昭和学士会雑誌
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特集号: 昭和学士会雑誌
73 巻, 1 号
特集:遺伝性乳がん・卵巣がん
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • —塩基性線維芽細胞増殖因子の瘢痕拘縮抑制効果について—
    伊藤 奈央, 三川 信之, 檜垣 浩一, 吉本 信也
    2013 年 73 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor,以下bFGF)は創傷治癒を促進し迅速に表皮化させるだけでなく,瘢痕拘縮を予防することが報告されている1)一方,人工真皮は,コラーゲンスポンジが真皮組織構築の足場として血管内皮細胞や線維芽細胞を誘導し,真皮様組織を形成するため,しばしば皮膚欠損創に用いられる.今回われわれは実際の臨床例において,皮膚欠損創に人工真皮を貼付しbFGF製剤を噴霧した肉芽組織を採取後,病理組織学的検討を行い,bFGFの瘢痕拘縮の抑制効果について検討した.皮膚欠損創10例に対して,デブリードマン後,人工真皮を貼付し,同一創内でbFGF製剤併用群と非併用群にわけ,約2週間後に母床の肉芽組織を採取し,病理組織学的検討を行った.それぞれの母床組織においてα-Smooth Muscle Actin(以下α-SMA)による免疫染色を施行し,単位面積あたりのα-SMA陽性細胞数を算出し,統計学的に検討した.2群間の比較を行ったところ,併用群においてα-SMA陽性細胞数は減少していた(p=0.0236).人工真皮とbFGFを併用することで創傷治癒過程における瘢痕拘縮の予防につながる可能性が示唆された.
  • 太田 創, 大槻 克文, 大場 智洋, 徳中 真由美, 澤田 真紀, 長谷川 潤一, 松岡 隆, 岡井 崇
    2013 年 73 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    早産予知を目的とした子宮頸管長計測の有用性は周知のことであるが,本邦における大規模データは皆無に等しい.そこで日本人の妊娠中期の平均頸管長を求め,さらに頸管長計測が切迫早産症例のscreening検査として有用か否かを検討する目的で本研究を行った.2008年1月から2011年12月に当院で妊娠初期からの健診と分娩管理を行った単胎1184例を対象とした.患者情報および妊娠16~19週と20~24週の頸管長データと分娩予後を周産期データベースと診療録から後方視的に調査した.本研究は院内の倫理委員会の承認を得て実施した.対象全体の平均子宮頸管長は40.1±7.4(mean±SD)mm(16~19週)と38.2±7.8mm(20~24週)で,平均分娩週数は38.6±2.4(mean±SD)週,早産率は5.9%,35週未満早産は2.4%だった.経産婦,早産既往,中絶歴,BMI<18.5で20~24週の頸管長に短縮傾向を認めた.35週未満の分娩の有無で平均頸管長を比較すると37.1±8.9mm v.s. 40.2±7.3mm*(16~19週)と32.7±12.6mm v.s. 38.3±7.6mm*(20~24週)であった(*p<0.05).頸管長のcut off値を諸外国でよく用いられている25mmとすると,妊娠16~19週と20~24週における35週未満早産の相対リスク(95%CI)はそれぞれ,5.8(1.5~22.1),7.4(3.3~16.4)であり,感度は6.9%,24.1%,特異度は98.9%,96.4%,陽性的中率は13.3%,14.3%であった.35週未満の早産例で妊娠20週未満と以後の両方の頸管長に統計学的に有意な短縮傾向を認めた.頸管長のカットオフ値を25mmにすると,カットオフ値未満の症例では早い週数に分娩になる傾向を認めた.しかし早産に関する感度と陽性的中率は共に低く,頸管長計測は早産ハイリスク症例抽出の一助にはなるが,頸管長のみによるスクリーニングでは不十分で,早産予防の取り組みにおいては他の関連因子も合わせて検討することの重要性が示唆された.
