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82 巻
(2022)
1 号
p.
11-18
身体失認を呈した脳損傷患者における開閉眼時の姿勢制御の特徴
阿部 真理奈, 鈴木 久義, 渡部 喬之, 迫 力太郎, 本島 直之, 長島 潤
身体失認は,脳卒中後に出現する病態であり「私の身体は私のものである」といった自己の身体所有の意識の損失を示す高次脳機能障害である.身体失認は,姿勢制御を含む運動制御にも影響を及ぼす要因であると考えられている.しかし,身体失認と姿勢制御との関連について定量化した研究は無い.本研究の目的は,身体失認を呈した脳損傷患者における開閉眼時の静止立位の特徴を明らかにすることとした.脳損傷患者45名を対象とした.課題は開閉眼時の静止立位を30秒間行い,身体動揺は足圧分布計を用いて総軌跡長を測定した.測定肢位は対象者の肩幅程度の開脚立位とし裸足で実施した.また,身体失認の有無は行動観察,対象者の内省で評価し,身体失認の有無の2群間で統計学的解析を行った.データ解析には,脳損傷患者の開閉眼時の総軌跡長を比較するためにWilcoxon符号付順位和検定を用いた.さらに,身体失認あり群と身体失認なし群は開閉眼時の総軌跡長とロンベルグ率を比較するためMan-WhitneyのU検定を用いた.有意水準は5%に設定した.身体失認あり群は15名,身体失認なし群は30名であった.脳損傷患者全体では閉眼時の総軌跡長は開眼時に比べて有意に延長した(p<0.01).また,身体失認あり群は身体失認なし群よりも開閉眼時それぞれの総軌跡長が有意に延長した(p<0.01).さらに,身体失認あり群は身体失認なし群よりも総軌跡長のロンベルグ率が有意に増大した(p<0.01).身体失認あり群は,身体失認なし群に比べ姿勢制御が低下し,開閉眼時の差が大きい傾向にあった.
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2023年度昭和大学学士会学術奨励賞受賞論文です。その他の受賞論文(英文)は、こちらからご覧ください。https://www.jstage.jst.go.jp/browse/sujms/-char/ja
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82 巻
(2022)
4 号
p.
285-295
Hirschsprung病腸管の神経節細胞の局在についての免疫組織化学的検討
福永 奈津, 亀山 香織, 本間 まゆみ, 佐々木 陽介, 根本 哲生, 渡井 有, 矢持 淑子
ヒルシュスプルング病(以下HD)は消化管の粘膜下神経叢(Meissner神経叢)と筋層間神経叢(Auerbach神経叢)の神経節細胞の先天的欠如が原因で機能的腸閉塞をきたす疾患である.今日行われているHD根治術は肛門から連続する病変部を切除し,正常腸管と肛門を吻合する方法である.術中には正常と思われる腸管組織を迅速診断に提出し,神経節細胞の数や有無を確認して切除範囲を決定する.しかし正常部の神経節細胞の数や術中迅速診断の方法は規定されておらず,切除範囲を決定する基準がないのが現状である.今回,効率的な術中迅速診断をするために必要となるHD腸管の神経節細胞の局在や吻合部の細胞数を明らかにすべく,病理組織学的に検討した.対象は昭和大学病院および昭和大学横浜市北部病院小児外科で手術を行ったHD症例9例である.切除腸管の全割標本を作製し,Hu C/Dの免疫染色を用いて神経節細胞数や分布を検討した.自験例では生後2-4か月のHD患者の吻合部腸管のMeissnerとAuerbach神経節細胞数はそれぞれ93.77±20.9個/cm,110.3±23.0個/cmであった.無神経節腸管が10mm以下の2例では神経節細胞は全周性に同じ高さから分布していたが,無神経節腸管が33mm以上であった5例は腸間膜側よりも対側でより肛門側まで神経節細胞が認められる傾向にあった.また腸間膜対側で神経節細胞が100個/cm以上認められても腸管膜側では神経節細胞が見られない症例が3例見られ,そのうち1例は口側断端の腸間膜側約30%が無神経節腸管であった.術中迅速診断では腸間膜側と対側の複数か所の組織をし,神経節細胞の分布に不均一性がなく,Auerbach神経節細胞数が100個/cm以上ある腸管を正常腸管とみなすことで過不足なく病変部を切除することができると考える.
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