ助産観の変化の有無やその要因と思われるエピソード,助産援助の変化の有無とその要因と思われるエピソードについて自由に語ってもらった.得られたデータを質的記述的に分析した.昭和大学保健医療学部倫理委員会の承認を受け実施し,調査期間は2018年3月〜7月である.対象者10名の年齢は,29〜36歳であり,助産師経験年数は5〜13年だった.10名のうち看護師経験のあるものは5名で,経験年数は1〜2年であった.育児休業取得後の助産師の語りから,妊娠・出産・育児経験が助産師にもたらした変化として24のコード,12のサブカテゴリーカテゴリー,【対象が抱く想いへの理解】【分娩期の助産援助の深まり】【母乳育児に対する助産師の想い】【体験を活かした授乳指導の充実】【母乳育児に関する意欲の向上】【助産師という職業への想い】の6カテゴリーが抽出された.妊産褥婦の追体験や分娩体験の肯定的な意味づけから,対象が抱く想いの理解を深め,母乳育児経験や助産師へのニーズを把握することで母乳育児への想いを強めるとともに,助産援助方法は多面的に変化していた.また,復職後の就業条件の変化から新しい分野への学習意欲が生まれる一方で,すでに形成された職業的アイデンティティは高揚するという変化がみられた.今後,育児と就業を両立し,自己効力感を高めキャリア発達していく個別性ある方策についての検討の必要性が示唆された.
  • —相互交流的リーズニング実践のプロセス—
    内堀 謙吾, 鈴木 久義, 渡部 喬之, 千賀 浩太郎, 長島 潤
    2022 年 82 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,臨床場面で作業療法士が相互交流的リーズニングを活用し,どのように対象者と協業的な関係性の構築に至るのか,そのプロセスを明らかにすることである.作業療法士の経験年数,所属する組織,作業療法の実施時間を考慮し選定した作業療法士5名に半構造化面接を行い,収集したデータを,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて質的帰納的に継続的比較分析を行った.299のデータから,7個のカテゴリー,20個のサブカテゴリーが生成された.協業的な関係性の構築に至るプロセスは,関係性の構築の手掛かりとなる【関わるきっかけとなる言動】への対応から始まり,【フィードバックを受けた経験】や【同僚作業療法士の介入を見た学び】に影響を受けながら,作業療法士の【客観的な判断に基づく関わり】や【優しく人間味のある関わり】のもと,【対象者と経験と目標の共有】を行い,【ともに歩んでいく関係性の構築】に至るプロセスであることが判明した.作業療法士は,どんな言動も【関わるきっかけとなる言動】だと認識しており,それは対象者をどのように支援していくのかという作業療法士の自己への対峙が関係の始まりに影響していると推察される.関係を形成する段階では,医療者側の視点に比重が置かれた【客観的な判断に基づく関わり】と人間的な関わりに視点に比重が置かれた【優しく人間味のある関わり】の2つの異なる関わりから対象者を理解していたと推察される.関係を強化する段階では,【対象者と経験と目標の共有】を行い,意思決定に対象者と共に関わる事が,対象者を作業療法実践の参加に導き【ともに歩んでいく関係性の構築】に至ると推察される.このように作業療法士と対象者の協業は,段階的なプロセスにより構築されると推察される.
  • 田中 有咲, 中川 茜里, 富田 秋沙, 幾瀨 大介, 西川 晶子, 内田 直樹, 岩波 明
    2022 年 82 巻 2 号 p. 86-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
    ジャーナル フリー
    自閉スペクトラム症(Autism Spectrum disorder:ASD)と注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)は,基本的な病態機序が異なる疾患と考えられてきた.しかし実際の臨床現場においては両者の特徴をもつ症例が少なからず存在し,2013年のDSM-5改訂においてASDとADHDの併記が可能になった.ASD患者の多くはADHD患者と同様の注意障害を示し,ADHD患者は自閉症症状を呈することも多い.両疾患の相違点や類似点を鑑別することは成人期発達障害の早期介入に不可欠であるが,自己記入式評価尺度を用いて臨床症状の検討をした論文は少ない.本研究では,両者の臨床的な相違点や類似点を検討するため,成人期ASD,ADHD,および定型発達成人において,自閉症症状の程度を評価する自閉症スペクトラム指数(Autism-Spectrum Quotient:AQ)とADHD症状の程度を評価する自己記入式のコナーズ成人ADHD評価スケール(Conners’ Adult ADHD Rating Scales:CAARS)を用いた自記式の評価尺度を用いて,臨床症状の比較を行った.昭和大学病院附属東病院の精神神経科を外来受診し,DSM-5によって診断されたASD 30名およびADHD 31名と精神科通院歴がない定型発達成人 32名を対象とした.その結果,AQは,ASD群で最も高く,定型発達群,ADHD群に比べて有意に高かった.ADHD群においても,定型発達群に比べて有意に高かった.CAARSの下位項目(不注意・多動性・衝動性)のスコアは,いずれもADHD群で最も高く,ASD群においても,不注意・多動性・衝動性のいずれで定型発達群に比べて有意に高かった.このようにASDにおいてもADHD特性を認め,また反対にADHDにおいても自閉症症状を呈することが判明した.このように,両疾患は臨床症状が類似することで診断が困難になることも多く,さらに双方の疾患特性に関して生活歴や現病歴の聴取,診察時の現症から検討を進める必要があると考える.