  • 藤居 直和, 川口 顕一郎, 中村 泰介, 五味 渕寛, 嶋根 俊和, 三邉 武幸, 洲崎 春海
    2013 年 73 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍の治療は,手術療法が第1選択となる.しかし,耳下腺内には顔面神経が走行しており手術後に顔面神経麻痺の可能性があるため,患者側も手術をためらうことがある.病理組織像も多彩で,術前に診断をつけるのが困難な場合も少なくない.今回われわれは,2002年4月から2007年3月までの5年間に,当科で治療を行った耳下腺腫瘍84例について年齢,性別,病理組織,病悩期間,腫瘍の大きさ,腫瘍の局在,術後合併症,さらに症例数の多かった多形腺腫,ワルチン腫瘍について検討を行ったので報告する.全体の平均年齢は55.5歳,性別は男性43例(51.2%),女性41例(48.8%)であり,良性腫瘍が80例(95.2%),悪性腫瘍が4例(4.8%),病理組織学的分類では,多形腺腫29例(34.5%),ワルチン腫瘍35例(41.6%)であった.腫瘍の大きさは,8mmから92mmで平均29.7mm,腫瘍の局在では,浅葉55例(65.5%),深葉29例(34.5%)であった.合併症は,顔面神経麻痺14例(16.7%),唾液瘻10例(11.9%),フライ症候群1例(1.2%),合併症率25例(29.8%)であった.多形腺腫とワルチン腫瘍の比較では,多形腺腫の方が平均年齢が低く,女性に多く認められ,ワルチン腫瘍は平均年齢が高く,男性に多く認められた.病悩期間はワルチン腫瘍の方が長く,大きさもワルチン腫瘍の方が大きかった.腫瘍の局在は,多形腺腫が浅葉に多く認めるのに対し,ワルチン腫瘍では浅葉と深葉に明白な差を認めなかった.術後合併症には両腫瘍に差は認められなかった.
  • 平林 幸大, 齊藤 光次, 山岡 桂太, 河村 陽二郎, 磯崎 正典, 楯野 英胤, 諸星 利男, 草場 敦, 渥美 敬
    2013 年 73 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    急速破壊型股関節症(Rapidly Destractive Coxarthropathy (以下RDC))は,1970年にPostelらが1年以内に大腿骨頭,ひいては股関節の高度な破壊を起こす疾患の総称として報告して以降,これまでに多くの検討がなされてきたが,病態について未だ不明な部分が多い.今回われわれはRDCで手術を要した症例を臨床経過によって分けその病理学的特徴を比較検討した.初診時より半年未満で手術に至った症例を急性型,半年以上経過してから手術に至った症例を亜急性型とし,病理組織学的に比較検討した.Osteonecrosisは両群でほぼ同等に認められ,Loose fibrosisおよびDetritic synovitisは亜急性型に多く認められた.RDCでは骨壊死を含む退行性病変は初期より発生し,経過とともにその周辺に線維性結合織の増生(線維化)などの組織反応を伴った骨梁修復(再生)が起きると考えられ,病相進展の早急に関連して,急性型および亜急性型の組織像が表現されると考察された.なお,逆に線維性組織反応を起こすことにより大腿骨頭の圧潰が抑制させられる可能性も考えられ,今後は慢性経過をたどる疾患との比較が必要と考えられた.
