日本免疫不全・自己炎症学会雑誌
Online ISSN : 2435-7693
1 巻, 1 号
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学会誌発刊に向けて
巻頭言
総説
  • 土居 岳彦, 野間 康輔, 岡田 賢
    原稿種別: 総説
    2022 年 1 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2022/01/17
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー
     自己炎症性疾患は, 自然免疫系の異常により繰り返す全身性の炎症を特徴とし, 一部の疾患で血管炎を合併する. 単一遺伝子変異による自己炎症性疾患の中で, 特に家族性地中海熱ではさまざまな血管炎を発症し, IgA関連血管炎や結節性多発動脈炎の頻度が高いとされる. 最近定義されたA20ハプロ不全症, Aicardi-Goutières症候群, 乳児発症STING関連血管炎, COPA症候群, アデノシンデアミナーゼ2欠損症において, 血管炎は重要な臨床症状の1つである. A20ハプロ不全症は, ベーチェット病の血管炎に類似した症状を示す. I型インタフェロノパチーの1つであるAicardi-Goutières症候群のうち, SAMDH1遺伝子異常の患者では, 血管炎の発症頻度が高いことが推測されている. 乳児発症STING関連血管炎では, 血管炎による重篤な皮膚病変を引き起す. COPA症候群では肺毛細血管炎によるびまん性肺胞出血を発症する. アデノシンデアミナーゼ2欠損症は結節性多発動脈炎様の血管炎による脳血管障害や皮膚症状を発症する. 多くの臨床的特徴は自己炎症性疾患間で重複し, 血管炎の正確なメカニズムは明らかではないが, IL-1β, I型インターフェロン, 免疫複合体による血管内皮細胞の直接的障害などが想定されている. 自己炎症性疾患では, このような血管炎症状を合併することに注意し, 適切な診断と治療を行う必要がある.
  • 金兼 弘和, 井上 健斗, 谷田 けい
    原稿種別: 総説
    2022 年 1 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2022/01/17
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー
     原発性免疫不全症は易感染性のみならず, 悪性腫瘍, アレルギー, 自己炎症, 自己免疫疾患も伴い, 先天性免疫異常症(inborn errors of immunity: IEI)と称されるようになった. しかしながら主なIEIは細菌やウイルスに対する免疫応答の異常をきたす. したがって主なIEIに対する治療として, 1)合併しやすい細菌, 真菌, ウイルス感染症に対する抗微生物薬による治療と予防内服, 2)抗体産生不全症に対する免疫グロブリン補充療法が中心となる. IEIに対する予防内服としてスルファメトキサゾール・トリメトプリム(sulfamethoxazole-trimethoprim: ST)合剤が使われるが, ニューモシスチス肺炎予防のためには週3回投与でよいが, 細菌感染予防のためには連日投与が必要である. 慢性肉芽腫症は代表的な好中球機能異常症であり, 感染症治療に難渋することが多い. かかりやすい病原体は黄色ブドウ球菌とアスペルギルスであり, ST合剤とイトラコナゾールによる予防内服を行う. 肝膿瘍などの重症感染症時にはプレドニゾロンを併用する. 抗体産生不全症では免疫グロブリン補充療法を静注用製剤でも皮下注用製剤でもいずれでもよいが, 血清IgGトラフ値は700mg/dL以上に保つ. IEIに対する感染症治療と予防内服はそれぞれの疾患や患者の特徴に応じて臨機応変に対応する.
  • 朽津 芳彦, 向井 康治朗, 田口 友彦
    原稿種別: 総説
    2022 年 1 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 2022/01/17
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー
     cGAS-STING経路は, ウイルスが宿主の細胞質に持ち込む“非自己”DNAに応答して, I型インターフェロンや炎症性サイトカインの発現誘導を惹起する自然免疫シグナル経路である. しかしながら, 本経路がゲノムDNAやミトコンドリアDNAなどの“自己”DNAにも応答し活性化すること, 本経路の異常な活性化が多様な自己炎症性疾患[Aicardi-Goutières syndrome(AGS)など]や神経変性疾患[amyotrophic lateral sclerosis(ALS)など]の発症に関与することが相次いで報告され, 注目を集めている. さらに, 細胞生物学的なアプローチによるcGAS-STING経路の解析が進展し, その成果が本経路の選択的な阻害剤の開発につながっている. 本総説では, cGAS-STING活性化分子機構, およびcGAS-STING経路が関与する自己炎症性疾患や神経変性疾患について, 筆者らの最新の知見を交えて概説する.