症例報告
  • 松延 武彦, 髙木 信介, 黒田 正義
    2022 年 82 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
    ジャーナル フリー
    頭部の皮膚は伸展性が乏しいため,広範囲の頭部皮膚欠損では局所皮弁と植皮,または遊離皮弁による再建を行い,後日エキスパンダーによる有毛部再建が行われることが多い.今回,われわれは自傷行為による前頭部皮膚欠損に対してシューレース法と陰圧閉鎖療法を併用したvacuum assisted shoelace techniqueと浅側頭動脈島状皮弁による一期的再建を行った.術後6か月経過時点で良好な経過を得られたため,若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 香月 健亮, 髙木 信介, 門松 香一
    2022 年 82 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
    ジャーナル フリー
    軟骨腫において顔面部に発生する報告は極めて稀である.今回われわれは,大鼻翼軟骨に発生した軟骨腫の1例を経験したので報告する.症例は,69歳女性で,左鼻腔閉塞を主訴に来院した.腫瘤は,左鼻翼皮下から触知可能で,腫瘍による左側鼻腔の完全閉塞を来していた.MRI所見では,左鼻翼より発生し,左鼻腔に充満する腫瘍性病変を認めた.鼻柱鼻孔縁切開によるアプローチで大鼻翼軟骨を十分に展開し,腫瘍の摘出を行った.病理組織学的検査を行い,軟骨腫と診断した.術後1年3か月を経過し再発を認めず,鼻翼,鼻孔の左右差を認めない.軟骨腫は,良性腫瘍だが,局所再発や稀に悪性化の報告もある.また,鼻翼など整容性に関わる部位では,術後,継時的に形態異常が起こる可能性も考慮して中長期的な経過観察が必要である.
臨床報告
  • 佐藤 裕二, 七田 俊晴, 古屋 純一, 畑中 幸子, 内田 淑喜, 大澤 淡紅子
    2022 年 82 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
    ジャーナル フリー
    口腔機能低下症の診断基準は年齢によらず一定であるため,中年では年齢に相応しい口腔機能がなくても,口腔機能低下症と診断されず,超高齢者では歳相応以上の口腔機能であっても,「口腔機能低下症」と診断されるという問題点がある.そこで,年齢に応じた指導・管理を行うために,患者の口腔機能が何歳に相当するかという指標(口腔機能年齢)を提案することを目的とした.対象者は当科を受診し口腔機能に違和感を訴えたものと厚労省の委託事業に参加した13大学の患者資料の合計316名(男性130名,女性186名,平均年齢75.7歳)である.口腔機能低下症の検査結果と年齢との散布図から,相関係数と回帰直線を求めた.各検査項目の年齢平均値をもとめ,個々の患者の検査値との差から,相当年齢を算出する手法を開発した.実年齢と有意な相関があった検査項目は,咬合力,残存歯数,オーラルディアドコキネシス(パ,タ,カ),舌圧,咀嚼能力であった.これらの検査項目の結果から口腔機能年齢がわかる計算式(エクセルシート)を開発した.口腔機能年齢(お口年齢)を簡単に算出するシステムを作成した.それにより,検査項目のポイントを絞って,患者の記憶に残りやすい指導の助けになり,口腔機能低下症検査の普及に貢献できる可能性が示唆された.
第68回昭和大学学士会総会
第377回昭和大学学士会例会(薬学部会主催)
第378回昭和大学学士会例会(医学部会主催)
feedback
Top