遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
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総説
  • 古屋 充子, 蓮見 壽史, 矢尾 正祐
    原稿種別: 総説
    2021 年 21 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2021/05/10
    公開日: 2021/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌(hereditary leiomyomatosis and renal cell cancer; HLRCC)は皮膚平滑筋腫,子宮筋腫,腎細胞癌を三主徴とする遺伝性疾患である.20世紀前半から家族性発症の皮膚平滑筋腫に関する症例報告はあったが,1973年にReedらが常染色体優性遺伝性に皮膚平滑筋腫や子宮平滑筋腫(または子宮平滑筋肉腫)を発症する2家系を報告したことにちなんで ‘Reed症候群’と呼ばれた.2001年にはReed症候群家系における腎細胞癌発症が報告され,HLRCCの概念が形成されるようになり,2002年には責任遺伝子がクエン酸回路酵素のフマル酸ヒドラターゼ(fumarate hydratase; FH)であることが判明した.HLRCC患者における腎細胞癌は高悪性度で転移しやすく,AYA世代や未成年にも発症するため,集学的治療や家族ケアが必要となる.

原著
  • 杤久保 順平, 細川 優子, 森 克昭, 天野 一恵, 山本 麻友
    原稿種別: 原著
    2021 年 21 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2021/05/10
    公開日: 2021/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    乳がん診療では治療方針を検討するうえで詳細ながん家族歴の調査が不可欠である.浜松医療センター乳腺外科(以下,当科)ではがん家族歴の精度を向上させるべく,従来から用いてきた初診時の問診票に加えて新たな問診票を導入した.初診時の問診票が事務的に渡されたのに対し,新たな問診票は外来看護師ががん家族歴の重要性および家族から直接情報を得るように十分説明したうえで渡すこととした.本研究では初診時に2つの問診票に答えた乳がん患者91例において,初診時の問診票と新たな問診票に記載されたがん家族歴の違いを調べた.結果は91例中50例(54.9%)で初診時の問診票に記載されたがん家族歴数より,新たな問診票に記載されたがん家族歴数のほうが多かった.また,91例のがん家族歴総数は初診時の問診票では89だったのに対し,新たな問診票では171であった.当科では新たに問診票を導入したことでより多くのがん家族歴の情報を得ることができた.がん家族歴は問診票の内容および運用方法によって情報量が変わるため工夫が必要である.

臨床経験
  • 野間 翠, 尾﨑 慎治, 板本 敏行, 土井 美帆子, 橋本 美千代, 原 鐵晃
    原稿種別: 臨床経験
    2021 年 21 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2021/05/10
    公開日: 2021/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療において,乳癌診療ガイドラインの改訂やPARP阻害薬の導入に伴い一般病院においてもBRCA検査の説明と実施が求められることが想定されるため,県立広島病院では2018年より遺伝子診察室を開設した.それに伴い乳腺外科外来で一次拾い上げを開始したため,遺伝カウンセリングに対する影響の現状と今後の課題について検討する.

    乳腺外科外来ではNCCNガイドラインを基に対象症例に一次拾い上げを行い情報を提供,希望者には臨床遺伝専門医・主治医・がん看護認定看護師の同席のもと遺伝カウンセリングを実施した.

    全乳癌手術症例のうち一次拾い上げの対象は20%程度であるが,その中でも実際に遺伝カウンセリングを希望するのは現時点では10%以下であった.今後はHBOCの診療体制が保険診療となり,遺伝カウンセリング,遺伝学的検査の件数はさらに増加することが予測され,遺伝カウンセリング体制の安定した運営が今後の課題としてあげられる.

  • 市川 直明, 上野 真由美, 南澤 晴海, 溝口 亜衣, 池田 由紀, 佐藤 恵子, 坂口 定子, 小島 朋美, 古庄 知己, 伊藤 以知郎 ...
    原稿種別: 臨床経験
    2021 年 21 巻 1 号 p. 16-19
    発行日: 2021/05/10
    公開日: 2021/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    長野赤十字病院がんサポートセンターは,入院・外来で主診療科の重要面談への看護師の同席からカウンセリング,意思決定支援,アドバンス・ケア・プランニング,ケースワーク,緩和ケア病棟/在宅緩和ケアとの連携等につなげている.このセンター内にゲノム医療連携室を設置し,臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーを非常勤で配置し継続的な研修を行った.その結果,がんゲノム医療関連の面談同席から適切な相談支援,介入,継続フォローにつなげることが可能となった.がんゲノムプロファイリング検査適用症例の選択や患者,血縁者のサポートにあたり難治がんに介入してきた経験が活かされる可能性がある.主診療科と遺伝部門,治験施設,緩和ケア施設など関係諸機関との連携も円滑に行える体制となった.また,医療者として患者の価値観や家族との関係性などに関する情報を共有し,倫理的課題に適切に対処し,継続的に専門性を高めながらケアに活かしていくことが期待される.

