遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
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特集
  • 下平 秀樹
    原稿種別: 特集
    2025 年 24 巻 4 号 p. 216
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
  • 平田 敬治, 山田 真善, 山口 達郎, 田中屋 宏爾
    原稿種別: 特集
    2025 年 24 巻 4 号 p. 217-220
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

     2012年に『遺伝性大腸癌診療ガイドライン』が作成され,以降4年毎の改訂を経て,今回2024年版が出版された.本稿では家族性大腸腺腫症(FAP)に関する主な改訂点を列記する.1)近年,大腸腺腫性ポリポーシスを引き起こす複数の原因遺伝子が明らかとなっている.これを踏まえ,「FAP」「APC関連ポリポーシス」「腺腫性ポリポーシス」等の呼称,ならびに鑑別を要する疾患・病態について記載を行い,今後の多遺伝子パネル検査の進歩を見据えた遺伝学的検査の必要性について言及した.2)大腸癌による癌死を回避できる確実な治療は予防的大腸切除であるが,手術を希望されない非密生型に対する積極的大腸ポリープ摘除(intensive downstaging polypectomy)が保険収載されたため,本治療法について詳記した.3)FAPに合併するデスモイド腫瘍に関して,本邦で提案された新分類を紹介し,また新規薬剤に関し言及した.4)本ガイドラインの総論でFAPの診療アルゴリズムを作成したうえで議論の余地のある課題5項目をCQとして取り上げた.以上,本ガイドラインのupdateにより患者さんへの適切な診断・治療に役立つことを期待したい.

  • 山田 真善, 平田 敬治, 山口 達郎, 田中屋 宏爾
    原稿種別: Special Articles
    2025 年 24 巻 4 号 p. 221-223
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

     『遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024年版』の改訂では,リンチ症候群関連腫瘍の原因遺伝子別累積発生率を作成し,関連腫瘍の種類を大腸癌,子宮内膜癌に加え,卵巣癌,腎盂尿管癌,膀胱癌,胃癌,小腸癌,膵癌,胆管癌,脳腫瘍まで拡大した.診断手順について,従来のアムステルダム基準やユニバーサル・スクリーニングに加え,コンパニオン診断とがんゲノムプロファイリング検査からリンチ症候群が疑われる流れを追加し,保険収載されたBRAFV600E検査を新たに組み入れた.大腸については遺伝子ごとのサーベイランスを推奨した.子宮と卵巣を分け,膵臓に対するサーベイランスを新たに追加した.Clinical Questionsでは,リンチ症候群のユニバーサル・スクリーニング,サーベイランス,化学予防,リスク低減手術,Helicobacter pylori感染のスクリーニング検査を対象とした項目を更新・新設した.これらの改訂が,リンチ症候群診療の向上に寄与することを期待する.

  • 田辺 記子, 石田 秀行
    原稿種別: 特集
    2025 年 24 巻 4 号 p. 224-228
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

    遺伝性大腸癌では,遺伝学的検査によって診断が確定される疾患と,臨床基準によって診断が可能な疾患がある.遺伝学的検査は,腫瘍の発生の有無にかかわらず,本人の遺伝性腫瘍症候群が遺伝学的に確定でき,本人の定期的な経過観察に役立てることができるとともに,未発症血縁者における適切な診断・医学的管理に役立てることができる. 平成18(2006)年度診療報酬改定にてマイクロサテライト不安定性検査が保険収載され,遺伝性大腸癌の一つであるLynch症候群のスクリーニング検査として利用されてきた.近年では薬物治療選択を目的とした検査の適用に拡大されている.国内では遺伝性大腸癌の遺伝学的検査は保険収載されていないが,特定の遺伝性大腸癌の遺伝学的検査に加えて,遺伝性腫瘍症候群に対する多遺伝子パネル検査(MGPT)を提供する検査会社も増えてきている.MGPTを含む従来の遺伝学的検査では診断できない遺伝性腫瘍症候群があることが研究的解析により報告されており,偽陰性や病的意義不明バリアント等の課題には留意が必要である.

