遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
23 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集
  • 杉本 健樹
    2024 年23 巻4 号 p. 120
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
  • 入部 康弘, 蓮見 壽史, 槙山 和秀, 矢尾 正祐
    原稿種別: 特集
    2024 年23 巻4 号 p. 121-126
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス

     フォン・ヒッペル・リンドウ病は常染色体顕性形式をとる遺伝性腫瘍症候群であり,中枢神経血管芽腫,網膜血管腫,腎細胞癌,褐色細胞腫/パラガングリオーマ,膵神経内分泌腫瘍,内リンパ嚢腫瘍などを発症する.日本国内においては2000年代より患者会活動と研究班活動が展開されてきた.両者の連携により本邦における疫学,臨床的特徴,診療の実態が明らかにされ,診療ガイドラインが作成されるなど多くの成果が得られた.一方,患者への公的支援はいまだ十分ではないのが現状である.今後いっそうの診療体制の整備と,患者への医療費助成の拡充が望まれる.

  • 高柳 俊作, 齊藤 延人
    原稿種別: 特集
    2024 年23 巻4 号 p. 127-133
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス

     中枢神経系血管芽腫(hemangioblastoma以後,HBと略す)は,WHO分類Grade1の,本来は良性とされる腫瘍である.von Hippel-Lindau(以後,VHLと略す)病患者の7割近くはHBを有するとされ,VHL病の中では一番罹患する可能性が高い.発生部位として小脳,脊髄,脳幹の順に多く,閉塞性水頭症が原因と思われる頭蓋内圧亢進症状(頭痛,嘔吐など)で発症することが多い.VHL病での症例では,脊髄などにHBが多発し,脊髄症状の悪化で徐々にADLが低下することによく遭遇する.治療の第一選択は外科的摘出であるが,摘出リスクが高い場合はγ(ガンマ)ナイフ治療も行われる.最近まで有効となる薬剤を認めなかったが,HIF-2α阻害薬であるbelzutifanが2021年8月に米国食品医薬品局(FDA)により承認された.本稿ではHB克服に向けた当科における取り組みに関しても併せて概説する.

  • 鳥嶋 雅子, 吉田 晶子, 稲葉 慧, 小杉 眞司
    原稿種別: 特集
    2024 年23 巻4 号 p. 134-139
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス

     von Hippel-Lindau syndrome(以下,VHL病)は早期発見・早期治療が重要な遺伝性腫瘍であるが,発端者の臨床診断から血縁者との情報共有やサーベイランス(SV)につながらない現状がある.そこで,VHL病患者の遺伝カウンセリング(GC)から血縁者のSVまでの関連要因を調査するため,当院における10年間の26家系41名75回のGC記録を対象にテーマ分析を行った.GC来談目的は遺伝学的検査(GT)受検が33名(80.5%),来談契機は,発端者は「血縁者のGTに発端者のGT結果が必要と知った」6名(31.6%),血縁者は「親の勧め」11名(50%)がもっとも多かった.テーマ分析の結果,GC来談・GT受検・家族内情報共有・SVにはさまざまな要因が関連していることが明らかとなった.結果より,発端者一人の負担にならないよう他の家族も巻き込むこと,発端者にGTとSVの意義を説明し,GC予約を円滑に行うことが大切と考えられた.

原著
  • 上田 真由美, 青木 美紀子, 島袋 林秀
    原稿種別: 原著
    2024 年23 巻4 号 p. 140-145
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス

     Lynch症候群(Lynch syndrome以下,LSとする)と診断されたがん発症者3名に対し,個々が置かれている状況に対する認識について探求し明らかにすることを目的に,オンラインによる半構成的面接法を用いたインタビューを実施した.分析の結果,1)生涯にわたりがんを発症する可能性への覚悟と不安,2)子どものリスク認知と自律適応に対する責任と擁護,3)他者への歩みよりと協働,4)LSとともに歩む自己の確立の4テーマと,対応する7カテゴリおよび20サブカテゴリが抽出された.LSの人々は自身の置かれている状況に対し,遺伝とがんの両方を背負い続けることの覚悟と折り合いという認識だけではなく,LSとともに歩む自分を肯定的に捉え,家族や仕事,趣味に価値や生きがいを見出し,自己確立していた.また,他者の理解と良好な関係性の構築がLSの健康管理への動機付けにつながり得ることが示唆された.

編集後記
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