昭和学士会雑誌
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特集号: 昭和学士会雑誌
73 巻, 3 号
特集:サイトメガロウイルス(CMV)感染症
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集:サイトメガロウイルス(CMV)感染症
特別寄稿
最終講義
教育講演
原著
  • 日引 太郎
    2013 年 73 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    わが国では,大腸内視鏡検査時に生検鉗子で小さな腫瘍性ポリープを把持・摘除する,いわゆる「鉗子摘除」は比較的簡便に行われている.鉗子摘除は果たして臨床的に有意義な治療手技として成立しているのか,つまり遺残・再発が他の治療手技と比較すると多いのではないか.この疑問について客観的な検証を行うため,当施設で蓄積された大腸内視鏡症例の分析を行った.当施設で施行した大腸内視鏡検査において,次回検査時における同部位のポリープ発見率によってその根治的治療効果を判定し,鉗子摘除,スネアポリペクトミー,ホットバイオプシーの各群で治療効果を比較した.その結果,鉗子摘除による治療効果はスネアポリペクトミー,ホットバイオプシーによる治療効果とほぼ同等であり,臨床的に妥当かつ有用な治療法と考えられた.ポリープを鉗子摘除によって治療する場合は,病変径が生検鉗子径とほぼ同等の3mm以下の小ポリープを生検鉗子で把持・摘除すること,と定義する必要がある.
  • ―道徳的発達段階・倫理的感受性と蓄積的疲労との比較―
    米澤 弘恵, 佐藤 啓造, 石津 みゑ子, 藤城 雅也, 水野 駿, 小渕 律子, 福地 麗, 古谷 卓朗, 入戸野 晋, 廣渡 崇郎, 岩 ...
    2013 年 73 巻 3 号 p. 203-215
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    今日の臨床看護現場では2003年の診療報酬改定に伴う包括払い制度の導入により入退院が増加して看護師は常に多数の重症患者の医療処置と看護を強制されることになり,過重な労働から蓄積的疲労を高めている.看護師の疲労が強ければ強いほど患者を気遣う余裕がなくなり,看護師の倫理観の低下に繋がることが予測される.しかし,看護師の倫理観と疲労との関係を調査した報告は見られない.そこで,本研究では道徳的発達段階・倫理的感受性と蓄積的疲労との関係について総合病院に勤務する看護師894名を対象としてアンケート調査を実施し,607名から全問回答したアンケートを回収し(有効回収率:67.9%),その内容を解析することにより看護師の倫理観と疲労との関係を検討した.道徳的発達段階を調べるには葛藤価値定義づけテスト(Defining Issues Test:DIT)日本語版を用いた.DITは道徳的発達理論に基づいた倫理水準の測定法であり,DIT得点が高いほど道徳的発達段階が高いとされている.倫理的感受性を調べるには道徳的感受性テスト(Moral Sensitivity Test:MST)日本語版を用いた.MST得点が高いほど倫理的感受性が高いと判断される.蓄積的疲労を調べるには蓄積的疲労徴候インデックス(Cumulative Fatigue Symptoms Index:CFSI)74項目のCFSI質問紙を用いた.CFSI得点が高いほど蓄積的疲労が強いことを示している.CFSI得点の中央値は19点で,中央値以下は低群,中央値を超えるのは高群として2群間比較を行った.その結果,年齢が若く,経験年数の短い人ほど蓄積的疲労が強く,主任以上の職位が高い人より一般スタッフで蓄積的疲労が強かった.また,短大卒以上の人より専門学校卒の人で蓄積的疲労が強かった.看護教育を十分受け,経験を積んで看護に関する知識と技能に富む人ほど蓄積的疲労が少なかった.CFSI特性項目別に20年前の報告と比較すると,不安感が1.6倍,気力の減退が1.4倍,労働意欲の低下が1.3倍,慢性疲労,一般的疲労感,抑うつ感が1.2倍に増加していた.CFSI高群と低群でDIT得点に有意差は認められなかったことから蓄積的疲労は道徳性の発達に関与していないと推測される.CFSI高群と低群の間でMST得点に有意差があり,蓄積的疲労の強いCFSI高群の方が疲労の軽い低群よりMST得点が高く,倫理的感受性が高かった.蓄積的疲労が強い群の方で倫理的感受性が高かったことは倫理的問題の認知能力が高い人ほど看護上の葛藤が増加し,それに積極的に対応しようとすればするほど蓄積的疲労が強くなるものと推察される.看護は病人を気遣い,世話をする実践であることが裏付けられた.卒後の臨床看護研修によって病人を気遣い,世話をする実践能力を研鑽することにより蓄積的疲労を貯めずに倫理的感受性を高めることができるものと思われる.
