日本免疫不全・自己炎症学会雑誌
Online ISSN : 2435-7693
2 巻, 1 号
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巻頭言
症例報告
  • 高橋 徳幸, 中島 麻梨絵
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 2 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
     成人発症の新規自己炎症性疾患としてVEXAS症候群が2020年に報告された.この疾患は,X染色体上に位置するUBA1遺伝子の体細胞変異で生じ,UBA1遺伝子に規定される41番目のアミノ酸であるメチオニンの置換(p.Met41)によって病原性を有する.臨床症状および所見は,発熱に加えて骨髄系および赤芽球前駆細胞の空胞,大球性貧血,皮膚の好中球性炎症,肺浸潤影,耳や鼻の多発軟骨炎,深部静脈血栓症,全身性血管炎など多彩である.その一方で,有効な治療法は高用量の副腎皮質ステロイド以外は明らかではない.ヤヌスキナーゼ阻害剤のルキソリチニブは,VEXAS症候群の治療選択肢として着目されている.我々は臨床症状の類似性に加えてUBA1遺伝子変異陽性から本疾患と診断した50歳台の日本人男性に対してルキソリチニブを使用し,臨床的に変化した所見を同薬使用の有無によって比較検討した.ルキソリチニブ内服により各日の最高体温中央値の低下(非内服時38.9度,内服時38.6度)および炎症反応の改善がみられたが,造血機能障害に基づく輸血依存が進行した.ルキソリチニブ内服時も解熱や症状の完全な消失には至らず,プレドニゾロン内服量はルキソリチニブ非内服時に比べて増えていた.以上よりルキソリチニブはVEXAS症候群の治療選択肢となる可能性があるものの,本報告ではルキソリチニブの治療効果を肯定するには不十分と考えられた.
  • 仲間 美奈, 三輪 友紀, 田口 皓一郎, 森田 浩之, 大西 秀典
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 2 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
     家族性地中海熱(FMF)は発熱,漿膜炎などを主徴とする遺伝性自己炎症疾患である.MEFV遺伝子を原因とする常染色体潜性遺伝とされていたが,ヘテロ接合体で発症する場合や複数の病的意義不明バリアント(VUS)の存在がある.加えてMEFVバリアントが他疾患の病態を修飾する可能性が示唆されている.今回,複数のMEFVバリアントの組み合わせにより多彩な病態を呈した家系を経験したので報告する.症例は17歳男性と15歳女性の兄妹である.2名とも病的バリアントM694I(exon 10)とVUS のE148Q(exon 2)の推定複合ヘテロ接合体であり,兄は典型的なFMF,妹はFMF未発症者と診断された.本家系にはほかにもM694Iを保有する者が複数名存在し,Protracted febrile myalgia syndrome(PFMS)と診断された者やFMFとしては非典型的な自己炎症疾患様病態を呈している者がおり,同一家系での臨床的異質性が考えられた.
編集後記
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