  • 大野 香代子, 福井 智康, 友安 雅子, 樋口 明子, 伊藤 利香, 平野 勉
    2013 年 73 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    近年,新しく使用可能となった経口糖尿病薬であるDipeptidyl Peptidase-4 (以下DPP-4)阻害薬は,DPP-4を選択的に阻害しインクレチンと称されるGlucagon-like peptide-1やGastric inhibitory polypeptideの濃度を高めることによって,血糖依存的に血糖低下作用を発揮させる薬剤である.これまで経口糖尿病薬を内服中の2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬併用後の有効性を予見できる因子は明らかとなっているが,インスリン治療中の2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬併用療法に関しては有効性に影響する患者背景について充分な検討がなされていない.そこで今回われわれは,インスリン治療を行っている2型糖尿病患者を対象にシタグリプチンを12週間追加投与し,有効性に影響する患者背景について検討した.方法と結果:昭和大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科外来通院中でインスリン治療を行っている2型糖尿病患者49名を対象とし,シタグリプチンを12週間追加投与した.シタグリプチン併用後のHbA1cはベースラインに比べて4週後-0.26%,12週後-0.47%と有意に低下した.ベースラインから12週後のHbA1cの変化量とベースラインの各種パラメーターとの相関関係を解析すると,HbA1cの変化量は年齢,罹病期間,HbA1c,随時血糖値,インスリン使用量/体重,インスリンの注射回数,シタグリプチンの用量と相関関係を認めなかったが,BMI(r=-0.322,p<0.05),C-peptide index (CPI) (r=-0.533,p<0.0005)との間に強い負の相関を認めた.BMIおよびCPIを独立変数,ベースラインと12週後のHbA1cの変化量を従属変数として重回帰分析を行った結果,CPIが有意な説明変数であった.シタグリプチン併用後に重症低血糖は1例も認めず,併用前後で体重の変化を認めなかった.結論:インスリン治療中の2型糖尿病患者におけるシタグリプチン併用は有用であり,有効性の予知因子としてインスリン分泌能を示すCPIが重要である.
症例報告
  • 徳留 卓俊, 嶋根 俊和, 小倉 千佳, 川口 顕一朗, 河村 陽二郎, 下鑪 裕子, 中村 泰介, 五味渕 寛, 小林 斉, 三邉 武幸, ...
    2013 年 73 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    喉頭原発の神経内分泌腫瘍は比較的稀な疾患で,治療後早期にリンパ節転移,遠隔転移をきたしやすいため,長期の経過を経て再発や転移した例は報告が少ない.今回われわれは喉頭蓋に発生した神経内分泌腫瘍が外科的治療後9年経過し原発再発,肺転移をきたしたと考えられた症例を経験したので報告する.症例は65歳女性で,咽頭痛を訴え2002年2月に当科を受診した.喉頭蓋に腫瘤性病変を認めたため,2003年5月に腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的診断は神経内分泌腫瘍の非定型カルチノイドであった.2003年6月に拡大切除のため頸部外切開にて喉頭蓋部分切除術を施行し,その後9年間経過観察していたが再発,転移はなく経過した.2012年6月に喉頭蓋に腫瘤を認め,また胸部造影CTでは両肺野に多発肺結節が散在しており肺転移を疑った.
  • ―高度関節破壊を認めた症例―
    王 興栄, 並木 脩, 豊島 洋一, 稲垣 克記, 山田 裕一
    2013 年 73 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性,15歳より繰り返す痛風発作と両手関節痛を認め,両足関節痛と可動域制限を主訴に当院を受診となった.患者は既往歴に精神疾患と他院での急性腎不全による入院治療歴があった.これらの経緯より,われわれはプリン核酸代謝異常を有する先天的疾患に罹患している可能性を推測した.Hypoxanthine-guanine phosphoribosyltransferase(HPRT)遺伝子(HPRT1)を解析したところ,HPRT1の第2エクソンにGからTへの単塩基置換が認められ,23番目のコドンでアミノ酸がシステインからフェニルアラニンへと置き換わるミスセンス変異(C23F)が判明した.患者赤血球中のHPRT酵素活性は約30%に低下し,adenine phosphoribosyltransferase(APRT)活性の上昇が認められた.以上の結果より,患者はHPRT部分欠損症と診断された.アロプリノール投与により,疼痛と腫脹は軽減されたが,高度な関節破壊は残存した.このような高度関節破壊を伴うHPRT部分欠損症の報告は過去にない.