  • ―光トポグラフィー装置を用いての検討―
    草山 聡子, 小林 今日子, 浅野 和仁
    2013 年 73 巻 3 号 p. 216-223
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    光トポグラフィー装置(NIRS)を用い,匂い刺激の酸素ヘモグロビン(HbO2)濃度変化におよぼす効果を前頭葉を対象に検討した.被験者19名(女性10名,男性9名)の前頭葉にNIRSのプローブを装着し,100%エタノールに1%の割で溶解した匂い物質,リナロール,リモネン,酢酸ベンジル,バニリンをそれぞれ30秒間曝露した.リナロールとリモネンを被験者に曝露したところ,前頭葉のHbO2濃度が著明に増加したものの,酢酸ベンジル,バニリンの曝露では前頭葉のHbO2濃度変化に著明な影響は観察されなかった.また,前頭葉を左右前頭眼窩野外側,前頭眼窩野正中に区分し,HbO2濃度増加部位の検討を行ったところ,リナロールとリモネンでは上記区分のすべてでHbO2濃度の増加が観察された.しかし,酢酸ベンジルとバニリンでは左右の前頭眼窩野外側においてのみ,HbO2濃度の増加が認められた.NIRSで観察されるHbO2濃度の変化は脳の活性化状態を反映していることが示されていることから,上述した結果は匂い分子の種類の違いにより,脳の活性化部位に変動が認められることを示唆している.したがって,本実験の結果は,脳の活性化誘導を目的とした補完代替医療でアロマセラピーを使用する場合は匂い物質を慎重に選択する必要があることを示唆している.
  • 有泉 裕嗣, 前田 崇, 中嶋 秀人詞, 服部 憲路, 柳沢 孝次, 齋藤 文護, 原田 浩史, 中牧 剛, 森 啓, 友安 茂
    2013 年 73 巻 3 号 p. 224-231
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    血液疾患の多くは発症頻度が低く,また,疾患分類の変遷や疾患単位数が極めて多様な為,記述疫学情報が不十分である.昭和大学病院で血液疾患と確定診断した症例を後方視的に集計し,発症動向を調査した.対象症例は2005年1月から2011年12月までの7年間に昭和大学病院血液内科を初診した1824例(男性828例,女性996例)である.年齢分布は15~98歳で平均60.0歳であった.腫瘍性疾患が56%,非腫瘍性疾患が44%の比率であった.腫瘍性疾患のうちリンパ系腫瘍が60%,骨髄系腫瘍が40%であった.調査対象期間の7年間において,リンパ系腫瘍と骨髄系腫瘍の罹患者数の比率に有意な変化はみられなかった.形質細胞腫瘍において,意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)以外の形質細胞腫瘍は,MGUSよりも有意にλ型の占める割合が高かった(P=0.04).非腫瘍性疾患では,鉄欠乏性貧血が45.3%を占め,特発性血小板減少性紫斑病17.5%だった.本調査結果は血液疾患研究の基盤となるものである.血液疾患の発症動向の評価や病因の解明のためには,正確で網羅的な登録による継続的な疫学調査が必要である.
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