遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
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解説
症例報告
  • 瀧由 美子, 内山 碧, 松木 翔太郎, 岩泉 守哉, 長谷川 聡
    2025 年25 巻3 号 p. 79-82
    発行日: 2025/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

     次世代シーケンサーの普及に伴い,一個人に独立した2つの遺伝子座で病的バリアントが検出されることにしばしば遭遇する.症例は72歳,女性.早期乳癌と診断された.母親,姉,母方叔母2名に乳癌家族歴があった.術前のCTで肝臓に多発シャントを認め,繰り返す鼻出血,口腔粘膜所見と併せてオスラー病と診断され,ACVRL1に病的バリアントを認めた.さらに,術後希望したBRCA1/2遺伝学的検査でBRCA2に病的バリアントを認め,遺伝性乳癌卵巣癌と診断された.後日,2つの遺伝性疾患に対し時間を分けて遺伝カウンセリング(genetic counseling;GC)を行った.本症例は乳癌罹患後,短い間に表現型から2つの遺伝性疾患と診断された.GCでは異なる疾患を混乱なく理解できるよう配慮した.

  • 大田 浩司, 伊藤 朋子, 加藤 じゅん, 畑 郁江, 中屋 順哉, 海崎 泰治
    2025 年25 巻3 号 p. 83-89
    発行日: 2025/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

     Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)は常染色体顕性遺伝性疾患である.今回,われわれは特徴的な肺囊胞の画像,病理所見を示した散発例を経験したので,報告する.57歳男性,両側気胸歴を有するが家族歴は認めず.右胸痛にて受診し,CT検査にて右気胸と両側縦郭尾側に大小(5~30mm)の肺囊胞が観察された.切除した肺囊胞の病理所見では,囊胞壁の炎症反応や線維化は少なく,Elastica van Gieson染色では一般的な気腫性囊胞に比べ囊胞壁の弾性組織は連続性が保たれていた.BHDSを疑い,全エクソーム解析にてfolliculin(FLCN)遺伝子のエクソン12に病的バリアント〔NM_144997.7:c.1347_1353dup(p.Val452fs)〕を認めた.BHDSの診断では典型的な画像と病理学的所見に気づくことが肝要であり,患者とその血縁者に適切なサーベイランスを実施することが求められる.

  • 牛尾 日優, 垂野 香苗, 永田 彩, 長島 稔, 犬塚 真由子, 玉川 慶一, 高松 紘子, 戸崎 光宏, 中村 清吾, 林 直輝
    2025 年25 巻3 号 p. 90-94
    発行日: 2025/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    卵巣癌の発症によりBRCA1病的バリアント保持の診断となり,卵巣癌術後維持療法中に造影乳房MRI検査を含む乳癌サーベイランスにより,早期乳癌の診断に至った症例を経験したので報告する.症例は,52歳女性,卵巣癌の治療中にBRCA1病的バリアント保持が判明した.卵巣癌の病状安定後,造影乳房MRI検査を含む乳癌サーベイランスを行い,MRI-detected lesionを指摘された.MRIガイド下生検により非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ;DCIS)と診断された.BRCA1/2病的バリアントを保持する卵巣癌患者の乳癌サーベイランスは,病状によって継続や施行が難しいことがある.適切な乳癌サーベイランスを行い,病状に応じた治療やリスク低減手術を検討する必要がある.

