人工肘関節置換術は,肘関節の除痛及び機能再建に有用な手段のひとつである.Kudo人工肘関節は,日本及びに欧州で最も広く使用されている表面置換型人工肘関節であり良好な長期成績が報告されている.しかし,時として尺骨側コンポーネントにゆるみが生じ再手術が必要になる事がある.これは上腕骨側よりも尺骨側で骨に対する負荷が大きい可能性が示唆されるが,尺骨コンポーネント周囲の応力に関して生体力学的評価は十分にされていない.今回,術前計画,手術手技,患者の術後指導の参考とすることを目的に,Kudo人工肘関節を対象とし,CT画像に基づく個体別有限要素モデルを用いて人工肘関節の尺骨コンポーネント周囲の骨に生じる応力を有限要素法を用いて測定する新しい手法を用いて本研究を行った.患者のCT画像を元にコンピューター上で人工肘関節を挿入した3D CTモデルを作成し,そこに筋骨格モデルシミュレーションシステムを用いて算出した筋力及び関節反力を境界条件として有限要素解析を行った.尺骨鉤状突起内側にもっとも高い応力とひずみが生じた.人工肘関節術後に一般的に得られる可動域である肘屈曲30°から130°の範囲では3,000µ以上のひずみを生じることはなかった.至適位置にインプラントを設置した場合,Kudo人工肘関節は生体力学的観点からも良好な結果が得られた.今後ステムの挿入角度など尺骨コンポーネント周囲の骨の応力に変化を生じさせ得るさまざまな要因についての解析・検証が必要と考えられた.
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