慢性閉塞性肺疾患(COPD)および気管支喘息の外来患者を対象に,薬剤師が吸入手技を評価し指導する継続的な吸入指導を行い,吸入手技や臨床効果へ与える影響について検討を行った.同意の得られた外来患者を対象に,保険薬局にて吸入手技評価,アドヒアランスや自覚症状に関するアンケート,ピークフロー(peak expiratory flow:PEF)値および経皮的動脈血酸素飽和度(percutaneous arterial oxygen saturation:SpO
2)の測定を継続的に各患者あたり4回実施した.解析対象患者は99名(COPD 24名,気管支喘息75名)であった.初回指導時の吸入手技は,「吸入」手技をはじめとした一部の手技において,喘息に比較しCOPDで手技不良者が有意に多かった.指導2回目以降,手技不良者の割合は指導回数に伴い多くの項目で減少したが,一部項目の不良率低下は限定的であり,年齢(70歳以上)の影響が示唆された.またデバイス別では,介入前の手技評価でドライパウダー製剤が高い傾向にあったが,介入によってデバイス間の違いは小さくなった.吸入薬の吸い忘れの割合は,COPDでは指導回数に伴い減少したが,喘息患者では介入による影響はみられず,病態や薬物治療に関する患者教育もあわせて必要と考えられた.臨床効果では,自覚症状に改善がみられたほか,いずれの疾患においても介入によりPEF値が有意に増加した.SpO
2値は喘息患者のみで有意な上昇がみられた.本研究により,吸入療法を継続中の患者に対し薬剤師が継続的に吸入手技を評価し指導することにより,薬剤を変えることなく,患者の吸入療法に有意な改善をもたらすことが示された.しかしながら,その改善の程度や速さは,疾患,年齢や吸入デバイスにより異なることが示唆され,患者の疾患特性に応じて,疾患や手技の教育をさらに追加する必要があると考えられた.
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