  • 竹内 洋司, 石川 秀樹
    原稿種別: Special Articles
    2025 年 24 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

    家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis;FAP)に対する大腸全摘術は大腸癌予防に有効だが,QOL低下やデスモイド腫瘍のリスクが伴う.近年,内視鏡技術の進歩により,大腸ポリープを積極的に内視鏡で切除するintensive downstaging polypectomy(IDP,積極的ポリープ切除術)が注目されている.IDPは大腸切除を回避し得る治療法として期待され,本邦では保険収載もされている.多施設共同研究(J-FAPP Study Ⅲ)では,5年間のIDP介入により9割以上の症例で大腸切除を回避できた.十二指腸病変に対するIDPも有効であり,Spigelman分類のダウンステージングが可能である.IDPは,FAP患者のQOLを改善する低侵襲な治療法として有望であり,今後は,化学予防との併用によるさらなる負担軽減が期待される.

  • 武藤 倫弘, 宮本 真吾, 鱧屋 隆博
    原稿種別: 特集
    2025 年 24 巻 4 号 p. 234-237
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

    がん化学予防は薬剤などの化合物を用いたがん予防方法であり,がん発症リスクの高い疾患を主な対象としている.遺伝性大腸癌においては家族性大腸腺腫症やLynch症候群がそれに該当する.しかし,家族性大腸腺腫症においてもLynch症候群においても大腸癌予防の選択肢として標準的薬物療法はなく,研究レベルにとどまっている.われわれの研究グループでは〈わが国1剤目のがん予防薬を出すこと〉を目標に,がん化学予防薬の開発を行っているため,本稿ではアスピリンを用いた大腸癌予防の臨床試験を中心に概説する.

症例報告
  • 小川 剛, 中平 光彦, 山㟢 知子, 吉田 裕之
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 24 巻 4 号 p. 238-241
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

    2019年の保険収載以降,頭頸部がんの領域においてもがん遺伝子パネル検査の重要性が増している.また,がん遺伝子パネル検査を施行した際に診断目的とは別の遺伝子の病的バリアントを偶然見出すこともあり得る(以下,二次的所見)ため,その対応を理解しておく必要がある.われわれは,乳癌既往のある中咽頭腺様囊胞癌患者に対して,がん遺伝子パネル検査を施行しBRCA1 遺伝子の病的バリアントを二次的所見として確認した症例を経験した.われわれは,遺伝性腫瘍外来に紹介し,詳細な家族歴の聴取の下,BRCA1 病的バリアントを患者に開示し二次原発がん発症時の治療選択肢および血縁者への有益な情報提供となった貴重な症例を経験したため,ここに報告する.

  • ―遺伝性乳癌卵巣癌関連癌としての大腸癌の考察―
    叶多 諒, 岡野 舞子, 長塚 美樹, 大河内 千代, 藤田 正太郎, 八島 玲, 松嵜 正實, 片方 直人, 勝部 暢介, 田畑 憲一, ...
    2025 年 24 巻 4 号 p. 242-247
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は65歳時右乳癌,76歳時上行結腸癌および左乳癌,81歳時横行結腸癌で手術を施行した患者である.父親60歳胃癌で死亡,母親72歳大腸癌で死亡,娘58歳大腸癌,長妹37歳胃癌で死亡,その娘(姪)37歳乳癌,次妹56歳大腸癌,61歳乳癌の異時性重複といった濃厚ながん家族歴を有したため当初Lynch症候群を疑ったが,BRAF(-),MSI検査(-),横行結腸癌組織でのミスマッチ修復タンパク(MMR)の免疫染色ではいずれも欠失はなくLynch症候群は否定された.次に集積の多い乳癌に注目しBRCA遺伝学的検査を行い,BRCA1に病的バリアントが検出され,遺伝性乳癌卵巣癌の診断となった.結腸癌2病変,乳癌2病変のBRCA1タンパク免疫染色を行い,BRCA1病的バリアントとの関連が示唆された.大腸癌の家族歴が濃厚な異時性両側乳癌と異時性多発大腸癌の重複した遺伝性乳癌卵巣癌症例を経験したため報告する.

編集後記
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