日清戦争は近代日本における中国観激変の転換点ともいわれた.日清戦争後に設立された民間団体東亜同文会は,日中関係に多大な影響力を持ち,日本全体の中国観形成に重要な役割を担った.本稿は,同会が発行した雑誌『東亜時論』を対象とし,そこに見られる中国時局観について,特に,「中央政府」と「地方有力者」を分ける視点を軸に検討した.
「処女香」は大島屋伝右衛門の扱っていた売薬である.その売弘には貸本屋である池田屋清吉と池田屋利三郎が関与していた.こうした彼らと大島屋の繋がりは,売薬だけでなく書籍の流通を考える上でも非常に重要である.本稿では,処女香を手がかりにすることで浮かび上がった大島屋と彼ら池田屋一統との関係をもとに,近代初頭における書籍流通について考察していく.
本稿の目的は,昭和戦前・戦中期における子供漫画の出版状況を,各種資料に基づいて明らかにすることである.主要な児童雑誌に掲載された漫画は,昭和10年代前半には総頁数の約10%を占めるようになっていた.子供漫画の単行本は,昭和10年代前半には発行点数で年間500点以上,発行部数で350万部以上が出ていたと推定される.こうした数量は,戦後の子供漫画出版の基盤がすでにこの時期形成されていたことを示している.
明仁天皇の「退位」に関して,女性週刊誌がどのように報じたかを言説分析から明らかにすることが本論文の目的である.「退位表明」から「特例法」の成立までは,天皇(皇室)と政府との「象徴」「天皇」「皇位継承」についての認識の違いと対立を明確にする「フレーム」が見出された.「特例法」制定以降から「退位」までは,「退位」以前の皇族の公的・私的行為を,一般庶民になぞらえて描く「大衆社会」の皇室像に回帰した.
本稿では,人々の読書行為が変質したコミュニケーションメディア上でどのように相互作用しているのかを明らかにする.そのためには,創作系ネットツールというコミュニケーションメディアを介した読書行為とそれに関わる人々の相互行為はどのようなものかを実証的に考察する必要がある.本稿では,創作系ネットツールを用いたコミュニケーション行為を事例として,現代日本における読書行為の実態を分析する.
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