  • 武鹿 良規, 野中 健一
    2025 年25 巻3 号 p. 95-99
    発行日: 2025/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

     症例は51歳女性,右腋窩腫瘤を主訴に受診した.右腋窩リンパ節腫大が認められ,胸腹部造影CT,PET-CT検査で腫大した右腋窩リンパ節へのFDG集積が認められた.右腋窩リンパ節針生検で,乳腺由来を示唆する悪性上皮性腫瘍と診断されたが,視触診,マンモグラフィ,超音波,造影MRI検査で両側乳腺に明らかな異常所見は認められず,潜在性乳癌と診断された.乳房非切除+右腋窩リンパ節郭清術が施行され,病理診断結果は乳癌リンパ節転移,pT0,pN3a,M0,StageⅢc,HER2(1+),ER(+),PgR(+),MIB-Ⅰ(73.5%)であった.術後化学療法,放射線治療が行われ,術後ホルモン療法は継続中で再発を認めていない.経過観察中にBRCA1/2遺伝子検査の保険適応となり,BRCA2病的バリアント陽性と診断された.まれな疾患である潜在性乳癌,BRCA2病的バリアント陽性と診断された1症例について文献的考察を加えて報告する.

  • 下川 亜矢, 轟木 秀一, 川上 浩介, 河村 京子, 牧村 美佳, 元島 成信
    2025 年25 巻3 号 p. 100-104
    発行日: 2025/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

     生殖年齢にある乳癌患者は多く,挙児希望のある患者については,がん治療開始前に妊孕性温存の検討が必要となる.また,乳癌診断時に遺伝性乳癌卵巣癌(以下,HBOC)と診断された場合,時間的な制約があるなかで,がん告知や治療,遺伝,妊孕性温存など多くの問題と向き合わなければならない.今回,乳癌診断時にHBOCと判明し,がん治療開始前後で妊孕性温存に関する意思が変化した症例を経験した.HBOCにおける妊孕性温存の倫理的な課題解決および,最善の意思決定支援について考察する.

  • 鳩野 みなみ, 野坂 未公音, 荒田 尚, 杉井 裕和, 井関 昭子, 佐藤 由美子, 坂本 優香, 大下 真美, 讃井 裕美, 田中屋 宏 ...
    2025 年25 巻3 号 p. 105-110
    発行日: 2025/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

     症例は,66歳女性.48歳時に右乳癌に対して乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検を施行した.病期Ⅰのトリプルネガティブ乳癌と診断され,術後補助化学療法と放射線治療が行われた.母方祖母と従姉妹に乳癌家族歴を有し,BRCA1/2遺伝学的検査を受けたところ,BRCA2 c.7847C>T(p.Ser2616Phe)バリアントが検出され,病的意義不明なバリアント(VUS)と報告された.データベースやin silico分析から遺伝性乳癌卵巣癌の可能性があると評価し,術後10年後も年に1度マンモグラフィ検査を継続した.術後18年目に対側の左乳房に腫瘤を認め,左乳癌と診断した.乳房全切除術とセンチネルリンパ節生検を行い,非浸潤性乳管癌の診断であった.本症例のバリアントはVUSとして判定されているが,これまでの報告から病原性があることが示唆されており,VUSから再分類される可能性もあるため今後も慎重な対応が必要と考える.

臨床経験
  • 小川 真紀, 大塚 和令, 大貫 幸二, 城田 英, 安田 純
    原稿種別: 臨床経験
    2025 年25 巻3 号 p. 111-115
    発行日: 2025/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

     Li-Fraumeni症候群(以下,LFS)はTP53遺伝子の生殖細胞系列病的バリアント(以下,GPV)を原因とする遺伝性疾患である.本症例は家族歴・既往歴からLFSを強く疑われたため,包括的遺伝子プロファイリングであるNCCオンコパネル検査を実施した.本検査は遺伝性腫瘍症候群の診断ではなく治療標的の同定を目的としているが,生殖細胞系列の情報も得られるため,クライエント(以下,CL)の希望と医療チームの判断で実施した.結果としてTP53のGPVは報告されなかったが,注意深い検討により大規模欠失が推測されたため,追加解析を行いLFSと確定診断した.この過程でCLは不安と闘いながらも遺伝カウンセリング(以下,GC)で心理社会的支援を受け,諦めずに原因を追求した.しかしCLは強い血縁者への不安を抱いたまま,最終的に他界した.本稿では確定診断までの経緯とGCの意義を報告する.

編集後記
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