  • 〜遺伝情報の取り扱い方法策定における課題と解決策について〜
    末國 久美子, 髙橋 昂平, 樋口 徹, 林 祐二, 鵜飼 晴美, 有澤 文夫, 齊藤 毅
    原稿種別: 臨床経験
    2020 年 21 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2020/05/20
    公開日: 2021/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景】遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)診療の一部が保険適用となり,保険診療を中心に行う病院でもHBOC診療が可能となった.【目的】遺伝診療導入に向けて電子カルテ上の遺伝情報の取り扱い方法策定の過程を中心に,さいたま赤十字病院のHBOC診療の取り組みについて述べる.【方法】遺伝情報取り扱い方法の試行・検討過程と院内の遺伝情報の適切な取り扱い方法の周知について後方視的に記述する.【結果】院内で新たに設置された遺伝診療部会を中心に,遺伝学的検査の結果の電子カルテ上での取り扱いについて検討した結果,全職員の倫理観の向上に努めることを前提に通常の医療情報と同様に扱うこととなった.倫理観向上のために,ガイドラインを用いた職員間での知識の共有の徹底,電子カルテ上へのログイン記録の表示,HBOC診療導入に至る検討内容の公開を実施した.【考察】遺伝診療にかかわる職員への継続的な啓蒙が重要であると思われた.

症例報告
  • 尾﨑 信暁, 土田 真梨子, 岡﨑 美香子, 上田 一裕, 安藤 智子, 清田 篤志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 21 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2021/05/10
    公開日: 2021/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景】遺伝性疾患が疑われる褐色細胞腫の診断およびその後のサーベイランスには,遺伝学的検査が有用である.今回われわれは若年発症および再発のため遺伝学的検査を行いvon Hippel-Lindau(VHL)病と診断した後,ステロイド内服下で妊娠・出産に至った1例を経験したので報告する.【症例】症例は35歳,女性.13歳時に両側褐色細胞腫と診断,両側副腎摘出術および右副腎皮質自家移植が施行された.33歳時転居に伴い名古屋第一赤十字病院内分泌内科紹介となった.安静時の採血・採尿にてカテコラミン高値を認めた.腹部CT検査にて上腸間膜動脈分岐部から腎下極レベルの大動脈左側に複数の腫瘤,131I-MIBGシンチグラフィで同部位への集積を認め,褐色細胞腫の再発と診断し,腫瘤摘出術を施行した.病理学的にはcomposite paraganglioma-ganglioneuromaであった.遺伝学的検査を施行しVHL遺伝子に c.191G>C(p.Arg64Pro)病的バリアントを認め,VHL病と診断した.診断時期と同じころ妊娠が判明したが,デキサメタゾン0.25mg,ヒドロコルチゾン10mgの内服を継続し,出産に至った.

  • 中村 卓, 西久 保敏也, 池田 直也, 平尾 具子, 横谷 倫世, 田中 幸美, 新納 恵美子, 増井 薫, 宮城 恵, 庄 雅之
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 21 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2021/05/20
    公開日: 2021/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

    遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome; HBOC)とは,BRCAの生殖細胞系列の病的バリアントに起因する乳癌および卵巣癌をはじめとするがんの易罹患性症候群であり,常染色体優性遺伝形式を示す.今回の症例は,他院で異時両側乳癌の手術を受け,経過観察目的に当院を紹介された.当院での問診からHBOCを強く疑い,日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(Japanese Organization of Hereditary Breast and Ovarian Cancer; JOHBOC)の連携システムを通じて,大学病院に紹介した.大学病院では遺伝カウンセリングが行われ,BRCA1の病的バリアントの診断,リスク低減卵管卵巣摘出術(risk reducing salpigo-oophorectomy; RRSO)が行われた.さらに,このことがきっかけとなって患者の姉妹の遺伝カウンセリングが行われ,BRCA1に病的バリアントありと診断された妹のRRSOにつながった.

編集後記
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