  • 古賀 琢眞, 井田 弘明
    原稿種別: 総説
    2022 年 1 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2022/01/17
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー
     自己炎症性疾患であるPAPA症候群 (pyogenic arthritis, pyoderma gangrenosum and acne syndrome)に臨床症状が類似している亜型が多数報告されている. 多くがPSTPIP1遺伝子変異によるため, PSTPIP1関連炎症性疾患(PSTPIP1-associated inflammatory diseases: PAID)と呼ばれている. PSTPIP1分子は, pyrin inflammasomeの活性化と細胞骨格の制御に関与しているため, 変異によって多彩な臨床症状が出現する.
     PAIDには, PAPA症候群以外に現在のところ, 6つの症候群 (PASH, PAPASH, PsAPASH, PASS, PAMI, PAC)があるが, 筆者らは, 壊疽性膿皮症, ざ瘡, 分類不能型炎症性腸疾患を3主徴とするpyoderma gangrenosum, acne and unclassified inflammatory bowel disease (PAB)症候群を新しいPAIDの1つとして報告した. 潰瘍性大腸炎ではなく, 分類不能型炎症性腸疾患を合併, PAC症候群とは異なる疾患であった.
     本稿では, PSTPIP1分子の構造と役割, 各PAIDの疾患の解説, そしてPAB症候群症例を紹介した.
  • 岸田 大, 矢崎 正英, 中村 昭則
    原稿種別: 総説
    2022 年 1 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2022/01/17
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー
     家族性地中海熱(familial Mediterranean fever: FMF)は繰り返す発熱と漿膜炎発作を特徴とする代表的な自己炎症性疾患である. 発熱発作が起こる機序はまだ完全には解明されていないが, 臨床的には様々な因子が発作の引き金になる場合がある. その中で, 月経は女性FMF患者において発熱発作を修飾する主要な因子である. 自施設での検討では, 過労やストレスなど他の因子に比べ, 月経が女性FMF患者における最多の発作誘発因子であった. このため, 月経周期ごとに発熱, 漿膜炎をきたす患者ではFMFの可能性を考慮する必要がある. 月経が発作の誘因となる患者では発症年齢が低く, 腹膜炎の頻度が高く, また子宮内膜症の合併率が高かった. 月経が発作に関連するメカニズムとしては月経期における女性ホルモンの減少や月経そのものが子宮内膜組織に与える刺激などが想定されている. さらに最近, 子宮内膜症における自然免疫の関与や, 月経困難症におけるMEFV遺伝子多型の存在が報告されており, 月経はFMFの臨床経過に多面的な影響を与えている可能性がある. FMFの治療の第一選択はコルヒチンであるが, 発作が月経と関連する患者では女性ホルモン製剤が有効であった例の報告があり, コルヒチンの不応例, 不耐例では将来的に選択肢の一つになるかもしれない.
  • 永井 秀人, 桐野 洋平
    原稿種別: 総説
    2022 年 1 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2022/01/17
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー
     成人発症Still病(adult-onset Still's disease: AOSD)は稀少疾患であり, 詳細な疾患メカニズムは依然として不明であるが, 血清フェリチンや血清IL-18の上昇を認めることから, これまで単球系細胞やそのインフラマソームの異常活性化が機序の1つとして想定されてきた. この総説では, AOSDにおける疾患概念, 診断, 治療といったこれまでの知見について包括的にまとめるとともに, インフラマソームを介した炎症において中心的な役割を果たすGasdermin DとAOSDとの近日報告された関係についても考察する.
編集後記
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