  • 奥 和典, 藤田 詠子, 高井 綾子, 小幡 輝之, 金田 有里, 大村 梓, 善山 栄俊, 稲村 ルヰ, 吉江 和佳
    2013 年 73 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    14歳の男児が右側脛骨開放骨折後に脂肪塞栓症候群を発症したので,その経過を報告する.右脛骨開放骨折に対して全身麻酔下に洗浄と徒手整復が行われた.麻酔終了後2時間に発熱と軽度の意識障害を認め,急激に呼吸状態が悪化した.意識障害と両側肺野の線状陰影を認め,電撃型脂肪塞栓症と診断し,人工呼吸管理を含む集中治療を施行して治癒し得た.小児例における脂肪塞栓症の発症は稀とされているが外傷後の意識障害,低酸素血漿を認めた際には脂肪塞栓症候群の鑑別も必要であると思われる.
  • 和田 一佐, 池田 純, 稲垣 克記
    2013 年 73 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例は上腕骨外側上顆炎に対し,ステロイド局所注射を含む約2年間の保存療法に抵抗し難治性となり,当科を紹介受診した53歳女性である.画像上,右外側上顆周囲の軟骨融解像と総伸筋腱起始部断裂を認め手術療法を選択し,断裂した短撓側手根伸筋腱の縫合術を行なった.術後約8週で関節水症が再発し,MRIで再断裂の所見を認めた為,Nirschl法にKrackow sutureとsuture anchorを加えた再縫合術を行ない,症状の改善が得られた.上腕骨外側上顆炎は保存療法が奏功する例が多いが,時に保存療法に抵抗し難治性となる.殊にステロイド局所注射の反復で腱断裂をきたすことがあるので注意が必要と思われた.
  • 松岡 彰, 稲垣 克記, 吉村 誠
    2013 年 73 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    Juvenile Tillaux骨折は脛骨遠位骨端前外側のSalter-Harris III型損傷であり,骨端線の一部が閉鎖していない時期に生じるため,比較的稀とされている.本骨折は関節内骨折であるため関節面の正確な整復が重要であり,その治療方針,手術治療に関して様々な報告がされている.本症例は骨片の転位が2mm以上であったため手術治療を,内固定材料にポリ-L-乳酸(poly-L-lacticacid:PLLA)製スクリューを用いて観血的整復固定を行い,正確な整復および骨癒合を得ることができた.今回我々が経験したJuvenile Tillaux骨折1症例の診断,治療,術後経過について報告する.
  • 丸山 博史, 神 與市, 白旗 敏之, 古森 哲, 藤田 昌頼, 石田 育男, 稲垣 克記
    2013 年 73 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    強直性脊椎炎に合併した圧迫骨折に対し,hip spica式の体幹コルセットを用いて骨癒合を得た症例を経験した.症例は58歳,男性.仕事中に出現した腰痛により体動困難となった.他院に搬送されるも,脊椎病的骨折の疑いで当科に紹介された.脊椎病的骨折は否定され,強直性脊椎炎に合併した椎体骨折と診断された.下肢に筋力低下を認めたため,後方固定術を検討したが,心疾患のため心機能が低下しており,保存的治療を選択した.治療は,Hip spica式の体幹コルセットを着用させ,6週間床上安静とし,10週間後より座位保持訓練と歩行訓練を開始した.これにより,骨癒合が得られ,コルセット着用後16週間で独歩にて退院した.強直性脊椎炎は椎体骨折を合併すると,骨折部に応力が集中し,偽関節や,四肢の遅発性麻痺を生じる可能性が高い.このうち筋力低下を併う場合は,外科的治療の適応である.本症例では,骨折部より遠位椎体は一塊となっているため,股関節の動きにより骨折部が不安定になっていた.これに対し自験例は,Hip spica式の体幹コルセットの装着により,体幹部とともに股関節の可動域を制限できたため,保存療法のみで良好な骨癒合が得られたと考えた.
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